【映画】BROTHER(2000)|ケンの最後は?暴走し過ぎな山本に巻き込まれた仲間たち【ネタバレ考察】

スポンサーリンク
スポンサーリンク
映画『BROTHER』をイメージした画像 アメリカ映画

2000年に公開された映画『BROTHER』。

え?『菊次郎の夏』の翌年に公開って、北野武どんだけのスピード感で映画作るのよ。

本作はヤクザ映画というよりも「死ぬ場所を探している男」の物語なんですよね。

『菊次郎の夏』が「ホワイト北野」なら、本作はまさに「ブラック北野」。

本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。

基本情報




作品名:BROTHER
原題:BROTHER
公開年:2000年
製作国:日本、アメリカ合衆国、イギリス
上映時間:114分
監督:北野武
脚本:北野武
原作:なし
出演:ビートたけし、オマー・エップス、真木蔵人、加藤雅也、寺島進、大杉漣、石橋凌
ジャンル:バイオレンス、犯罪、ドラマ

あらすじ




映画『BROTHER』をイメージした画像

武闘派ヤクザの山本は、所属していた花岡組の解散によって日本での居場所を失う。組織に吸収されることを選んだ弟分の原田に助けられ、死亡を偽装して国外へ逃亡した山本は、消息を絶っていた異母弟のケンを頼ってロサンゼルスへ渡る。

ケンは仲間のデニーたちとドラッグを売って暮らしていたが、取引をめぐる争いに巻き込まれていた。山本は日本のヤクザ流のやり方で敵対勢力を排除し、白瀬や加藤といった日本人の仲間も加わって、急速に勢力を拡大していく。

人種も言語も異なる者たちは、やがて山本を「兄貴」と慕い、固い絆で結ばれていく。しかし、組織の拡大は巨大なイタリアン・マフィアとの衝突を招き、山本たちは後戻りのできない抗争へと突き進んでいく。

公開当時は全然客が入ってなかった




本作品は友達と中学生くらいに新宿の映画館に観に行ってるんですよ。

北野武って今では世界的な映画監督として評価されてるけど、当時は結構マニアックな映画監督という雰囲気があった。

この映画も正直言って全然客が入ってなくて。

日本国内での興行収入は約8.8億円なのでやっぱり大ヒットに至っていない。

北野武自身も「俺の映画は客が入らない」ってしょっちゅう嘆いてましたね。

なぜかというと90年代はハリウッド映画全盛期。日本でも分かりやすいエンターテインメントが大ヒットしていて、そんな時代に北野武は、説明しすぎず、余白を残し、観る側に考えさせる映画を作っていた。

そりゃ爆発とかわかりやすい展開が主流になっていた時代にはそぐわなかったのかもしれない。

実際、絶妙に長い沈黙や間とか、突然すぎる暴力とか、粋とか仁義とか、そのころの中学生の頃の自分が観ても理解できるわけもなく。

『HANA-BI』や『菊次郎の夏』などをきっかけに海外で高く評価され、その評価が日本へ逆輸入されるような形で、多くの人が北野武作品と向き合い始めたように感じる。

だから北野武って時代が少し早すぎた監督なんじゃないかな。

日本で一度死に、アメリカで死に場所を探す山本




物語は、北野武演じる山本と大杉漣演じる原田という兄弟分の関係から始まる。

組長が殺され、原田は生き残るために敵対組織へ移る。これって現実で言えば、潰れそうな会社から他の企業へ転職するようなものなんですよね。しかもその企業先は前の会社のライバル会社。

生きるためには当然の判断なんだけど、山本はそれができない。

だって筋を通す男だから。

原田は「山本を殺せ」という命令を受けながらも、ホームレスの死体を利用して山本の偽装死を演出し、パスポートと金を持たせてアメリカへ逃がす。

山本も「俺は死んだことになった」というセリフを残しアメリカへ向かう。

つまり本作は日本を追われて新しい人生を始める話じゃなく、最後にどこで死ぬかという物語なのだ。まったくもって前向きじゃないのだ。

普通に暴走




アメリカで腹違いの弟・ケンと再会しても、山本の生き方は変わらない。

ケンがマフィアの手先に金を巻き上げられていると知ると、相手の勢力なんて調べもせずにいきなりぶん殴ってしまう。

「じゃあ戦争だ!」

いやいやそれは無茶だろ。っていうかおたまおかしいだろ。

それに巻き込まれたケンの友人たちに同情してしまうくらい、山本って暴走気味なんです。

でも山本って最初は英語が全くできなかったのに徐々に英語を身に着けていってるんですよね。それがなんか微笑ましいというか。

「ファッキン・ジャップぐらい分かるよ、バカ野郎。」

これがよっぽどむかついたのかな。

っていうか、会談の席で机の下から銃で撃つシーン。

いつ付けたんだよ

あと必要以上に撃ち過ぎだろ!

