2021年に公開された映画『ドント・ルック・アップ』。
『マネー・ショート 華麗なる大逆転』『バイス』のアダム・マッケイ監督が手掛けたNetflixオリジナル映画。
巨大彗星の衝突というSF的な設定を用いながら、本質的に描いているのは現代社会への痛烈な風刺。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:ドント・ルック・アップ
原題:Don’t Look Up
公開年:2021年
製作国:アメリカ
上映時間:145分
監督:アダム・マッケイ
脚本:アダム・マッケイ、デヴィッド・シロタ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、メリル・ストリープ、ジョナ・ヒル、ケイト・ブランシェット、タイラー・ペリー、マーク・ライランス、ティモシー・シャラメ、ロブ・モーガン、アリアナ・グランデ
ジャンル:SF、ブラックコメディ、社会風刺
あらすじ

天文学者のランドール・ミンディ博士と大学院生ケイト・ディビアスキーは、6か月後に地球へ衝突する巨大彗星を発見する。人類滅亡を防ぐため政府やメディアへ危機を訴えるものの、政治的思惑や経済的利益、SNSやゴシップに埋もれ、その警告は誰にも真剣に受け止められない。刻一刻と衝突の時が迫る中、人類は滅亡を回避できるのか。
誰も「上」を見ようとしない社会風刺映画
本作は、巨大彗星が6か月後に地球へ衝突することを発見した天文学者たちが、人類へ警告を発する物語。
レオナルド・ディカプリオ演じるランドール博士と、ジェニファー・ローレンス演じる教え子の大学院生ケイトは、一生懸命政府へ危機を訴えるが、メリル・ストリープ演じるオーリアン大統領は全く相手にしない。
この時点で、なるほど、この映画はリアルなパニック映画じゃなくて、政治そのものを皮肉るブラックコメディなんだと推測できる。
メリル・ストリープ演じる大統領はどこかトランプ大統領を彷彿とさせる破天荒さ。
そしてテレビへ出演して国民へ危機を訴えても、話題になるのは「ランドール博士かっこいい」「セクシー」ということばかり。
彗星衝突という人類滅亡級のニュースより、芸能ゴシップの方が注目されるという構図は、かなり痛烈だった。
映画の中では「気象情報以下の扱い」とまで言われるんだけど、これがまた恐ろしい。怖いのは彗星ではなく、人間の無関心。
映画の中の登場人物たちの無関心は、実際の世界でもわりと近いから恐ろしい。
しかも衝突まで6か月という設定も絶妙だった。明日ではなく、数十年後でもない。「まだ半年ある」と思ってしまう絶妙な時間だからこそ、人は危機を先送りにしてしまうのか。この時間設定も非常によくできていると思った。
そしてタイトルの『ドント・ルック・アップ』。
直訳すれば「上を見るな」だが、このタイトルが意味しているのは「空を見るな」ではない。
「そこにある不都合な真実を見ようとするな」、「見なかったことにしろ」という、人間の思考停止そのものを表している。
人命より利益
物語は途中からさらに皮肉が加速する。
ようやく政府が彗星について発表したと思ったら、「この彗星には約32兆ドル相当の希少鉱物が眠っている」と判明。
すると人類を救うために彗星を破壊する計画は中止し、今度は「資源を回収しよう」という話になってしまう。
ここがこの映画で一番ブラックなところだった。
人類滅亡を防ぐことよりお金を儲けることが優先され、政府も巨大企業も、「世界を救う」ではなく「世界で一番儲ける方法」を考え始める。
んなアホな。
とても現実的ではないけども、国のトップがこんな感じだとあながちなくもないのかな・・・
そして『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でディカプリオの相棒を演じたジョナ・ヒルとの再共演も個人的にはちょっとテンションが上がった。
真実から目を背ける人間の物語
結局、政府もメディアも経済的利益や支持率を優先した結果、彗星の軌道を変える計画は中止。
巨大彗星は地球へ衝突し、人類は滅亡する。
ランドール博士とケイトは家族や仲間と静かに最後の食卓を囲み、そのまま炎に包まれて最期を迎えてしまう。
一方、大統領や超富裕層だけは宇宙船で脱出するものの、新天地では肉食生物にあっさり食べられてしまうという、最後まで皮肉たっぷりの結末だった。
この映画が問いかけているのは、「正しいことは本当に勝つのか」ということ。
結局、人は真実を信じるのではなく、自分が信じたい真実だけを信じる生き物なんだろう。
SNSでも政治でもニュースでも、今の社会には同じ構図がうんざりするほどあふれている。
本作は彗星パニック映画ではない。現代社会そのものを映し出した、極めて痛烈な社会風刺映画だった。





