2026年6月12日に公開された日本のSFサイコエンターテインメント映画『NEW GROUP』。
本作では、日本の学校教育でも馴染みのある「組体操」をモチーフに、集団への同調圧力や個人の意思が失われていく恐怖を描くという独特なホラー作品なんだけど、全く怖くありません。
だから一体何を見せられているのかわからなくなるシュールな作品。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:NEW GROUP
原題:NEW GROUP
公開年:2026年6月12日
製作国:日本
上映時間:82分
監督:下津優太
脚本:下津優太、佐原百子
原作:下津優太(オリジナル)
出演:山田杏奈、青木柚、駒井蓮、木下暖日、佐々木ありさ、ロジャース歌乃、細井じゅん、松本亮、足立智充、坂倉なつこ、清水崇、前野朋哉、ピエール瀧
ジャンル:SF/サイコスリラー/ホラー
あらすじ

引っ込み思案な女子高生・愛は、機能不全の家庭環境を抱えながら、学校では目立たない日々を送っていた。
そんなある日、学校で生徒たちが突然「組体操」を始めるという奇妙な現象が発生する。
最初は一部の生徒だけだった集団行動は、やがて学校全体へと広がり、誰もが当然のように組体操に参加するようになっていく。
しかし、愛と海外から帰国した転校生・優は、その異様な光景に違和感を抱く。
周囲が疑問を持たずに集団へ従っていく中、二人は次第に学校を覆う狂気と不条理に巻き込まれていく。
ひたすらシュールな映像が続く82分間
監督・原案を務めるのは、長編デビュー作『みなに幸あれ』で注目を集めた下津優太。
あぁ、だからか。自分は合わないのは。
『みなに幸あれ』でも組体操してたけど何なの?
本作では人間ピラミッドという奇妙な題材を使い、集団心理や同調圧力を描いているんだけどこれは相当にひどい映画だった。
まず全体的にインディーズ映画のような独特の空気感が漂っている。もちろん自主制作映画のような雰囲気自体が悪いわけではないが、本作の場合、その独特な世界観がまったく面白さにつながっていない。
ホラー映画という位置づけなのだろうが、恐怖も緊張感もほとんど感じられない。ひたすらシュールな映像が続き、観ているこちらは「一体何を見せられているんだろう?」という戸惑いばかりが募っていく。
特に人間ピラミッドの描写。生徒たちが次々と組体操を始め、やがて集団が異様な光景を作り上げていく。
確かに見た目は奇妙だけど、じゃあ奇妙だからといって怖いわけではない。
ピエール瀧が出演しているから何とか観続けていたものの、物語に引き込まれることもなければ、次の展開が気になることもない。
シュールな映像を見せること自体が目的になっているようで、映画としての面白さがまったく感じられなかった。
人間ピラミッドは何のメタファーなのか?具現化する必要性が見えてこない
本作で最も理解できなかったのが、人間ピラミッドというモチーフの扱い方だ。
おそらく監督が描きたいのは、集団心理や同調圧力なのだろう。
誰かが始めたことに周囲の人間が次々と加わり、いつの間にかそれが当たり前になっていく。自分の頭で考えることをやめ、多数派に従うことが正しいと信じ込んでしまう。
「人間ピラミッドは害がないのだから、みんなも参加しましょう」というような発想も、まさにその象徴なのだと思う。
実際、下津優太監督はインタビューで、人間ピラミッドの三角形に上下関係やヒエラルキーを重ね、規律の取れた集団が思考停止していく恐怖を表現したかったと説明している。
つまり監督が何を描こうとしているのかは、ある程度理解できる。
しかし私が疑問に思うのは、なぜそれをわざわざ人間ピラミッドという異様な造形に置き換える必要があったのか?ということ。
同調圧力や集団心理というものは、別に人間をピラミッド状に積み上げなくても描けるはず。むしろ人間関係や日常的な行動の中で表現した方が、よほど身近な恐怖として伝わるのではないか。
もちろん抽象的なテーマを具体的な映像に置き換えること自体は映画の表現方法の一つだと思う。
しかし本作の場合は「人間ピラミッド」という異物を具現化したことによって、何か新しい発見があるわけでもなければ、恐怖が増幅されるわけでもなかった。
ただ変わった造形を延々と見せられているだけ。
さらに気になったのが、女性が男性を一方的に殴る場面。
なぜ男性は反撃しないのか?もちろん恐怖で抵抗できなくなることはあるだろうが、その心理が十分に描かれているようには思えなかった。
私なら「いや、正当防衛なんだから抵抗すればいいじゃないか」と考えてしまう。
人物の行動に説得力がないため、暴力の恐ろしさよりも、なぜそんな不自然な状況になっているのかという疑問ばかりが残る。
結局、人間ピラミッドという映像上のアイデアが、恐怖にも物語の面白さにも結びついていないように感じた。
出演した俳優たちが気の毒になるほどのクソ映画
本作のラストは、人間ピラミッドに対抗するため、主人公の愛たちが新たな集団(丸い形の組体操)を作ってぶつかり合うものの、結局はまた別の「新しい集団・同調圧力」が始まってしまうという皮肉で締めくくられている。
本作を観終えて最初に思ったのは、出演した俳優たちが気の毒だということだった。
山田杏奈、青木柚、駒井蓮、ピエール瀧と、決して無名の俳優ばかりを集めた作品ではない。それなのに、これだけの出演者を揃えて、なぜこんな映画になってしまったのか。
もちろん、出演者自身は作品の意図に共感して参加しているのかもしれない。しかし観客としての私は、彼らの魅力が十分に生かされているとは到底思えなかった。
何よりも苦痛だったのは、82分という上映時間が異様に長く感じられたこと。
社会風刺として何かを伝えたいのだろうということはわかるが、そのメッセージを人間ピラミッドという奇妙な映像に託した結果、肝心の映画としての娯楽性が失われてしまっている。
難解な映画が嫌いなわけではない。シュールな作品が嫌いなわけでもない。
ただシュールであることと、面白いことはまったく別の話だ。
この作品を観て、集団心理の恐ろしさよりも、奇抜なアイデアだけで長編映画を成立させようとすることの難しさを感じた。
出演者にとって黒歴史になってもおかしくないのではないか。そんな余計な心配までしてしまうほど、個人的には厳しい評価になった。
クソ映画は年間数百本観るが、本作も間違いなくその位置づけに値する作品だった。





