2024年に公開された映画『ラストマイル』。
塚原あゆ子監督、野木亜紀子脚本によるオリジナル映画であり、テレビドラマ『アンナチュラル』『MIU404』と同じ世界を舞台とするシェアード・ユニバース作品。
いつ面白くなるんだろう?そんなことを考えてたら気づいたら映画終わってしまいました。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:ラストマイル
原題:LAST MILE
公開年:2024年
製作国:日本
上映時間:128分
監督:塚原あゆ子
脚本:野木亜紀子
原作:―
出演:満島ひかり、岡田将生、ディーン・フジオカ、大倉孝二、酒向芳、宇野祥平、安藤玉恵、丸山智己、中村倫也、火野正平、阿部サダヲ、石原さとみ、井浦新、窪田正孝、市川実日子、綾野剛、星野源、橋本じゅん、前田旺志郎、麻生久美子
ジャンル:サスペンス/ミステリー/ドラマ
あらすじ

ブラックフライデー前夜、世界規模のショッピングサイト「DAILY FAST」の西武蔵野ロジスティクスセンターから発送された荷物が、配送先で爆発する事件が発生する。
同じ頃、同センターへ新センター長として舟渡エレナが着任。チームマネージャーの梨本孔とともに対応に追われるが、爆発物がどの商品に仕掛けられているのか分からないまま、物流網は動き続けていた。
やがて事件の背景には、かつて物流センターで働いていた山崎佑という男の存在と、過酷な労働環境、巨大物流システムに潜む構造的な問題が浮かび上がる。エレナと孔は警察や配送業者らと協力しながら、残された爆発物と事件の真相を追っていく。
豪華俳優が出る度に気が散る
本作を観ていて最初から妙な違和感があった。
それはやたら豪華な俳優が出てくるということ。
石原さとみ、井浦新、窪田正孝、綾野剛、星野源、麻生久美子……。
普通の映画だったら、これだけの俳優を使えばそれなりに重要な役を任せるはずなのに、出番は妙に短い。
その繰り返しで、全然物語に集中できねぇ。
後から知ったんだけれども、本作は『アンナチュラル』『MIU404』と世界観を共有するシェアード・ユニバース作品だった。
監督は塚原あゆ子、脚本は野木亜紀子。『アンナチュラル』の主人公が石原さとみで、『MIU404』の中心人物が綾野剛と星野源。
なるほど、そういうことだったのね。
ただごめんなさい、自分は『アンナチュラル』も『MIU404』も見ていない。
そういう人間が本作だけを見ると、この演出はかなり気持ち悪い。
過去作を知っている人なら、「おお、あのキャラクターが出てきた!」とニンマリできるんだろうけど、知らない人間からすれば豪華俳優が次々と脇から顔を出しては消えていくだけである。
むしろノイズでになり、邪魔。
自分はこういうファンサービスが好きじゃない。
例えば『君の名は。』の瀧が『天気の子』に出てくるような演出も同じで、その瞬間に映画の世界から一度意識が外へ飛んでしまうのだ。
そうなった時点で、目の前の物語への没入が一回切れる。
もちろん過去作のファンにはサービスになる。でも一つの作品は一つの作品だけで完結してくれた方が自分は好きだ。
もちろんそれは『踊る大捜査線』みたいなシリーズものは別の話だ。
タイトルも違うのに監督と脚本家が同じってだけでこういう有難迷惑な演出は、単なるオナニーでしかない。
本作の場合、そのシェアード・ユニバースが本筋の面白さを補強するどころか、ただでさえ散漫な作品をさらに散漫にしているように感じた。
結局犯人は誰?5年前の飛び降りから爆破事件の結末まで
物語の発端は5年前。
デイリーファスト西武蔵野ロジスティクスセンターで働いていた山崎佑は、過酷な労働によって精神的に追い詰められ、稼働中のベルトコンベアへ飛び降りる。
一命は取り留めたものの植物状態となり、死に切れることができなかった。
しかし会社はこの出来事を大きな問題として表へ出すことなく処理する。
山崎のロッカーには、「2.7m/s→0、70kg」という数字が残されていた。
ベルトコンベアの速度と耐荷重である。
つまり山崎は、自分自身の身体を投げ込んでシステムを止めようとしていたのだ。
そして山崎の恋人だった箕まりかは、事件を隠した会社への怒りから派遣社員として物流センターへ潜入し、彼女は12個の爆弾を用意し、商品へ紛れ込ませて全国へ発送。
ブラックフライデーを前に、デイリーファストから発送された荷物が次々と爆発する。
やがて犯人の正体は判明するが、その時点ですでにまりか自身は亡くなっており、しかも発送済みの荷物には、まだ未爆発の爆弾が残されていた。
最後の爆弾が仕掛けられていたのは羊枕。
それもすでに利用者のもとへ届いてしまうが、佐野親子の機転によって最悪の事態は回避される。
こうして表面的には事件が終わる。
満島ひかり演じるエレナは、デイリーファストという巨大企業が過去の問題を認識しながらそれでも利益や企業防衛を優先してきた現実を知り、会社に見切りをつけセンター長を辞める。
でもこれって結局根本的な解決には至っておらず、最後は「コンベアはこれからも動いていく」みたいなシーンで幕を閉じた。
過酷な労働環境も、巨大企業が現場を使い潰す構造も、爆弾をすべて回収したからといって消えるわけではない。
だから最後まで残る「2.7m/s→0、70kg」という数字が、本作のメッセージそのものなんだと思う。
山崎が止めたかったのは、一台のベルトコンベアではなく、その向こう側にあるシステムそのものだった。
言いたいことは分かる。非常によく分かるんですよ。
ただ、それが映画として面白いかと言われると、自分は全く別の話だと思った。
エンタメとしても中途半端
本作のメッセージ性は非常にわかりやすい。
便利なネット通販。翌日には届く荷物。送料無料。ブラックフライデー。
消費者はその便利さを当然のように享受しているけれど、その裏側では誰かが過酷な環境で働いている。
巨大企業は数字と効率を追いかけ、現場の人間がシステムの一部として消費されていく。
そういう現代社会への問題提起なんでしょう。
でも、映画にするならもっといくらでもハラハラできるはずなんですよね。
爆弾が全国に発送されている。どの商品なのか分からない。いつ爆発するかも分からない。
これだけサスペンス向きの材料が揃っているのに、驚くほど盛り上がらない。
「いつ面白くなるんだろう」と思いながら見ていたらそのまま最後まで終わった。
満島ひかり演じるエレナも、どこかで見たことがあるような既視感満載のキャラクターだったし。
さらに気になったのが、要所要所の管理職やリーダーがほぼ女性だということ。
女性が上司なのが悪いわけでは全くないし現実にいくらでもいる。
ただ本作の場合、自分にはその配置があまりにも意図的に見えてしまった。
「女性もトップに立つ時代ですよ」というメッセージまで作品から受け取らされているようで、そこまで意識させられると自分にはちょっとダサく見えてしまう。
社会派としても、サスペンスとしても中途半端で、豪華キャストもシェアード・ユニバースも、むしろノイズになっている。
正確には爆弾は爆発しているんだけれども、自分の感情が全然爆発しない作品だった。





