2001年に放送されたドラマ『アンティーク ~西洋骨董洋菓子店~』。
好きなドラマを挙げてと言うと、この作品を挙げる人は意外と少ないかもしれない。
本作はよしながふみの人気漫画を原作にした2001年放送の月9ドラマ。ずいぶん前の作品なんだけど、なぜか今でも定期的に見返してしまう大好きなドラマだ。
なんでこの作品が好きなのか。その理由を紐解いていてみた。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:アンティーク ~西洋骨董洋菓子店~
原作:西洋骨董洋菓子店
放送年:2001年
製作国:日本
話数:全11話
演出:本広克行、羽住英一郎
脚本:岡田惠和
出演:滝沢秀明、椎名桔平、藤木直人、小雪、阿部寛
ジャンル:ヒューマンドラマ
あらすじ

洋菓子店「アンティーク」を舞台に、元ボクサーの神田エイジが見習いパティシエとして働き始める。店主の橘圭一郎、天才パティシエの小野裕介、謎多きギャルソン・小早川千影ら個性的な仲間たちとともに、店を訪れる客たちの人生や過去と向き合っていくヒューマンドラマ。
何度も見返したくなる理由は、物語よりも「空気感」にある
物語自体は、元プロボクサーの神田エイジがケーキ屋の見習いになるというシンプルな内容で別に奇抜な設定でもなんでもない。
このあらすじだけ聞いたら、今の自分なら多分観ないだろう。
それでも何度も見たくなる理由は、ストーリーではなく作品全体が醸し出す空気感にある。
椎名桔平演じるオーナー、藤木直人演じる天才パティシエ、阿部寛演じるギャルソン、そして滝沢秀明。
主演陣のバランスも素晴らしい。なにより悪い人物が全く出てこない。
この人たちは誰かが、誰かのことを想って行動できる人間たちなのだ。
そして多分、自分は主人公の滝沢秀明目線で観てるので、こんなちょっと年上の兄さんたちがいたらいいなみたいな、末っ子目線が実にハマったのかもしれない。
舞台となる洋菓子店「アンティーク」は、おそらく世田谷の高級住宅街を思わせるような落ち着いた場所にあり、その店構えや雰囲気が本当に魅力的なのだ。
「こんな店が実際にあったら通いたい」
そう思わせるほどこの店が素敵でクリスマスシーズンとの相性も抜群だ。
レトロなアンティーク調のお店ってそれだけで特別な空間になるんですな。結構自分がこの店構えに惹かれるのって珍しいんだけど、刺さりました。
Mr.Childrenだけでドラマを作り、心情をテロップで見せる大胆な挑戦
この作品を語る上で外せないのが、劇中音楽をすべてMr.Childrenの楽曲だけで構成したこと。
主題歌だけではなく、登場人物の感情や空気感、不穏な場面までも既存楽曲だけで表現している。
これがまず画期的過ぎる。
イントロや歌詞まで計算して選曲しており、スタッフがMr.Childrenの楽曲を徹底的に聴き込んでいたことがよく分かる。ドラマ専用の劇伴を使わず、ここまで作品世界を作り上げた例は珍しい。
個人的にも『深海』『DISCOVERY』『Q』など、個人的に思い入れが強いアルバムからの楽曲が多く使われているため非常に刺さりまくりだったのだ。
「車の中でかくれてキスをしよう」とかおそらく夏の曲なのに、自分のなかではこの作品のせいで冬の曲のイメージになってしまっているくらい。
さらに驚かされるのがテロップ演出。
タイプライターのような「カタカタ」という音とともに、登場人物の心情が画面へ文字として表示される。
本来なら役者の表情や芝居で見せる部分を、あえて文字で説明してしまう。普通ならタブーとも言える演出だがこの作品は最後まで徹底している。
後半になるとテロップ自体で遊び始め、スタッフが楽しみながら作品を作っていたことが伝わってくる。
そして最終話でそれまで画面に表示されていたテロップが、実は小雪演じる記者の小説だったことが分かる。この伏線回収も見事だった。
最後まで謎を残しながら、人間ドラマとして着地する構成
基本はヒューマンドラマだが、この作品は謎が非常に多い。
登場人物それぞれが秘密を抱え、少しずつ明かされたと思えばまた新たな謎が生まれる。その繰り返しが続くためつい気になって次の話を見てしまう。
最終回ではさらに大胆な構成になる。
各キャラクターの視点から同じ出来事を描くことで、黒澤明監督の『羅生門』のように「何が真実なのか」が分からなくなるという手法だ。
確かに今までとはガラッと構成が変わったのでこの最終回は賛否両論だったようだが、テレビドラマにしてはかなり実験的じゃなかっただろうか。
すべてを説明せず、完全には解決しないまま終わる。その曖昧さが逆にリアルで人それぞれの受け取り方を尊重するラストになっている。
実験的な作品
自分は甘いものが苦手なんだけど、それでも滝沢秀明が毎回登場するケーキを本当に美味しそうに食べてるのを観ると、旨そうと思ってしまう。
四人の主要キャラクターも全員魅力的だが、中でもお気に入りは阿部寛。
DVD特典の音声解説では本人が出演しており、そのシュールな語りが非常に面白いので、機会があればぜひ聴いてほしい。
何よりこのドラマは出演者もスタッフも楽しみながら作っていたことが画面越しに伝わってくる。
もちろん今見ればツッコミどころはいくらでもあるが、そういう細かな粗探しをする作品ではない。
本作はどれだけこの温かな世界観へ浸れるか。それに尽きる。
本作は王道のヒューマンドラマでありながら、Mr.Childrenだけで構成した音楽、テロップによる心情表現、独特な謎の散りばめ方など、新しいことへ積極的に挑戦した意欲作だった。
この時のワクワク感はもう今の地上波では期待できそうにない。






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