【映画】容疑者 室井慎次(2005)|わかりやすく解説します。つまらない理由・結末・犯人・桜井杏子の正体【ネタバレ考察】

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映画『容疑者 室井慎次』をイメージした画像 サスペンス

2005年に公開された映画『容疑者 室井慎次』。

『踊る大捜査線』シリーズの室井慎次を主人公にしたスピンオフ映画で、テレビシリーズから脚本を手掛けてきた君塚良一が、本作では脚本に加えて監督も務めた。

同年公開の『交渉人 真下正義』に続く「踊るレジェンド」企画の一作で、本編シリーズとは異なる重厚なサスペンス色を強く打ち出した作品となっている。

しかし、やっぱり厳しかった。観る前からの予想を超えることはない作品。

本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。

基本情報




作品名:容疑者 室井慎次
原題:The Suspect
公開年:2005年
製作国:日本
上映時間:117分
監督:君塚良一
脚本:君塚良一
原作:―
出演:柳葉敏郎、田中麗奈、田中圭、八嶋智人、吹越満、佐野史郎、哀川翔、北村総一朗、斉藤暁、小野武彦、小木茂光、大和田伸也、津嘉山正種、柄本明、大杉漣、真矢みき、筧利夫
ジャンル:刑事/サスペンス/ドラマ

あらすじ




映画『容疑者 室井慎次』をイメージした画像

2005年2月、警視庁新宿北警察署管内で発生した殺人事件を捜査していた室井慎次。事情聴取を受けていた新宿北署の神村誠一郎巡査が突然逃走し、車にはねられて死亡したことで、事件は神村による犯行として処理されようとしていた。

しかし、被疑者本人の証言を得ないまま捜査を打ち切ることに納得できない室井は、押収物から事件の不自然な点を発見し、捜査続行を決断する。ところが室井自身が、特別公務員暴行陵虐罪の共謀共同正犯容疑で逮捕されてしまう。

サスペンスとしても弱い




本作を一言で言うなら、つまらない。

交渉人 真下正義』と同じく青島俊作以外のキャラクターを主人公にした作品だけれど、本作には『踊る』らしさがほとんどと言っていいほど、ない。

交渉人 真下正義』はまだスピーディーな展開にエンタメ要素を盛り込んだ作品で、青島が出てこないにせよ十分、世界観とイズムを感じた作品だった。

ところが本作は全体的に暗い。「同じことはしたくない」という意志の表れなのだろうけど、どんよりしている。室井さんを主役にするってことはこういうことなのか。

スリーアミーゴスも出てくるけれど、正直かなり滑り散らしている。

「とりあえず『踊る』要素を入れておこう」というスタッフのありがた迷惑なサービス演出が邪魔。

だったら暗いサスペンスとして振り切ればいいのだけれど、そこも弱い。

そもそも室井慎次というキャラクターを知っている以上、本当に犯罪を犯したとは最初から思えないのだ。

どうせ何かにハメられたんだろう?どうせ最終的には助かるんだろう?

