【映画】最後まで行く(2023)|小物の岡田准一に呆れる。事故を隠した刑事を追い詰める96時間の結末とは【ネタバレ考察】

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映画『最後まで行く』をイメージした画像 アクション

2023年に公開された映画『最後まで行く』。

本作、もともとはキム・ソンフン監督による2014年の韓国映画『最後まで行く(A Hard Day)』を原案に、藤井道人監督が日本を舞台にリメイクしたクライムサスペンス。

岡田准一が事故を隠蔽した刑事・工藤祐司、綾野剛が工藤を追い詰める監察官・矢崎貴之を演じる。

評判いいんですけど、自分には全く刺さらなかったなぁ。

その理由を述べていきます。

本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。

基本情報




作品名:最後まで行く
原題:最後まで行く
公開年:2023年
製作国:日本
上映時間:118分
監督:藤井道人
脚本:平田研也、藤井道人
原作:韓国映画『最後まで行く』(2014)
出演:岡田准一、綾野剛、広末涼子、磯村勇斗、駿河太郎、山中崇、黒羽麻璃央、駒木根隆介、山田真歩、清水くるみ、杉本哲太、柄本明
ジャンル:クライム、サスペンス、アクション

あらすじ




映画『最後まで行く』をイメージした画像

12月29日の夜、刑事・工藤祐司は危篤の母親のもとへ向かう途中、突然道路へ飛び出してきた男を車ではねてしまう。署内の不正問題にも巻き込まれていた工藤は、事故を隠すため男の遺体を車のトランクへ押し込み、そのまま母親の葬儀へ向かう。

ところが工藤のもとに、「お前は人を殺した。知っているぞ」という謎のメッセージが届く。送り主は県警本部の監察官・矢崎貴之。事故を隠した工藤と、異様な執念で彼を追う矢崎。やがて一件の事故の裏に隠された大きな事件が明らかになり、工藤は逃げ場のない状況へ追い込まれていく。

クライムサスペンスで必要なもの




クライムサスペンスにおいて、主人公が善人である必要はない。むしろ悪人だからこそ面白くなるのだ。

たとえば『ウルフ・オブ・ウォールストリート』なんて、主人公がやっていることだけを見れば完全にアウトなのに、なぜかディカプリオ演じるジョーダン・ベルフォート側についてしまう。

「頑張れ」「逃げ切れ」と思わせる妙な魅力がある。

地面師たち』もそうだった。

主人公側は明確に犯罪者なのに、犯罪に手を染める背景があり、「悪いことをしているけれど、こうなってしまうのも分からなくはない」というキャラクターに感情移入させられるだけの魅力があった。

つまりクライムものは主人公に魅力がないと成立しないというか、応援できなのだ。

ところが本作の岡田准一演じる工藤祐司には、それがまるでない。

魅力を感じない。キャラクターに深みが全くなくて、目の前で起きてることを必死になって対処しているだけ。要は浅いんです。

そもそも工藤はヤクザから裏金を受け取っている刑事。物語が始まった時点ですでにまともではないし、母親が亡くなった日に酒を飲んで車を運転し、尾田創をはねてしまう。

人をはねたこと自体は事故だった。しかし工藤は飲酒運転が発覚することを恐れ、警察に届けず事故を隠そうとする。

つまり事故そのものではなく、その後の「隠そう」という判断から主人公が自分で罪を増やしていくというめちゃくちゃ小物なんです。

再三、自分はこのブログで「物語はアホが作る理論」を唱えてるが、本作の主人公もまさにアホだから物語が成り立っているとう理屈です。

隠蔽が雑すぎて、サスペンスより滑稽さが勝ってくる




しかも裏金の問題について事情を聞かれそうになると、「母親が亡くなったので今日は行けません」と母親の死まで利用する。

そして最終的には、母親の棺の中に尾田の死体まで入れて火葬しようとする始末。

棺には母親と成人男性の二人が入っているわけだから当然めちゃくちゃ重いはずなのに、「めちゃくちゃ重いな」で終わるのには笑ってしまった。

工藤のやることは徹底して自分本位で、見れば見るほど同情の余地がなくなっていくから「工藤、なんとか逃げ切ってくれ」とは一度も思えない。むしろ「もう自首しろよ」「早く捕まれ、この野郎」という気持ちの方が強かった。

