2009年に公開された映画『カイジ 人生逆転ゲーム』
本作は、福本伸行の人気漫画『賭博黙示録カイジ』を藤原竜也主演で実写映画化したシリーズ第1作である。
借金を抱えた人間たちが、富裕層の娯楽として用意された命懸けのゲームへ参加する姿を描いた作品。
韓国の大ヒットドラマ『イカゲーム』は本作からインスピレーションを得たと認めている。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:カイジ 人生逆転ゲーム
原題:カイジ 人生逆転ゲーム
公開年:2009年
製作国:日本
上映時間:129分
監督:佐藤東弥
脚本:大森美香
原作:福本伸行『賭博黙示録カイジ』
出演:藤原竜也、天海祐希、香川照之、山本太郎、光石研、松尾スズキ、松山ケンイチ、佐藤慶ほか
ジャンル:サスペンス、ギャンブル、デスゲーム、ヒューマンドラマ
あらすじ

定職に就かず、だらしない毎日を過ごしていた伊藤カイジ。ある日、金融会社の遠藤から、友人の借金の保証人になっていたことを告げられる。利息によって借金は202万円にまで膨れ上がり、返済能力のないカイジは、一夜で借金を帳消しにできるというギャンブル船「エスポワール」へ乗り込む。
船内で待ち受けていたのは、カードを使った「限定ジャンケン」。勝てば借金を清算できるが、敗者はさらなる地獄へ突き落とされる。カイジは参加者たちの裏切りや策略に翻弄されながら、命と人生を懸けた勝負へ挑んでいく。
『イカゲーム』より先にあった命懸けのゲームと、藤原竜也の強すぎる演技
本作は、福本伸行の漫画を藤原竜也主演で実写映画化した作品である。今の時代に観ると、どうしても『イカゲーム』を思い出す。
借金を抱えた人間たちが、自分の命を懸けて、金持ちが考えたゲームに参加する。金持ちは自分たちの娯楽のために、追い詰められた人間たちを見世物にする。
大枠だけ見れば、『イカゲーム』は驚くほど本作に似ている。というか実際「本作からインスピレーションを得た」と認めているが、丸パクリやんけ。
そして相変わらず藤原竜也の演技が強い。
追い詰められ、泣き、汗をかき、絶望する。その演技があまりにも過剰すぎて、観ていて笑ってしまうほどである。
まぁ、設定が漫画なので本作はリアルな芝居を味わうというより、藤原竜也が全身でカイジを演じる、その熱量に巻き込まれていく映画なのか。
対立構造も非常に分かりやすく、貧乏人と金持ちが完全に分けられ、金持ちは心のない存在として描かれる。
もちろん漫画なので、そこを細かく言っても仕方がない。ただ金持ち側が一方的に悪として描かれすぎていて、さすがに単純だなとも感じた。
ちなみに本作では山本太郎も関西弁で出演しており、『バトル・ロワイアル』を思わせるのも嬉しい配役。
抜け出せない貧困の構造
地下の強制労働施設で、カイジが缶ビールを飲むシーン。相変わらず藤原竜也の演技は強いが、このビールの飲み方が本当にうまそうなんだよね。
藤原竜也は追い詰められた演技だけではなく、ビールをうまそうに飲む演技まで強い。
この地下の強制労働施設には地上の日本円とは違う独自の通貨と価値基準があって、過酷な労働をしてもそこで得られる金の価値は極端に低い。働いても働いても、自由になるための借金はなかなか減らないという設定。
アフリカをはじめとした貧困地域や、搾取され続ける労働者の構造を、地下帝国という漫画的な舞台に置き換えたようにも見える。
そのわずかな給料でビールやつまみを買ってしまえば、当然ながら借金の返済はさらに遠のいていく。それでも、過酷な労働の後には目の前のビールを我慢できない人間の性。
見方によっては過酷な労働とは言え彼らはそこそこ楽しんでるんじゃね?と思えるシーンもあり結局のところ、地上に戻っても大して変わらないのではないかと思ってしまった。
金よりも人間性という王道テーマ
本作のテーマは非常に分かりやすい。
心のない金持ちたちと、自分が危険な状況にいても、最後の最後で他人を気にかけることのできる人間。その対比である。
結局、金を持っているかどうかよりも人間として他者を思いやれるかどうかの方が大事だろうという、ちょっと説教臭いテーマである。
ゲーム自体のテンポは、それほど良くない。シリーズ一作目ということもあるのかもしれないが、次々にゲームが始まるというより、かなり人間の心情に時間を使っている印象。
今回、実質的に登場するゲームは、限定ジャンケン、鉄骨渡り、Eカードの三つのみ。
どちらかというと、ゲームの数やスピード感よりも、その中で追い詰められる人間の心理、裏切り、信頼、金に対する執着を描くことに重きを置いている。
だからテンポが悪いと感じる一方で、ゲームはあくまで、人間の本性を引き出すための装置になっている。
しかし天海祐希演じる遠藤に、カイジが金を借りるシーン。
カイジは利根川のイカサマに気づき、逆転するために遠藤から金を借りようとするが、その説得がかなり雑。
負ければ地下で130年以上労働することになるのに、負けた場合には遠藤がヨボヨボになるまで給料日にビールを振る舞うと言い、「一緒に人生を変えようぜ」と訴える。
相手が大金を貸すだけの説得力としては弱すぎるだろ。
遠藤はなぜあの程度の説得で乗れたのだろうか?ツッコむとこじゃないのかな。
ただカイジは熱いのだ。演技が強すぎるのだ。
最後の利根川の勝負について
利根川との最終勝負では、カイジが勝利する。
実際には利根川はイカサマを仕掛けており、勝負自体が公正ではなかった。
そのイカサマにカイジが気づき、逆転を狙う。
勝ち方は、カードをすり替えたように見せて実はすり替えていなかったというものだった。
利根川は追い詰められたカイジなら捨て身の作戦でカードをすり替え、一か八かの勝負に出たに違いないと信じ、自分はその意図まで読んでいるのだからカイジより一枚上手だと思うわけだ。
ただカイジはそこまで含めて利根川を試していた。
「こいつは絶対に疑ってくる」「俺が捨て身だから、カードをすり替えたと思うはずだ」と読んだうえで、あえて何もしない作戦に出て見事勝利をおさめる。
カイジがカードそのものを読んだというより、利根川の性格と自信を読んだ勝負だった。
仕組みとしては意外と単純だが、心理戦としてはよくできていたと思う。
ただ実際にはこの作品がシリーズ化され、『カイジ2 人生奪回ゲーム』『カイジ ファイナルゲーム』まで続くことを知っている。
だからこちらとしてはここでカイジが完全に負けることはないだろうということも分かってしまい、そこまで強い緊張感はなかった。
カイジが利根川の心理を読むのと同時に、視聴者側も「カイジがここで負けるわけがない」という展開を読むという皮肉な構図になってしまっているのが、シュールだ。






