2022年に公開された映画『X エックス』。
本作は、タイ・ウェストが監督・脚本を務めたスラッシャーホラーで、本作を起点に若き日のパールを描く前日譚『Pearl パール』、マキシーンのその後を描く『MaXXXine マキシーン』へと続き、3部作を構成している。
1970年代の低予算ホラーやポルノ映画の空気を取り込みながら、「若さ」「老い」「性欲」「承認欲求」を惨劇の中に重ねて描いている。ちなみにミア・ゴスは主人公マキシーンと老女パールの二役を演じている。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:X エックス
原題:X
公開年:2022年
製作国:アメリカ合衆国
上映時間:105分
監督:タイ・ウェスト
脚本:タイ・ウェスト
原作:なし
出演:ミア・ゴス、ジェナ・オルテガ、マーティン・ヘンダーソン、ブリタニー・スノウ、キッド・カディ、オーウェン・キャンベル、スティーヴン・ユーア
ジャンル:ホラー/スラッシャー
あらすじ

1979年。ポルノ映画スターを目指すマキシーンは、恋人でプロデューサーのウェイン、出演者のボビー=リンとジャクソン、監督のRJ、その恋人ロレインとともに、映画撮影のためテキサス州の人里離れた農場を訪れる。
一行は高齢の夫婦ハワードとパールが所有するゲストハウスを借り、彼らには詳しい目的を知らせないまま撮影を開始する。しかし、マキシーンに強い関心を抱いたパールは、若者たちの性的な自由や若さを目の当たりにするうち、抑え込んできた欲望や嫉妬を爆発させていく。
夜になると農場では異変が相次ぎ、撮影スタッフは一人ずつ姿を消していく。やがて一行は、老夫婦が隠していた狂気と殺意に直面することになる。
1時間近く何も起きない。
こういうホラー映画で大事なのが、この人には助かってほしいと思わせる何かだと思う。
しかし本作の主人公たちにまったく感情移入できない。
彼らはポルノ映画を撮影するために農場へやって来るのだが、農場主から「こんなに大人数で来るとは聞いていない」と言われても、金を上乗せしてその場を済ませようとするし、最初からかなり場当たり的で誠実な人間には見えない。
そのくせ、「映画でビッグになってやる」とか謎の自信家ばかりで、会話もほとんどセックスの話ばかり。典型的なおめでたい人間たちだ。
この映画ではセックスについて話して、セックスを撮って、またセックスしているという時間が長すぎる。
しかも彼らは自分たちが撮っているポルノ映画を、まるで傑作でも作っているかのように語る。
内容もクソもないクソみたいな映画で、劇中映画そのものがまったく面白そうに見えない。
そして本編も約1時間経つまで誰も殺されない。
スラッシャーホラーなのに、意識は「こいつらいつ殺されるんだろう」ということだけだった。
パールの狂気で唯一考えさせられたこと
パールとハワードが若者たちを殺す動機は、結局かなりシンプルだった。
若さと性への執着。
自分たちは年老いて、若い頃の肉体も美しさも失った。
その目の前で若者たちが自由にセックスをして若さを謳歌しているのに対して、パールはそれを羨ましく思うと同時に激しく嫉妬する。
若い男に性的に迫って拒絶されれば、今度はその欲望が殺意へ変わる。
ハワードも妻の異常性を知りながら彼女を止めるのではなく受け入れている。
そして本作で一番きつかったのが、この老夫婦のセックスシーン。
誰得のシーンだよ。
何歳の設定なのかよく分からないけど、見た目は90歳近い。あれでよく勃つな。
老人ホームでも恋愛や男女関係の問題は起きると聞く。
年を取ったからといって、性欲や「誰かに求められたい」という気持ちが完全になくなるわけではない。
年を取れば食べられる量も減るし、セックスだって若い頃のようにはできなくなる。
でも欲求そのものは残るし欲求って生きることそのものなのかもしれない。
パールの問題は欲望を持っていることではなく、それを失っていく現実を受け入れられず、若者への嫉妬と殺意に変えてしまったところにある。
だから老夫婦のセックスシーンは生理的にはかなりきつかったけれど、「老人にも性欲はある」という普段あまり見たくない現実をあえて突きつけている場面とも言える。
欲望が残っているということはそれだけまだ生きているということなのかもしれない。
三部作でも『X エックス』単体では退屈
映像については1979年が舞台なのであえて昔の映画のような質感に寄せているのだろう。
最初は本当に70年代の映画を観ているような感覚になるし、2022年の作品としては明確に狙った演出なのだと思う。
ただではなぜ物語自体を1970年代にする必要があったのかというと、そこまで必然性が感じられなかった。
現代ならスマホで簡単に連絡できるから誰かがいなくなれば電話もできるし、助けも呼べる。
だから外部と切り離された農場で殺人を成立させるために、スマホのない時代へ舞台を移した。
あとはポルノ映画を撮っている若者たちという設定。
そのくらいじゃない?
物語として1979年だからこそ成立するという強さまでは感じない。
そして最後まで観終わって最初に出てきた感想は、
「終わったけど、何もなかったな」だった。
典型的なスラッシャー映画の形をなぞって終わるわけなのでそこに斬新さがない。老人の性欲をテーマにしたという点以外、至ってよくあるタイプのホラー映画なのだ。
ところどころ変わった演出を入れようとしているのも分かるがそれを差し引いても、作品単体としては非常に退屈。
本作は『Pearl パール』『MaXXXine マキシーン』へと続く三部作で、三作品すべてを観れば、本作で描かれたことにも別の意味が出てくるのかもしれない。
そもそも一作目が面白いとは思えなかったのにあと二作も観ないと本作の意味をちゃんと理解できないんて、なにかったるいことしてんだよ。
『Pearl パール』『MaXXXine マキシーン』の考察記事↓







