2023年に公開された映画『1秒先の彼』。
本作は、山下敦弘監督、宮藤官九郎脚本による日本映画。
原案は2020年の台湾映画『1秒先の彼女』(原題:消失的情人節)。日本版では主人公の男女設定を逆転させ、舞台を京都へ移している。
この映画、大きな矛盾があって素直に入り込めなかったです。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:1秒先の彼
原題:1秒先の彼
公開年:2023年
製作国:日本
上映時間:119分
監督:山下敦弘
脚本:宮藤官九郎
原作:チェン・ユーシュン『1秒先の彼女』
出演:岡田将生、清原果耶、福室莉音、片山友希、荒川良々、加藤雅也
ジャンル:恋愛/ファンタジー/コメディ
あらすじ

京都の郵便局で働く皇一(ハジメ)は、何をするにも人より1秒早いせっかちな性格。一方、大学生の長宗我部麗華(レイカ)は、何をするにも1秒遅く、毎日のように郵便局へ通っては同じ宛先へ手紙を送り続けていた。
ある日、ハジメは路上ミュージシャンの桜子と出会い、花火大会へ行く約束をする。しかし楽しみにしていた当日を迎えたはずが、目を覚ますとすでに翌日。しかも自分だけが真っ黒に日焼けしており、肝心の1日について何も覚えていなかった。
消えてしまった1日に何が起きたのか。ハジメが失った時間をたどる中で、いつも郵便局に現れていたレイカと、彼女が抱えてきた思いが少しずつ明らかになっていく。
結局「消えた1日」は何だったのか?大きな矛盾
本作は前半と後半で視点がガラッと変わる構成。
京都の郵便局で働くハジメが路上ミュージシャンの桜子に惹かれデートをするようになり、やがて桜子から「弟の手術代が必要」と40万円を求められ、ハジメはその金を持って彼女のもとへ向かおうとする。
しかしその日だけがハジメの記憶から丸ごと消えており、目を覚ましたら翌日でしかも自分だけ真っ黒に日焼けしている。
前半では「一体あの1日に何があったのか」という謎として話が進むが、後半になると今度は長宗我部麗華の視点へ切り替わり全部の事情が見えてくる。
実は桜子はハジメを騙そうとしていた詐欺グループの一員で弟の手術代という話も嘘であり、ハジメに40万円を持ってこさせること自体が罠だった。
本作には何をするにも人より遅れてしまう麗華たちにだけ訪れる、不思議な「ボーナスタイム」のような1日があり、周囲の人間は止まったような状態になり、麗華たちだけがその中を自由に動ける。
麗華はその時間を使ってハジメを詐欺から救い、結果として40万円を失わずに済ませていたのだ。
つまりハジメにとって「消えた1日」は、実は麗華が彼を守っていた1日だったということ。
構造自体は非常に分かりやすいし、「そういうことだったのね」とちゃんと回収される。
しかし、本作はここに大きな矛盾点が生じてしまう。
最大の矛盾点
本作で一番引っかかったのがこの「消えた日曜日」の扱い。
ハジメにとっては、土曜日の次に目を覚ましたら月曜日になっていて、「日曜日が丸ごと消えている」という大事件が起きているが、これって別にハジメだけの話ではなくね?
時間が止まっていた間に動けなかった人間は、基本的にみんな同じように日曜日の記憶がないはずだ。
だったら世の中で国家レベルの騒ぎになるんじゃないのか?
月曜日に会社や学校へ行けば、「昨日何してた?」という会話くらいするだろうし、そこで全員が「よく分からないけど一日中寝ていた」と答えたら、さすがに異常事態だと気づくはずだろ。
家族同士でも同じことが起きているのだから、「自分だけ寝過ごした」で片付けるには無理がある。
もちろん本作はSFではなくファンタジーなので、設定を細かく検証する映画ではないことは分かっているが、非常にモヤモヤして物語に入っていけない。
そこを完全にスルーして、ハジメだけが「一日消えた」と大騒ぎしているから違和感が残って仕方がない。
恋愛のためのファンタジー設定とはいえ物語の根幹に関わる仕掛けなのだから、もう少しだけ辻褄を合わせてほしかった。
あとは人間が止まっているのに風だけビュンビュン吹いているのも気になる。その時間の理屈なら風だって止まってるはずでしょ?
「不信」をスルーできる人間ならこのファンタジーに入り込めるんだろうけど、自分はこういうことが一個一個気になってしまう。
コメディなのに笑えない。
ハジメが「京都といっても、本当の京都はこの辺や」みたいな話をするシーンで、天橋立の方まで行くと「そこも京都府ではあるけど、感覚としてはまた別」というような距離感があるらしい。
自分は東京の人間なので完全には分からないけど、「東京でも23区とそれ以外で感覚が違う」みたいなものなのかな。
そういう感覚は自分には新鮮にうつったけど、やっぱり関西を舞台にした映画にありがちな「しょうもない笑い」を入れてくるのはしんどかった。
失踪した父親の話をしているのに、「拾ったら1割もらえるんちゃう?」みたいな台詞を入れてくる。
いや、全然面白くねぇから。
もちろん本作自体がコミカルなファンタジーなので、そのテイスト込みの作品なのは理解しているが、もう少し普通に喋ってくれないのかな。
「関西だからこういう笑い入れておこう」とする脚本がノイズなんです。いや、面白かったらいいんですよ。面白くないからノイズなんです。
クドカンだったらもっと気の利いた面白いセリフ入れられると思うんだけど、今回なんで?
ハジメという男もなかなか絶妙で、顔はいいけど性格はかなりつまらない。
「ここは自分のいる場所じゃない」みたいなことを言いながら、30歳を超えても特に何か行動を起こしているわけではない。
そして岡田将生がこの役に妙にハマっている。
「顔はめちゃくちゃいいのに、つまんなそう」という印象と、ハジメという人物がかなり重なって見えた。
やっぱり、自分にはファンタジーがあまり好きではないことがわかった。