だから「室井は助かるのか?」という緊張感ではなく、「どこで助かるんだろう」という視点になってしまいドキドキ感を削いでしまっている。

これではサスペンスとしてかなり不利だ。

室井の逮捕の裏には、池神静夫・警察庁次長と安住武史・警視庁副総監による次期警察庁長官の座をめぐる派閥争いがあった。

室井はその権力闘争に巻き込まれたわけだが、これも『踊る大捜査線』では何度も描かれてきた話だ。

警察は味方なのか、それとも敵なのか。

シリーズをずっと見てきた側からすると、「うん、それはもう知ってる」。

結局犯人は?室井慎次はどうなる?事件の真相と結末




この事件は少しややこしい。

最初に黒木(田中圭)が殺された事件の被疑者として疑われたのは、新宿北署の神村誠一郎巡査だった。

神村は事情聴取中に逃走し、車にはねられて死亡してしまうため警察上層部は「神村が犯人だった」として、被疑者死亡のまま事件を終わらせようとする。

しかし室井は、神村と被害者・黒木孝夫の持ち物などから事件に違和感を覚え、捜査続行を決断。

そして最終的に明らかになる真相は、黒木を実際に刺殺した実行犯が風俗店店員の石本一馬。石本一馬は室井さんを殴ったやつです。

そして石本に黒木殺害を依頼したのが桜井杏子。

つまり神村は桜井杏子を庇うために黙秘を続けていたのだ。

桜井杏子黒木神村の両方と交際しており、三角関係のもつれから黒木の殺害の計画を立てるというものでした。

ちなみに桜井杏子は『容疑者 室井慎次』で突然出てきたキャラクターではない。

実は劇場版第1作『踊る大捜査線 THE MOVIE』にも、喫茶店のウェイトレスとして登場している。

当時は役名こそ明示されていなかったが、後に桜井杏子と同一人物という設定になっている。

事件に巻き込まれたことをきっかけに、厳格な父親からアルバイトを禁止されたという背景までつながっている。

そして、その父親・桜井宗男も事件に大きく関わっている。

娘が黒木殺害に関与していることを知った父親は、杏子へ捜査の手が伸びないよう大金を積んで灰島秀樹を雇ったのだ。

灰島は神村の母親を利用して室井を刑事告訴させ、捜査そのものを潰そうとする。つまり室井の逮捕は、警察内部の派閥争いだけではなく、桜井杏子を守ろうとする父親と灰島の思惑まで絡んだ結果だった。

最終的には杏子の父親が自白し、石本も逮捕。事件の全貌が明らかになったことで灰島側も告訴を取り下げ、室井の嫌疑は晴れる。

ただし、室井が完全に元の立場へ戻るわけではない。

辞職まで覚悟していた室井に対し、新城は辞表を受理せず、広島県警察本部刑事部への異動を命じる。

つまり室井の無実は証明されたが、警察内部の権力闘争に巻き込まれた結果、東京を離れることになったわけだ。

実行犯は石本一馬、殺害を依頼したのが桜井杏子。

そして室井を追い詰めたもう一つの事件では、「娘を守ろうとした杏子の父親と灰島秀樹、さらに警察上層部の派閥争い」が絡んでいた、という二重構造になっている。

しかし桜井杏子よ、わざわざ覚醒剤の罪まで自ら語って増やさなくても・・・アホなの?

灰島を活かしきれなかった




そんな中で、新キャラクターとしてかなり良かったのが八嶋智人演じる灰島秀樹だ。

ありきたりと言えばありきたりだが、八嶋さんの演技が結構行ききっていて、なかなか憎たらしい。

室井を追い詰める側の弁護士として、存在感はかなり強い。

だからこそ、もっと灰島との対決を中心にしてもよかったと思う。

法と証拠と言葉を使って室井を追い詰め、室井側もそれをどう切り返すのか。

そこにもっと心理戦があれば、かなり面白くなったはずだ。

例えば『スリーパーズ』のように、法廷や弁護士同士のやり取りそのものが緊張感を生む映画もある。

でも本作には、そこまでのハラハラ感がなく、灰島という面白いキャラを持っているのに、弁護士ものとしても中途半端。

細かいところでは、哀川翔の芝居もかなりオーバーで周囲から浮いて見える。

「あれ?演技、下手じゃね?」と思ってしまった。

一方で、『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』ではかなり嫌な役回りだった沖田仁美と、新城賢太郎が今回は室井を助ける側へ回る。

以前は対立していた人間たちが、今回は室井のために動くっていうのは、シリーズファンとしてちょっと嬉しい。

しかし逆に本作には青島がワンシーンも出てこない。

スピンオフだから青島を出さないという方針は分かるし、事件が新宿で起きていて、湾岸署とは管轄も違うので青島が捜査へ入ってくるのは現実的ではないのは理解できる。

しかし室井が逮捕されて、人生最大級のピンチになっているというのにさすがに面会くらい来るんじゃないかな。

今回はスリーアミーゴスが「青島君も心配している」という程度。

もちろん、室井が警察内部の権力争いに巻き込まれている以上、上から「面会へ行くな」という圧力があった可能性も考えられるが、ちょいど寂しさは残った。

全てが中途半端




本作では室井慎次の過去も描かれ、東北大学時代の恋人が不治の病に倒れ、室井は看病するために大学を辞めようとする。

ところが相手の父親に反対され、二人は引き裂かれてしまう。

その後、彼女は亡くなってしまうも、さらに「室井が恋人を自殺に追い込んだ」という悪質なデマまで流される。

その後も独身のまま生きていくことを考えると、この恋愛は彼の人生にかなり大きな傷を残したのかもしれない。

この映画の一番厳しいところは、室井の過去、警察内部の権力争い、弁護士との対決と、材料だけ見れば、なかなか面白くなる要素はかなり揃っているのに、そのどれもが中途半端だったこと。

『踊る』らしさは薄れ、サスペンスとしての意外性も弱く、弁護士ものとしても振り切れない。

テンポも悪い。

最終的な結論としては「室井慎次というキャラクターを掘り下げたことには意味がある。でも映画としてはつまらない」だった。

ちなみに室井さんが主人公になった映画がつくられていて、そちらはなかなか人間ドラマという意味では深化していました。↓

「踊る大捜査線」シリーズ3選