2026年に公開された映画『夜勤事件』。
本作は、インディーホラーゲームで人気を集めたChilla’s Artの同名作品を実写映画化したホラー映画である。
実は本作、結構わかりづらいのでなるべく整理して時系列ごとに解説していきます。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:夜勤事件
原題:夜勤事件 The Convenience Store
公開年:2026年
製作国:日本
上映時間:83分
監督:永江二朗
脚本:宮本武史
原作:Chilla’s Art『夜勤事件』
出演:南琴奈、竹財輝之助、加藤夏希、関哲汰、田中俊介、五頭岳夫
ジャンル:ホラー
あらすじ

深夜のコンビニでアルバイトを始めた田鶴結貴乃。勤務中、店内や周辺で次々と不可解な出来事に遭遇し、やがて過去に起きた一家心中事件や失踪事件との関係が浮かび上がる。事件を追う猿渡刑事の捜査によって、結貴乃が語っていた恐怖体験の裏側と、思いもよらない真相が明らかになっていく。
ゲームらしさはあるが、映画としてはとにかくチープ
本作は、Chilla’s Artによるホラーゲーム『夜勤事件』を実写映画化した作品である。だから一人称視点のカメラワークや、主人公の目線でコンビニ内を移動していくような映像など、随所にゲームらしい演出が取り入れられている。
ただしそれが映画としての怖さにつながっているかというと、正直かなり微妙。
とにかくSEがダサい。
静かなコンビニで突然「ドン!」と音を鳴らしたり、何かが現れるたびに大げさな効果音を重ねたりと、必死に観客をビビらせようとしている。
しかし肝心の映像が全然怖くないため、音で無理やり驚かそうとしているようにしか見えない。
特に、ベッドの下を携帯電話のライトで照らす場面。そこには髪の長い女の幽霊が隠れており、こちらを向いた瞬間に「ウワーッ!」というような叫び声が入る。
いらん。こすられ過ぎた表現で全然怖くない。
ただ静かに顔を向けるだけなら、まだ不気味な余韻が残ったかもしれない。ところが、わざわざ大きな声を足して「ここが怖い場面ですよ」と説明してしまうようなもの。演出のダサさが目についてしまった。
登場する幽霊にも、ほとんど新鮮味がない。
一家心中事件で殺された少年は、『呪怨』に登場する子供の幽霊を薄めたような印象。
ケンタの母親らしき髪の長い女も、身体を不自然に動かしながらこちらへ近づいてくるという、これまでの日本のホラー映画で何度も見てきた表現である。
「ああ、このパターンね」「これ、どこかで見たな」
そう感じてしまった時点で、もう怖くない。
さらに気になったのが、周囲の登場人物の演技の下手さ。主人公の田鶴結貴乃を演じる南琴奈はそこまで気にならなかったが、ホームレス、配達員、電気会社の作業員、先輩店員などが妙に棒読みで、かなり演技が下手に見える。
ゲームに登場するNPCの不自然さを再現した演出なのか、単純に演技力の問題なのかは分からない。ただ、観客が恐怖よりも「演技下手だな」と感じてしまったら、ホラー映画としてはかなり損ではないだろうか?
ちゃんと説明します
物語は大きく二つに分かれている。
前半はコンビニ店員の田鶴結貴乃が刑事に怪異体験を語る証言パート。後半は猿渡刑事が事件の真相を追うパート。
そして最後に明らかになるのが、コンビニ店長の鶴川を殺した犯人は結貴乃自身だったというオチ。
つまり前半で結貴乃が語っていた怪異の多くは、彼女の自作自演だったということになる。
彼女はこの土地で2009年に起きた一家心中事件の母親を模倣した赤いワンピース姿で現れ、店長の両目を五寸釘でえぐって殺害。その遺体をコンビニの地下室へ隠していた。
結貴乃は犯行後、DAY1からDAY3までの間に隠蔽工作を進める。
4枚のSDカードを自作し、差出人不明の荷物として自分宛てに届くよう準備。監視カメラの映像にも手を加え、先輩店員の船橋を排除するため、ホームレスと何らかの計画を立てていた。
DAY4になると地下室に隠した店長の死体から異臭が発生。エリアマネージャーが確認に訪れたことで状況が動き、結貴乃は自ら警察へ通報する。そして到着した猿渡刑事に、この4日間で起きた怪異を語り始める。
エリアマネージャーが店長の死体をみて逃げるシーンはエンドロールが終わった後に挿入されている。
ということで本作は最後の最後まで見なければ事件の全体像が分からない構成となっている。
この構成の肝は、結貴乃の証言が信用できないという点なのだろう。
彼女は土地に残る怨念に取りつかれていたのか、記憶を書き換え自分が犯人であることを認識できなくなったのか。あるいは最初から完全犯罪を狙ってすべてを演じていたのか。
しかし、この種明かしがどうにもすっきりしない。
そこへ至るまでの説明が少なすぎるため、見終わった瞬間に「ああ、そういうことだったのか」と納得するより、「ん? 結局どういうこと?」という疑問の方が先に出てくる。
特に分からないのが、結貴乃がどの時点で一家心中事件の詳細を知ったのかということ。
彼女はホームレスから呪いについて聞く前から、赤いワンピース姿の母親を模倣していたし、父親が妻の両目をえぐったという殺害方法も知っていたように見える。
匂わせる場面はあるものの明確な説明がないんです。観客側が想像して補うしかないというのが本作の肝ではあるものの、この作りはちょっと不親切にも見える。
『リング』と『呪怨』を混ぜて、あとは観客に丸投げ
そもそも一家惨殺の父親はなぜ殺害映像をわざわざ記録しなければならないのか?
そもそもいまどきなぜ4枚のSDカードなのだろう?面倒くさすぎる。
この辺りの理由が全く見えてこない。
さらに、「SDカードの映像を見た者は、4日以内に誰かへ見せなければ大切な人を失う」という呪いのルールもあまりにも既視感が強い。
これはもう『リング』そのままやんけ。
現代の記録媒体に置き換えただけじゃん、という印象しかない。
そこへ『呪怨』を薄めたような子供の幽霊や、髪の長い女の幽霊が出てきて、大きなSEで無理やり驚かせようとする。
これまでのジャパニーズホラーで見た要素を寄せ集めているのに、そのどれにも勝てていない。
最後には猿渡刑事の妻のお腹にいた赤ん坊が、呪いの犠牲になったことが示唆されるが、その後の猿渡がどうなったのかは描かれていない。
そもそも半年後になっても結貴乃は逮捕されていない。
猿渡は結貴乃が犯人だと気づかなかったのか?気づいたけれど逮捕できなかったのか?赤ん坊を失ったあとも刑事を続けているのか?
赤いお守りが何だったのかも分からない。
もちろんホラー映画は何もかも説明すればいいというものではないし、説明しすぎれば恐怖は薄れるし、観客に考えさせる余白も必要である。
ただ本作は余白ではなく、ただの説明不足。
監督としては散りばめたヒントから真相を組み立て、トリックを楽しんでほしいのかもしれない。でも、その前に最低限の道筋くらいは示してほしい。
面白いか、面白くないかと聞かれたら、僕は面白くなかったです。







