2020年に公開された映画『罪の声』。
土井裕泰監督による社会派サスペンス。塩田武士の同名ベストセラー小説を原作とし、小栗旬と星野源がW主演を務めた。
物語のモデルとなっているのは、1984年から1985年にかけて日本中を震撼させた未解決事件「グリコ・森永事件」。
劇中では事件を「ギン萬事件」という架空の事件に置き換えながら、事件そのものではなく、脅迫テープに利用された子どもたちや、その家族が背負い続けた人生に焦点を当てている。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:罪の声
原題:罪の声
公開年:2020年
製作国:日本
上映時間:142分
監督:土井裕泰
脚本:野木亜紀子
原作:塩田武士『罪の声』
出演:小栗旬、星野源、松重豊、宇野祥平、古舘寛治、市川実日子、火野正平、梶芽衣子、宇崎竜童 ほか
ジャンル:サスペンス、ミステリー、社会派ドラマ
あらすじ

京都で仕立て屋を営む曽根俊也は、亡き父の遺品から一冊の黒いノートとカセットテープを見つける。そこには幼い頃の自分の声が録音されており、その音声は31年前に日本中を震撼させた未解決事件「ギン萬事件」の脅迫テープと同じものだった。
一方、大日新聞の記者・阿久津英士は、事件から30年以上が経過したギン萬事件の再取材を開始する。やがて二人は別々に真相を追い始め、それぞれの調査が一つの事件へと収束していく。
モデルとなったグリコ・森永事件とは?
この映画で描かれる「ギン萬事件」は、1984年から1985年に実際に起きた未解決事件「グリコ・森永事件」をモチーフにしている。
事件は江崎グリコ社長の誘拐を皮切りに、食品メーカーへの脅迫、放火、青酸入り菓子のばらまき、新聞社への挑戦状などへ発展し、日本中を恐怖に陥れた。
当時は「かい人21面相」を名乗る犯人グループが警察やマスコミを翻弄したものの、犯人は最後まで逮捕されず、現在も未解決事件として知られている。
本作で出てくる「株価操作説」は、犯行グループ(かい人21面相など)が企業の脅迫によって株価を意図的に下げ、空売りなどで巨額の利益を得ようとしたのではないかという、当時から囁かれている未証拠の仮説・噂の一つに過ぎない。
劇中では企業への脅迫や身代金要求、子どもの声を使った脅迫テープなど、実際の事件を忠実に再現している部分も多い。
後半が失速
本作は事件を追う新聞記者・阿久津英士(小栗旬)と、事件に関わっていた伯父を持つ曽根俊也(星野源)という、二人の視点で進んでいき、二つの視点が並行して進む構成になっておりそれぞれが少しずつ真相へ近づいていく構成が面白い。
なにより、自分自身が知らず知らずのうちに事件に関わっていたという設定はなかなか恐ろしく、実際の事件の子供たちのことを考えると複雑な気持ちにもなります。
3人のうちの子供のうち1人は殺されてるという残酷な設定ですが、あくまでフィクションです。
そしてグリコ・森永事件の株価操作説はあくまで仮設であり、決して真実とは限らないが、もしも株価操作するための事件だったら?という「もしもシリーズ」として描いている点においては興味深かった。
しかし物語の犯人像が明らかになっていく後半から徐々に物語へのテンションが維持しなくなる印象だ。
犯人グループも単純な悪ではなく、学生運動の延長や社会への怒りがあり複雑な背景を持っていることがわかるが、結構尻すぼみ感はある。
こんなことを言ってしまうとアレだけど、
やはり未解決事件ものは「未解決」だからこそ、独特の緊張感と不可思議さの魅力があると思う。
本作はあくまで半フィクションであり、作者の想像に過ぎないので事件とはやっぱり別物で考えるべきなんじゃないかな。
小栗旬と星野源
本作は終始淡々とした空気で進んでいき、サスペンス映画のような大きなカタルシスはあまりない。正直に言えば、全体としてはかなり平坦な印象も受けた。長いし。
だからこそ印象に残ったのが、小栗旬と星野源の掛け合い。
途中、小栗旬演じる阿久津が星野源演じる俊也をいじる場面がある。
「やっぱあんた、いい人やな。」
そんなやり取りから京都人の「褒め殺し」をネタにするシーンがあるのだが、この作品の中で一番心が和らいだ場面だった。
この何気ない会話によって二人の距離が縮まり、人間味が一気に伝わってくる。
そしてラストでは小栗旬が星野源の店を訪れ、スーツを仕立てる場面へと繋がる。
「お待ちしておりました!」
事件の真相を暴く物語というより、最後は二人の男の信頼関係や友情が静かに結実する物語として締めくくられており、わりと地味な映画だったんだけどその余韻のまま終わったのが救いだった。
事件の本当の被害者を考えさせられる
本作は時効になった事件が終わったあとも人生を奪われ続ける人たちに焦点を当て、「罪とは何か」「誰が本当の被害者なのか」を問い続ける作品だと思う。
実際、未解決事件を追ったところでなにかあるのかなと思ったけど、ちゃんと生島聡一郎みたいに救われた人がいたのがよかったかな。
しかしキツネ目の男はなんだったんでしょう?詳細が語られる終わってしまった。
幸せを願って犯罪に手を染めたとしても、その先で待っているのは幸せではない。
罪は自分だけでなく、家族や子どもたちまで巻き込み一生消えない傷を残してしまう。
全体としては静かな作品で、人によっては盛り上がりに欠けると感じるかもしれないが、その静けさの中で描かれる人間ドラマには確かな重みがある。
グリコ・森永事件を知っている人はもちろん、事件を知らない世代にも、「事件の裏で苦しみ続けた人々」に目を向けるきっかけを与えてくれるのではないだろうか。
しかし小栗旬ってどの役やらせても小栗旬だな。





