2021年に公開された映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』。
実写映画『るろうに剣心』シリーズ第5作にして最終作であり、原作の「追憶編」をベースに緋村剣心がまだ「人斬り抜刀斎」と呼ばれていた幕末の時代を描く。
『The Final』で語られた雪代縁との因縁、その根源にいる雪代巴と剣心の関係、そして剣心の頬に刻まれた十字傷の由来が明らかになる前日譚。
率直に言うと全然面白くないです。驚きました。褒めることがない。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:るろうに剣心 最終章 The Beginning
原題:Rurouni Kenshin: The Beginning
公開年:2021年
製作国:日本
上映時間:137分
監督:大友啓史
脚本:大友啓史
原作:和月伸宏『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』
出演:佐藤健、有村架純、高橋一生、村上虹郎、安藤政信、大西信満、池内万作、藤本隆宏、和田聰宏、中村達也、荒木飛羽、窪田正孝、江口洋介
ジャンル:時代劇/アクション/ドラマ

幕末の1864年。緋村剣心は倒幕派の人斬り「抜刀斎」として、京都で佐幕派の要人たちを次々と暗殺していた。ある夜、剣心は暗殺対象の護衛・清里明良と戦い、頬に一本の傷を負いながら彼を斬る。
その後、剣心は居酒屋で雪代巴という女性と出会う。ある事件をきっかけに行動をともにすることになった二人は、人目を避けるため夫婦を装って暮らし始める。人を斬ることしか知らなかった剣心は、巴との静かな生活の中で初めて平穏や幸福を知っていく。
しかし巴には、剣心へ近づいた理由があった。彼女の過去と剣心が奪ってきた命が結びついたとき、後の剣心の人生を決定づける悲劇が起こる。
やっぱ血しぶきだよね
本作の剣心はこれまで見てきた「不殺」の剣心ではなく、まだ人斬り抜刀斎だった頃の緋村剣心。
だから普通に人を斬る。しかもかなり斬る
何がいいって「血しぶき」なんですよね。
刀で人を斬るんだったら、やっぱり血は出る。
これまでのシリーズでも派手な殺陣はたくさんあったけれども、本作では「刀で人を斬る」という行為の生々しさがより強く出ている。
血が飛ぶことで緊張感も出るし、「この人は本当に人を殺しているんだ」という重みも生まれる。
ただその剣心がなぜ人を殺しているのかを考えると、結構怖い。
剣心本人は、自分が悪いことをしているとは思っていない。
新しい時代を作ると本気で思っていてもっと人々が幸せになれる世の中を作ろうとしている。
もはやカルト集団に洗脳された殺人鬼みたい。
彼の中ではちゃんと理屈が通っているんですよね。
これって以前の志々雄真実にも通じるものがある。
本人たちは「自分が正しい」と思っているのが一番怖い。
ネットで自身のなかの正義で誹謗中傷してる人みたいな。
「自分が正しいと思ったことをやる」という言葉は、一見ものすごく立派に聞こえる。
でもその正義の位置を少し間違えれば、人間は「自分は正しい側だ」と信じたまま大量に人を殺すことだってできるのだ。
しかも正義なんて時代によって変わるし、文化によっても変わる。
幕末なら倒幕派と佐幕派でまったく違う。
人斬り抜刀斎という恐ろしい存在も、本人の中では「より良い未来のために戦っている人間」だった。
正義のために人を殺している。
その矛盾こそ、人間の怖さなんじゃないだろうか。
ドラマパートがダルイ
本作はシリーズ最終作なのに、これまでのような派手なアクションはかなり抑えられている。
もちろんこれは意図的なんだと思う。
なぜ剣心の頬に十字傷が刻まれたのか?剣心がなぜ「不殺」へ向かっていくのか?
そこを描く作品なので、当然ドラマパートが中心になるのは理解できるが、いかんせんドラマが面白くない。
見ていて結構しんどいレベルだった。
特に分からなかったのが、剣心と有村架純演じる雪代巴が、なぜそこまで惹かれ合ったのかという部分。
いつの間にそんなに好きになったんだろう。
一緒に暮らしていたから?孤独な者同士だったから?巴の事情に対する同情が愛情へ変わったから?
なんだからかなり曖昧で気づいたらそういう設定だったみたいな感じで恋愛ドラマとしても全然乗れない。
そしてもう一つは本作の剣心が全然魅力的じゃないということ。
剣はめちゃくちゃ強いけど、人間として面白いかと言われたら、自分には全然面白くない。
ただただ暗いし。
ここで改めて思ったのが、これまでのシリーズでは相楽左之助や薫、周囲のキャラクターがいたから剣心という人物が成立していたんじゃないかということ。
左之助みたいな明るい人間がいて、薫がいて、周囲が賑やかだから、剣心の静けさや影が魅力になる。
でも今回は剣心も暗い。巴も暗い。
暗い男と暗い女が、暗い顔をしながら静かに暮らしている。
誰得?
アクションを減らしてドラマを見せるなら、そのドラマが面白くないと厳しい。
北村一輝、喋り過ぎ
そして終盤で北村一輝演じる辰巳、喋りすぎ。
本当に喋りすぎ。
巴に対しても自分たちの計画や考えをベラベラ説明する。
そして剣心との最終局面で、剣心はかなり追い詰められ一時的に視界まで奪われている。
そもそも剣心を殺すために、ここまで壮大な計画を立ててきたわけでしょう。
だったら殺せよ。ところが殺さない。
ベラベラベラベラ喋っている。
なんなんだろうこの人。
とどめを刺したいのか、刺したくないのか。
結局、自分の講釈を剣心に聞かせて気持ちよくなっているだけに見える。
オナニーなの?
敵が主人公を殺せる状態なのに、説明や演説を始めたせいで逆転される。
「巴を犠牲にする展開へ持っていくために、辰巳を殺さず喋らせてるだけじゃないの?」と感じてしまう。
何を楽しめばよかったの?
自分は原作を志々雄真実編以降ほとんど読んでいない。
だから『The Beginning』の細かい展開は知らない。
知らない状態で見ているのに、それでも剣心が死なないことだけは分かる。
だってこの後の映画に剣心が普通にいるんだから「まあ死なないよね」という気持ちで観ていることになる。
主人公が強すぎて、なおかつ絶対に生き残ることまで分かっている。
そうなると戦闘シーンまでだるくなる。
『るろうに剣心』ってアクションが大きな魅力のシリーズなのに、ドラマに振り切っていて、そのドラマがつまならいのは致命的だ。
じゃあこの映画、一体どこを楽しめばいいんだ。
そして最後まで疑問だったのが、『The Final』と『The Beginning』の公開順。
この順番にする必然性があまり感じられない。
むしろ『The Beginning』を先に見せた方がよかったんじゃないだろうか。
それを全部知った上で『The Final』を見た方が、縁がなぜあれほど執拗に剣心を追うのかも理解しやすい。
前作を見ていると縁がどうしても「姉ちゃん大好きな弟が剣心に粘着している」くらいにしか見えない。
でも『The Beginning』を先に見せておけば、その執念の後ろにある悲しみも多少は違って見えただろう。
最後に過去へ戻るという構成上の美しさ以上に、この順番を逆転させる説得力は最後まで感じられなかった。
自分にとっては、全5作の最後にして一番しんどい一本だった。
全然面白くありませんでした。






