2000年に制作された『呪怨』は、後に劇場版やハリウッドリメイクへと発展するシリーズの原点となったオリジナルビデオ作品。
限られた予算ながら、日本ホラーを代表するシリーズへ成長するきっかけとなった記念碑的作品である。
本作品、あえて時系列をごちゃごちゃにして作られているのでその辺もまとめていきます。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:呪怨
原題:呪怨
公開年:2000年
製作国:日本
上映時間:70分
監督:清水崇
脚本:清水崇
出演:柳ユーレイ、三輪ひとみ、栗山千明、藤貴子、吉行由実、大家由祐子 ほか
ジャンル:ホラー
あらすじ

小学校教師の小林は、不登校の児童・佐伯俊雄の家庭訪問へ向かう。そこで異様な気配を感じたことをきっかけに、佐伯家で起きた惨劇と、その家に足を踏み入れた者へ広がる呪いへ巻き込まれていく。物語は複数の人物の視点から描かれ、時間軸を前後させながら、呪いが次々と人々へ連鎖していく様子が明らかになっていく。
時系列で整理すると『呪怨』は意外とシンプルな物語だった
本作はオムニバス形式で物語が進むため、初見では非常に分かりづらい作品である。
柳ユーレイ演じる小林俊介のパートが終わったと思えば、今度は家庭教師の由紀、栗山千明演じる瑞穂、不動産会社の鈴木達也と妹・響子というように、主人公が次々と入れ替わっていく。
しかし、時系列順に整理してみると物語自体は意外なほどシンプルだ。
物語の始まりは大学時代まで遡る。小林俊介、佐伯伽椰子、小林の妻は大学時代の同級生だった。ストーカー気質の伽椰子は小林に想いを寄せており、その気持ちを日記へ書き残していた。
その後、伽椰子は佐伯剛雄と結婚する。しかしこの剛雄もやべぇやつで、彼がその日記を見つけたことから嫉妬で狂った剛雄は伽椰子を殺害し、この事件によって佐伯家には強烈な呪いが生まれた。
やべぇやつとやべぇやつって一緒になっちゃうんだ。
時は流れ、小学校教師となった小林俊介が、不登校となった俊雄の家庭訪問で佐伯家を訪れる。この時点で俊雄はすでに呪いの存在となっており、小林もまた呪いへ巻き込まれていく。
そのあと家は売られ、村上家のものになる。
家庭教師の由紀が村上家を訪れ、村上家も呪いへ巻き込まれていく。
さらに栗山千明演じる瑞穂のエピソードへ続く。瑞穂は彼氏を探して夜の学校へ向かい、俊雄や伽椰子と遭遇する。
そして村上家の柑菜、不動産会社の鈴木達也、霊感の強い妹・響子へと物語は繋がっていく。
こうして時系列だけを見ると、『呪怨』は一家に生まれた呪いが、関わった人間へ次々と連鎖していく物語であることが分かる。
本編では同じような展開が続く作品だからこそ、あえて時系列をシャッフルすることで、「あの出来事はここへ繋がるのか」と観客に考えさせる構成にしたのだろう。
呪いのルールが曖昧
しかし最後まで観ても呪いのルールだけはよく分からなかった。
それは「誰が呪われるのか」というルールが非常に曖昧であるということ。
例えば栗山千明演じる瑞穂だ。
劇中では明確な説明はないものの、瑞穂は村上強志の彼女であることから、おそらく一度は村上家へ遊びに行っていたと考えるのが自然だ。そうでなければ、学校で突然俊雄や伽椰子に襲われる理由が説明できない。
つまり、「呪われた家へ一度でも足を踏み入れたことで呪いの対象になった」という解釈であれば、一応は辻褄が合う。
しかし、その考え方をすると今度は別の疑問が湧いてくる。
終盤に登場する不動産会社の鈴木達也は、仕事として何度も佐伯家へ入っているではないか。さらに霊感の強い妹・響子も家の中へ入っている。
それなのにこの二人は本作では伽椰子に襲われることがないのはなぜだ?
一方で、瑞穂は彼氏の家へ遊びに行っただけと思われるのに命を落とす。
この差は一体何なのだろうか?
呪いに時間差があるのか、それとも伽椰子が相手を選んでいるのか。そのあたりの説明は劇中では一切ない。
ホラーだから理不尽なのは分かるが、「家へ入れば呪われる」というルールなのか、「伽椰子に認識されたら終わり」ということなのか、その基準だけは最後までよく分からなかった。
栗山千明が一番理不尽
もう一つ気になったのは、学校のエピソードである。
生徒がまだ校内に残っているにもかかわらず、校舎はなぜか真っ暗。職員室まで電気が消えている。そして携帯電話には「4444444444」という着信。
当時は十分不気味だったのかもしれないが、今見返すと少し演出がストレートすぎる。
それでも、瑞穂のエピソードは本作の中でも特に理不尽さが際立っていた。
佐伯家の事件とは何の関係もなく、彼氏との関係だけで巻き込まれたように見えるからだ。
結局、『呪怨』の世界では、一度でも呪いに接触した時点で逃げ場はない。そういう恐怖を描きたかったのだろう。
ただ、自分としては「誰が、なぜ、このタイミングで狙われるのか」というルールだけは、最後まで少し曖昧なままだった。これじゃ対処の仕様がないじゃないか。
90年代ジャパニーズホラーの空気
全体を通して感じたのは、やはり2000年前後のジャパニーズホラー独特の空気感である。
蝉の鳴き声が響き、蒸し暑い夏の住宅街が映し出される。昔のホラー作品の空気がそのまま残っていて、どこか懐かしさを感じた。
そして『呪怨』を象徴するのが、伽椰子の「あ゛あ゛あ゛……」という不気味な声だ。
この声は清水崇監督自身の声を加工して作られたものらしい。首を損傷して殺された伽椰子の、言葉にならない怨念が漏れ出ていることを表現しているという。
人間の言葉ではないようで、それでいてどこか人間らしさも残っている。その不気味さは本作最大の特徴であり、この後の『呪怨』シリーズでもずっと受け継がれていく理由もよく分かる。
さらに、関節を鳴らしながら這うように近づいてくる伽椰子の動きも印象的だった。
清水崇監督は、人間心理をじっくり描いて恐怖を作るというよりも、音や動き、そしてビジュアルによる生理的な気味悪さで観客へ迫ってくるタイプの監督なのだと感じた。
もちろん細かく見ればツッコミどころは少なくない。
それでも、『呪怨』が後のジャパニーズホラーへ与えた影響は非常に大きく、伽椰子の声や動きは、それだけで作品を象徴するアイコンになっている。
一方で、物語の発端を振り返ると、結局は人間の嫉妬や執着が生んだ悲劇でもある。
大学時代の想いが残された日記をきっかけに悲劇が始まり、その嫉妬が一家惨殺へと発展し、やがて無関係な人間まで巻き込む呪いへ変わっていく。
結局、一番怖いのは幽霊ではなく、人間の負の感情なのかもしれない。