とっくにみんな死んでるのにさらに撃ち込んで「ファッキン・ジャップぐらい分かるよ、バカ野郎。」って、それ言いたいだけやろ。

遊びと暴力が同居する、北野武独特のリズム




本作はずっとシリアスなわけじゃなく、むしろくだらない遊びのシーンも随所に挟まれる。

初登場した時の派手な格好したマリナに放つ加藤の一言。

「美人なんだかブスなんだかわかんないっすけど、ずいぶん地味ですね。」という皮肉はまさにアメリカ的なジョーク。

山本とデニーが道を歩く男女どっちが多いか賭けをして、山本に加担するマリナが何度も通って山本を勝たせようとするシーンだったり。

加藤なんかバスケットボールで下手なくせに「パス!パス!」ってずっと叫んでるのに、誰もパスをくれない。

こういう北野武らしい笑いの要素も実は本作の緩急に繋がっている。

しかしその数分後には人が何人も死んでたりするから怖い。

北野武映画って突然の暴力が非常に多いのが特徴だったりします。

遊びの時間をしっかり描くからこそ、暴力が突然やってきた時の衝撃が何倍にもなる。

早く死にたい男・山本




山本たちは組織を殺していってどんどん勢力を拡大していく。

このあたりで仕切ってる日本人・白瀬を仲間に引き入れる場面も、「いきなり舎弟になれ」って要求はかなり無茶だろ。

結果的に白瀬と組んだことで組の動きはさらにエスカレートして全滅を早めたわけだけど、しかし一方で、どうせ同じ街で勢力を広げていけば、いずれぶつかる相手だから早いこと仲間にしておいた方が身のためという考えも理解はできる。

そして物語は後半さらにくらーい感じになっていく。

普通の抗争映画だったら、「ここからどう逆転するんだろう」とか、「最後は勝つんじゃないか」という期待があるが、本作にはそれがない。

もう観ている側も、これは勝てるわけがないと分かってしまうから。

しかし冷静になってみると発端は全部山本だよね。

山本の暴走でやらなくてもいいマフィアとの抗争が始まったわけで・・・

ちなみに山本の弟であるケンは、直接殺害されたシーンはないので生きてるのか死んでるのかわかりません。

最後にダイナーで山本がケンに電話をかけるんだけど出ません。おそらくマフィアに殺害されているか、一人逃げ延びたのかは想像にゆだねる感じになっています。

ヤクザへってバカだね。といういつものメッセージ。




北野武のヤクザ映画って常にヤクザを格好良く描かない。それは「ヤクザってバカだね」と一歩引いたところからみているような印象を受ける。

もちろん筋を通す世界、義理や人情は描かれるけど、その先に待っているのは栄光ではなく悲惨な死。

北野武はしょっちゅうヤクザ映画撮ってるからヤクザ好きと思う人がいるかもしれないけど、ちゃんと観てると全くもって美化していないことがわかる。

「筋を通したって、最後はこうなるんだよ。」その現実を冷たく描いているように感じる。

私が北野武のヤクザ映画に好感がもてるのはこういう冷めた目線に共感させられるからだ。

そして北野武作品の暴力っは本当にあっけない。

一瞬で終わる。

まるで武士の真剣勝負みたいに一瞬で生死が決まる。

さっきまで笑い合ってた仲間がいとも簡単に命を落とす。

その残酷さと暴力の怖さこそが、派手なアクション映画では味わえない北野武作品の魅力なんだと思う。

『BROTHER』というタイトルが意味するもの




本作のタイトルは、山本と腹違いの兄弟・ケンのことを指しているだけではない。

山本と原田の兄弟分。山本と加藤の親分子分を超えた兄弟のような関係。山本とケンという実の兄弟。

そして人種も国籍も違う山本とデニー。

さらには白瀬との関係も含めて、この作品にはいろんな「BROTHER」が描かれている。

だから実際本作が公開された海外でも「Aniki」という言葉が広まったそうだ。

自らが犠牲になってもデニーだけは逃がすラストシーンはこの映画の真骨頂だ。

渡されたバックの中には金が入っていて、メモ用紙に書いてある言葉。

「イカサマで巻き上げた60ドルだ。あとは利子だ。」

粋!

THIS IS IKI!

とは言え、暴走する山本にみんな巻き込まれた話ともとることができるのでちょっと複雑なんだけど、やっぱりいま見返してみても面白い。北野武監督作品はハリウッド映画にはない空気感があって好きなんだよなぁ。

北野武監督作品3選