2007年に公開された映画『それでもボクはやってない』。
『Shall we ダンス?』で知られる周防正行監督が11年ぶりに発表した社会派ドラマ。
本作は痴漢冤罪事件を題材に、日本の刑事司法制度そのものへ疑問を投げかけた作品として大きな話題となりました。特に「起訴された事件の有罪率が極めて高い」という現実や、自白偏重と指摘される捜査・裁判の構造を一般層に広く知らしめた作品として評価されています。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名: それでもボクはやってない
公開年: 2007年
監督: 周防正行
脚本: 周防正行
音楽: 周防義和
ジャンル: 社会派ドラマ/法廷映画
上映時間: 143分
製作国: 日本
主なキャスト: 加瀬亮、瀬戸朝香、もたいまさこ、山本耕史、鈴木蘭々、光石研、野間口徹、大森南朋、田中哲司、正名僕蔵、高橋長英、小日向文世、役所広司
あらすじ

フリーターの金子徹平は就職面接へ向かう通勤電車の中で、女子中学生から痴漢行為をしたと訴えられる。
身に覚えのない徹平は示談を拒否し、自らの無実を証明しようとする。しかし警察、検察、裁判所という巨大な司法システムの中で状況は次第に不利になっていく。
家族や弁護士の支えを受けながら戦う徹平だったが、果たして裁判はどのような結末を迎えるのか。
実際のモデルの事件とは?
映画の主人公は特定の実在人物ではなく、複数の痴漢冤罪事件を参考に構成されたとされています。
代表的なのが、2000年12月の西武新宿線高田馬場駅での矢田部孝司の事件。
矢田部孝司氏は西武新宿線快速電車内での痴漢被疑事実で逮捕・強制わいせつ罪で起訴され、約3か月勾留。
2001年12月に東京地裁で懲役1年2月の実刑判決を受けたが、2002年12月、東京高裁(仙波厚裁判長)が原判決を破棄し逆転無罪を言い渡しました。
さらに2000年5月30日の京浜急行での小泉知樹の事件。
京浜急行の電車内で女子高生のスカートの中に手を入れ「陰部を触った」などとして逮捕され、その後、強制わいせつ罪で有罪となり、懲役1年6月の刑を受け服役、2004年に出所した。出所後に再審請求を行っています。ちなみにこの再審請求がどうなったかの続報もないし、当然再犯の報道もない。
そして2003年10月22日午前8時10分に起きた西武鉄道新宿線での事件。
逮捕から56日後、初公判が開かれ、Aは無実を主張。第二回公判終了直後、Aは200万円の保釈金を納め保釈された。実際に再現ビデオを作り、2006年3月事件から868日経った日、Aは逆転無罪を勝ち取った。
つまりモデル事件の結末は一つではなく、無罪になった事件もあれば、有罪のまま終わった事件もある。ただ共通しているのは、「痴漢を疑われた瞬間から、無実を証明する側に極端な負担がのしかかる」という点である。これが『それでもボクはやってない』の根っこにある現実です。
日本の司法の闇
この映画を観るまでは「裁判という場所は正しい判断がされているもの」だと誤解していた。
松本潤主演のドラマ『99.9』も並行して観てるので非常にリアリティがあると感じました。
警察は集めた証拠や記録をすべて検察官に引き渡します。そして検察官は、その膨大な証拠の中から「裁判で有罪を証明するために有利な証拠」を厳選し、裁判所に提出します。
裁判の判決で無罪を出すということは検察と警察に盾をつくことを意味します。
つまり裁判官は最高裁判所によって人事や報酬、昇進が管理されており、無罪判決を出すことが出世に悪影響を及ぼすのではないかという懸念からキャリアを積みたい裁判官はそのまま有罪にしてしまう流れになってしまっているのは理解できました。
まさに本作でも裁判官が途中から変わってましたね。どこかへ飛ばされたみたいな会話があったので、国家を敵に回してしまったのか。いずれにしてもこの司法の世界もなかなかの闇だということです。
さらに加え、それを否定し得る証拠がでにくい痴漢冤罪事件ほど厄介なものはないということ。一度疑われたらある意味おしまいなわけです。
ツッコミどころ
でもなんで警察や弁護士たちの口調がみんなタメ語なのか不思議。
アパートの管理人・竹中直人も母親って言われたら部屋の鍵開けるってどんだけ?
金子の母親は「うちの子に限ってそんなことするわけないんです」ってなんでそんなこと言えるの?
これらの違和感はまぁ映画だからにせよ、全体的に映画としては、痴漢冤罪で捕まって裁判にかけられ、判決が出るまでのプロセスを細かくシミュレーションしたような内容で非常に勉強になりましたね。
主演の加瀬亮の演技はたどたどしく、裁判官に詰められて怒り出すさまなど非常にリアルだったんじゃないでしょうか。
たまたま痴漢もののAVを持っていて裁判で「これはあなたの部屋にコレクションされていたものですね?」と問われ、「コレクションなんてそんな大袈裟なものではありません。」と返すシーンはちょっとシュール。
シュールだけどこういう会話が裁判所では繰り広げられてるんだろうな。
もしもあなたが金子鉄平なら?
そもそも女性がドア側にいて自分が乗るなら女性には背を向けましょう。この主人公のように前から乗っては疑われてしまいます。
さらに満員電車内では「手は常に高く上げ、周囲に見える状態にしておくこと」や「満員電車ではカバンを体の前に抱えること」が鉄則。
誤解を招く行動や密着を避け、両手が自由にならない状況を物理的になくすことが重要となる。
だから自分は満員電車の中だとあえてスマホを使うんです。「満員電車の中でスマホ使うのは非常識だ」という人がいれば、「痴漢に間違われたくないのでね」と言い返してやればいいのです。
もし捕まっても絶対謝ったりしてはいけないし、その場を逃走してもいけない。
駅員室での会話も証拠になるので、スマホで録音するのも忘れずに。まずは毅然とした対応で弁護士を呼びましょう。
いずれにしても男たちも自分の身は自分で守らないといけない。