同じゲスなのになぜ『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のディカプリオには感情移入してしまうんだろうと考えたが、やはり岡田准一演じる工藤が小物というのに尽きる。

バカすぎて応援できないんですよね。

工藤は警察官のくせに、とにかくやることが短絡的だ。

事故車が証拠になると思えば、わざと警察車両にぶつけて傷をごまかそうとする。死体を隠すためにダクトのような場所から引っ張り上げたり、とにかく目の前に問題が起きるたびに「じゃあ次はどうする」とその場しのぎで動いている。

特に意味が分からないのが尾田の携帯電話。

死体と一緒に携帯をずっと持ち歩いているので、都合よく着信音が鳴って何度もバレそうになる。今どきバイブでもなく、サスペンスを作りたいタイミングで着信音が鳴るのもかなりあざといが。

というか、電源を切れよ。

もっと言えば壊せよ。

携帯なんてGPSで追跡される可能性だってある。工藤は一般人ではなく警察官なのに、なぜそんな基本的なことにも頭が回らないのか。隠蔽工作をしている人間として、あまりにも間抜けに見える。

監視カメラが見つかった時の工藤の挙動もものすごく分かりやすい。

矢崎の事情




工藤が偶然はねた尾田は、寺から金を盗み、もともと警察から追われていた人間だった。そしてその尾田を綾野剛演じる矢崎貴之も追っていた。

めちゃくちゃ都合がいいな。

中盤からは矢崎側のパートに入り、なぜ彼が尾田を追っていたのかが明らかになるが、ここで分かってくるのは、工藤と矢崎が実はかなり似た人間だということだった。

どちらも自分のことしか考えていない。

さらに矢崎側に娘を誘拐された段階になると、工藤がなぜまだ一人で解決しようとしているのか本当に分からなくなる。

ここまで来たら自分がやったことを全部警察に告白して、「娘が誘拐されています」と助けを求めればいい。

当然、工藤自身もただでは済まないが、娘の命がかかっているなら、それが普通ではないだろうか。警察が動けば矢崎側も終わるし、その背後にいる人間まで表に引きずり出せる可能性がある。

それでも工藤は自分で解決しようとするのはなぜだろう?同僚の刑事も殺されてるわけなので、だんだん大事になっているはずなのに、本当に最後まで自分で状況を悪化させ続けるだけなのだ。

もう勝手に行ってくれ




そして終盤になると、もはや何の映画を見ているのか分からなくなってくる。

工藤は娘との交換のため、尾田の死体に爆弾を仕込んで矢崎を殺そうとする。

いや、ちょっと待て。

工藤はもともと事故で人を死なせ、その事実を隠したから逃げ回っていた男のはずなのに最終的には、自分の意思で警察を爆殺しようとしているのはなぜだ。

最初よりはるかにヤバい犯罪者になっているじゃねぇか。

映画としては悪人である矢崎を倒し、娘を救ったというカタルシスを作りたいのだろうが、工藤自身も完全に殺人犯側へ踏み込んでいる。「悪いやつを倒して良かったね」で処理できる話ではないからだ。冷静になれよ。

しかも車内で思いっきり爆発してるのに矢崎がそのあとも生きているのも全く意味が分からない。

そこから札束が大量に舞う中で工藤と矢崎が殴り合うのだが、もはや物語上の必然というより、「札束が舞う中で二人が戦っている絵を撮りたかっただけなのでは」と思ってしまった。

そして最後はカーチェイスまで始まり、岡田准一と綾野剛が延々と殺し合って終わる。

この頃には二人がそもそも何のためにここまで戦っているのかすら、どうでもよくなっていた。

結果的には、裏にいた組長が尾田、工藤、矢崎を掌の上で転がしていたような形で物語は終わるんだけど、本作に出てくる主要な男たちは、ほとんど全員が自分のことしか考えていない。

『最後まで行く』というタイトルは、人間、死んでも治らないものは治らないというのを表しているんだろうけど、こちらとしては途中から完全に置いていかれてしまった。

韓国版は見ていないので比較はできないが、この日本版だけを見た感想としては、最終的に残ったのは一つ。

「もうどうぞ勝手に行ってくれ」だ。

岡田准一主演作品