2019年に公開された映画『台風家族』。
当初は2019年6月に公開の予定であったが、出演していた新井浩文の性的不祥事を受けて延期され、9月6日から26日まで期間限定での公開となった作品(劇場によっては期間を延長して上映された。)
公開されてよかったね。だって、草彅剛、下衆な役で好感持てたから。
本作は市井昌秀監督によるブラックコメディドラマ。主演の草彅剛は、父親を憎み自分本位に生きる長男・小鉄を熱演。笑いと涙、そして家族の絆を描いた一本。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:台風家族
原題:台風家族
公開年:2019年
製作国:日本
上映時間:108分
監督:市井昌秀
脚本:市井昌秀
出演:草彅剛、新井浩文、MEGUMI、中村倫也、若葉竜也、尾野真千子、甲田まひる、榊原るみ、藤竜也
ジャンル:ドラマ、コメディ
あらすじ

銀行強盗で2,000万円を奪ったまま10年前に失踪した両親。失踪宣告が成立する直前、遺産相続のため4人きょうだいが実家へ集まることになる。しかし、そこでは両親の”見せかけの葬儀”が行われようとしていた。遺産を巡る兄弟げんかや家族の秘密が次々と明らかになる中、それぞれが抱えていた親への思いと本当の家族の姿が浮かび上がっていく。
前半と後半で180度変わる人物像
この映画って、すごく簡単に言うと『ONE PIECE』のサンジとゼフみたいな関係の親子の話。
または『ニュー・シネマ・パラダイス』のトトとアルフレードみたいな。
そもそもフラッと姿を消した親父は、小鉄にちゃんと愛情表現をしてこなかったわけで、不器用すぎる昭和の親父だったため、息子は愛されていることに最後まで気付けなかったわけだ。
そもそも親父もちゃんと小鉄に愛情表現していればこんな騒動にはならなかったのではないか、という元も子もないことを言ってみる。
だから小鉄は、親父が死んだと聞いて遺産目当てで帰ってくるような、かなり自分勝手な人間として描かれている。
前半は本当に嫌なやつで、親父を恨み続けている姿ばかりが映し出される。
でも物語が進むにつれて、その印象がどんどん変わっていく。
実は小鉄自身も、自分の夢だった俳優を諦め、娘の夢を叶えるために人生を選び直していたという後出し設定は卑怯だ。
さらに、2,000万円を強奪して姿を消した最低な人間だと思っていた父親も、実は息子のことを誰よりも考えて行動していたことが明らかになっていく。
物語自体はすごく王道なんだけど、「最悪だと思っていた人間が、実は一番家族を思っていた」というギャップが、この映画最大の魅力になっている。
前半と後半で人物の見え方が180度変わる作りが、とても上手い作品だった。
父親が残したビデオテープは『ニュー・シネマ・パラダイス』
この映画の肝は、やっぱり親父が残したビデオテープ。
そこには、俳優を目指していた小鉄の、ほんの少ししか映っていない出演シーンだけを親父が繋ぎ合わせた映像が残されている。
この演出はまさにイタリア映画の『ニュー・シネマ・パラダイス』を思い出した。
あの作品も最後にアルフレードがキスシーンだけを繋ぎ合わせた映像が流れてくるけど、意識してるのかな?
前半では、親父は小鉄のことなんて何とも思っていないように描かれている。というか親父視点では全く描かれず、家族の視点やそのほかの人物の視点でしか親父は語られない。
その構成もあえてなんでしょう。だから出てきたビデオテープだけで小鉄への愛情を全てを物語るという粋な演出になっています。
実は自分を嫌っていた、突き放していたと思っていた親父が、誰よりも自分のことを見てくれていた。
誰よりも応援してくれていた。その事実が最後になってようやく伝わるシーンは、めちゃめちゃベタベタなんだけど、やっぱいいよね。
ここで『ALWAYS 三丁目の夕日』みたいな大袈裟なBGMが流れないのが好感もてます。あざとさは極めて薄め。
男同士って、どうしても素直に愛情表現ができない生き物なんですよね。だからこそ、言葉じゃなく行動や形に残ったものが最後に響いてくる。
この映画は小鉄を前半であれだけ傍若無人で身勝手な男として描いたからこそ、終盤で「実は誰よりも愛されていた」というギャップが際立ち、王道ながら非常に心を打つ作品になっている。
結局両親は?
全てのきっかけは電話詐欺でしたね。
小鉄が免許を取ったことを孫娘(小鉄の子供)から聞いた親父は、小鉄がさっそく車の事故を起こしたという電話を聞いて金を得るために銀行強盗をすることに。
車で逃走した両親は犯人と連絡をとるが、その電話の途中で妻(もともとボケていたて介護をしていた)が心臓発作で死亡。
父親は冷たくなった妻と共に思い出の川(妻の誕生日に家族でキャンプをした)に行くが、そこで転倒して死亡。
二人は骨になって10年後に家族に発見されるという流れ。
妻の介護も家族にちゃんと伝えてればまた色々自体も変わっただろうにね・・・。
すべては親父のいじっばりで強情な性格も問題もしなくはない。
笑わせて泣かせるバランス
MEGUMI演じる長女の恋人が、実家でなぜか自慰行為をしているシーン。あれは正直、いる?
っていうかその前にセックスシーンもいる?
末っ子がYouTuberを目指していて、遺産相続の現場をライブ配信しようとするくだりも、今の時代らしい演出。僕自身YouTubeをやっているから、YouTuberってこういうイメージ持たれるんだよなと少し苦笑いしながら見てました。
さらに、家族みんなでキャンプ場へ向かうシーンでは、全員がスローモーションで格好良く歩いていくんだけど、用意されていた車は軽自動車。「全員乗れないじゃん」というオチまで含めて、この映画らしいユーモアがしっかり効いている。
こういう細かい笑いを挟みながら、イライラさせて、笑わせて、最後に泣かせる。この感情の起伏の作り方がすごく上手いんですよね。
中心にあるのはあくまで親子愛なんだけど、その周りをコメディがうまく支えているから重くなりすぎない。
しかも最後までほとんど家のなかで物語が進んでいくワンシチュエーションドラマ。舞台劇を見ているような感覚もあって、派手な演出に頼らず脚本と役者の芝居で見せる作品になっている。
そして何より印象的だったのが草なぎ剛。今回みたいな下衆な役、意外なくらいハマっていた。
最近は稲垣吾郎や草なぎ剛も、そういうイメージに縛られない役柄をどんどん演じていますよね。その方が俳優としての幅は間違いなく広がると思います。
この作品でも前半は本当に嫌な男として描かれるからこそ、後半の変化がより生きてくる。
王道の親子ドラマではあるけれど、草なぎ剛の新しい魅力を引き出した作品としても印象に残りました。







