2013年に公開された映画『ワールド・ウォーZ』。
本作はマックス・ブルックスの小説『WORLD WAR Z』を原作とするゾンビ・パニック映画だが、映画版の物語は原作小説とは大きく異なる内容となっている。
公開当時に観た作品で、結構新しいゾンビ表現となっていて最後まで飽きずに観ることができました。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:ワールド・ウォーZ
原題:World War Z
公開年:2013年
製作国:アメリカ合衆国/イギリス
上映時間:116分
監督:マーク・フォースター
脚本:マシュー・マイケル・カーナハン、ドリュー・ゴダード、デイモン・リンデロフ
原作:マックス・ブルックス『WORLD WAR Z』
出演:ブラッド・ピット、ミレイユ・イーノス、ダニエラ・ケルテス、ジェームズ・バッジ・デール、ファナ・モコエナ
ジャンル:パニック/アクション/ホラー
あらすじ

元国連職員ジェリー・レインは、妻カリンと2人の娘を車で学校へ送る途中、フィラデルフィアで突然発生した異常事態に巻き込まれる。
人間がわずか十数秒で凶暴なゾンビへと変化する謎の感染症が世界各地へ急速に拡大。ジェリー一家は軍の艦隊へ避難するが、家族の安全と引き換えに、ジェリーは感染源や対策を探る任務への参加を求められる。
韓国、イスラエルと各地を巡る中、ジェリーは感染者が特定の人間を襲わない現象に気づく。その理由に突破口を見いだした彼は、ゾンビから人間を認識されにくくする方法を試すため、自ら危険な実験に挑む。
ラストについて
この映画で人類が見つけたのは、ゾンビ化した人間を元に戻す治療法ではない。
ジェリーは各地を巡る中でゾンビが重い病気を抱えた人間を襲わず、まるでそこにいないかのように素通りしていることに気づく。彼らにとって重篤な病気を持つ人間は感染を広げる宿主として適していないということなのだろう。
そこで終盤、WHOの施設に保管されている病原体を自分の体へ入れ、意図的に「病気の人間」になるという方法を試す。
これは諸刃の剣で、ゾンビには襲われなくなっても今度は自分に入れた病原体そのものによって死ぬ可能性があるでしょ。そのためゾンビの目を欺いた後には、今度はその病気を治療しなければならない。
つまり完成したのはゾンビを倒すワクチンではなく一時的にゾンビから「見えなくなる」ための偽装。
これによって人類はようやく、ゾンビの群れの中でも行動できる方法を手に入れ、見えない隙にゾンビをぶっ殺そうという作戦に出る。
パターンがないなら作ればいい。ゾンビ映画の可能性を広げた映像
この映画を観ながら、人間の想像力って本当にすごいなと思った。
ゾンビ映画なんてとっくにやり尽くされているはずだからだ。なんなら世界的オワコンだ。
ジョージ・A・ロメロが作ったノロノロ歩くゾンビがあり、その後には『28日後…』のような猛スピードで走る感染者が登場した。
ではその先に何ができるのか?
本作はそこをかなり真面目に考えているように見える。
特にすごかったのがゾンビがゾンビの上によじ登り、巨大な壁を越えてくる場面。
何百、何千というゾンビが折り重なれば、それ自体が巨大な山になって壁を越えてしまう。
ロメロだって、ダニー・ボイルだって、最初からこんな絵を考えていたわけではないと思う。
先人が作ったアイデアに、後のクリエイターが「だったら、こうしたらもっと面白いんじゃないか」と新しい発想を足していく。
これってもうカルチャーなんだよね。
飛行機の場面も同じ。
逃げ場のない上空で感染者が発生したらどうなるのか。
機内がゾンビだらけになりジェリーが手榴弾を爆発させる。
機体に穴が開いて、ゾンビたちが次々と外へ吸い出されていくシーンだってありそうで見たことがなかった。
もちろんその後に主人公が都合よく生き残るところは、まあまあ都合主義だが、そこで死んだら元も子もないのでそこは目をつぶろう。
さらに終盤になると、それまでの大規模な「動」のパニックから一転し、WHO施設では音に反応するゾンビの間を静かに進み、目的の病原体を取りに行くという急にステルスゲームみたいになる。
なぜゾンビがみんな揃って休息時間なのかはよく分からない。人によって昼も夜も違うだろうとも思う。
それでも映画としてはこの緩急が見事で最後まで飽きさせない。
パターンがないならパターンを自分たちで作ればいい。まさに「鳴かぬなら鳴かせてみよう~」的な発想だ。
「もしもこんな場所で感染したら」「ゾンビがこんな動きをしたら」というシチュエーションを次々と作り出していて、まだまだ表現方法は残っていると驚かせてくれる。
そこに一番感動した。
続編について
そして主演がブラッド・ピットというのも自分にはかなり新鮮だった。
『セブン』や『ファイト・クラブ』のように、どこか危険だったり、やんちゃだったり、クセのある人物を演じている印象が強いが、本作のジェリーはかなり真正面からヒロイックな人物。
家族を守りながら世界を飛び回り、感染の謎を解き、人類が生き延びる方法まで見つけてしまう。
正直この役は別にブラッド・ピットじゃなくても成立したと思うが、逆に言えば「ブラッド・ピットがゾンビ映画に出る」という意外性があるからこそ観たくなるし、これまであまりこういう大規模なサバイバル作品をやってこなかったからこその新鮮さもあった。
結果として僕は、スピード感も、恐怖も、映像的なアイデアも含めてかなり楽しめた。
そして現在、『ワールド・ウォーZ』の新作は再び動き出している。パラマウントは2026年4月のCinemaConで新作を開発中であることを正式に認めている。ただし現時点では撮影中とまでは確認されておらず、公開日、監督、ブラッド・ピットの続投なども発表されていない。
ただ、ここからどう続けるのかは気になる。
人類はすでに病気を利用してゾンビから認識されなくなる方法を手に入れた。
完全勝利ではないにせよ、少なくとも前作の時点で大きな突破口は見つかっている。
そこからさらに何を足すのか。
やり尽くされたはずのゾンビ映画に、まだ新しい絵を作れることを一度証明した作品だからこそ、続編でもまた「そんなやり方があったのか」と思わせてほしい。





