2021年に公開された映画『消えない罪』。
監督は『システム・クラッシャー』のノラ・フィングシャイト、主演・製作をサンドラ・ブロックが務めた。
20年間服役した女性の社会復帰を描きながら、「刑期を終えても罪は消えない」という現実を真正面から描いた作品。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:消えない罪
原題:The Unforgivable
公開年:2021年
製作国:イギリス・ドイツ・アメリカ合衆国
上映時間:112分
監督:ノラ・フィングシャイト
脚本:ピーター・クレイグ、ヒラリー・サイツ、コートニー・マイルズ
出演:サンドラ・ブロック、ヴィンセント・ドノフリオ、ヴィオラ・デイヴィス、ジョン・バーンサル、リチャード・トーマス、アイスリング・フランシオシ、ロブ・モーガン
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
あらすじ

警察官殺害の罪で20年間服役したルースは、仮釈放され社会へ戻ってくる。しかし「警察官を殺した女」という過去は消えず、仕事や人間関係、そして妹との再会にも大きな壁となって立ちはだかる。一方、殺された警察官の家族もまた、ルースへの憎しみを抱え続けていた。過去と向き合いながら生きようとする彼女を待っていたのは、事件の真相を覆す衝撃の事実だった。
サンドラ・ブロックの顔
20年間の服役を終えたルースが刑務所から出てくる。その時のサンドラ・ブロックの顔がすごい。この世の不幸を全部背負ってきたような表情をしている。
『スピード』や『イルマーレ』に出ていた頃の、いつも綺麗で華のあるサンドラ・ブロックとはまるで別人。痩せて、老けて、目も死んでいて、20年間という時間が顔に全部出ている。
こういう役作りを見ると、やっぱり海外俳優はすごいなと思うし、この顔一発でこの作品への意気込みが伝わった。
出所したからといって、すぐ普通の生活へ戻れるわけではない。仕事を見つけても「警官を殺した女」という過去がついて回るし、好意を寄せてくる男がいても、ルースは素直に受け入れることができない。
近い距離に人が入ってくること自体に過敏になっていて、相手を疑ってしまう。
20年間ずっと閉ざされた場所で生きてきた人間が、いきなり人を信じて幸せになれるわけがないんだよね。
自由になったはずなのに、精神は全然自由になっていない。
刑期を終えても罪は消えない
本作のタイトル『消えない罪』、まさにその通りで、ルースは刑期を終えたのに罪そのものは何一つ消えていない。
殺された警察官の息子たちは、ルースが出所したことを知り、「父親を殺した女がのうのうと生きている」と怒りを募らせる。
加害者からすれば20年間刑務所へ入って刑期が終わったから「これで終わり」と言われても、納得できるわけがない。
ルースはルースで、ずっと妹へ手紙を書き続けていたが妹は里親に引き取られ、その養父母は手紙を一切見せないという選択をしていた。
ルースと養父母が会う場面は、かなり息苦しい。ルースは妹へ伝えたいことが山ほどあるが、弁護士から「余計なことは言うな」と止められ、自分の思いを自由に話すことすらできない。
一方で養父母も、殺人犯の姉から自分たちの娘を守ろうとしている。
みんなそれぞれの立場で正しいと思う行動をしているのに、ルースの思いだけはどこにも届かない。
人を殺したという事実があるだけで、何を言っても言い訳に聞こえ、どんな愛情も自己中心的に見られてしまう。ここがすごくリアルだった。
刑罰を終えることと、社会から許されることは別なのだ。
罪は法律上消化されても、人の記憶からは消えないとは地獄のようである。
もしもあの場に銃がなかったら?
終盤で、警察官を撃ったのはルースではなく、当時5歳だった妹のケイティだったという事実が明らかになる。
立ち退きを求めて家へ来た保安官を、幼い妹が誤って撃ってしまったのだ。
ルースは妹の将来を守るため、「自分が撃った」と嘘の自白をして、20年間服役したわけだ。
つまりルースは警官殺しに関しては何も悪くなかった。
妹の罪をかぶっただけで、人生を丸ごと失ってしまったという悲劇。
これは確かに姉妹愛としては重いし、泣ける話ではあるが冷静に考えると疑問も残る。
ケイティは当時5歳だった。
真実を話していたとしても、ルースと同じように20年間服役することにはならなかったはずだし、何らかの保護や治療という形になった可能性もある。
もちろんルースは、妹に「自分が人を殺した」という記憶や罪を背負わせたくなかったんだと思うが、そのために自分が20年間を捨てるという選択は、本当に正しかったのかな。
その愛情が最善の選択だったかは簡単に答えを出せるものではない。
一つ言えば、そもそもあの場に銃がなければ、この事件は起きていないということ。
5歳の子どもの手が届く場所に銃があり、その一発で一人の命が失われ、姉は20年間服役し、妹は記憶を失い、被害者家族は復讐心を抱えることになった。
そう考えると、最後に行き着くのは「アメリカの銃社会が悪いんじゃないか」というところにつきる。
包丁なら同じことが起きなかったとは言い切れないけれど、引き金を引くだけで命を奪えてしまう銃は、やっぱり危険すぎる。
本作は表面上、罪と赦し、姉妹愛を描いた映画である。
でもその根底には、銃によって簡単に人の人生が壊される社会への批判もあるように感じた。




