1995年に公開された映画『ダイ・ハード3』。
1995年に公開された『ダイ・ハード』シリーズ第3作。高層ビルや空港といった限定空間を舞台にしていた前2作から大きく方向転換し、ニューヨーク全体を舞台にしたスケールの大きなアクション作品となった。
本作最大の特徴は、犯人サイモンが仕掛ける「ゲーム」である。爆弾テロと謎解きを組み合わせた展開は当時としては非常に斬新で、後の映画やドラマにも大きな影響を与えた。犯人から次々と出される無理難題に、ジョン・マクレーンとゼウスが振り回されながら事件を追う前半はシリーズ屈指の面白さを誇る。
また、ブルース・ウィリスとサミュエル・L・ジャクソンによる名コンビも本作の魅力。前2作の閉鎖空間アクションとは異なるバディムービーとしての面白さが加わり、シリーズの新たな方向性を示した作品となった。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:ダイ・ハード3
原題:Die Hard with a Vengeance
公開年:1995年
製作国:アメリカ
上映時間:128分
監督:ジョン・マクティアナン
脚本:ジョナサン・ヘンズリー
出演:ブルース・ウィリス、サミュエル・L・ジャクソン、ジェレミー・アイアンズ、コリーン・キャンプ、グラハム・グリーン
ジャンル:アクション、サスペンス、スリラー
あらすじ

ニューヨーク市内で爆弾テロ事件が発生する。犯人はサイモンと名乗り、市警察に電話をかけてくる。そして停職中の刑事ジョン・マクレーンを指名し、自らが仕掛ける危険なゲームへの参加を要求する。
理不尽な指令や難解な謎解きに振り回されるマクレーンは、偶然事件に巻き込まれたゼウスとコンビを組み、ニューヨーク中を駆け回ることになる。しかし、そのゲームの裏には誰も予想しなかった巨大な陰謀が隠されていた。
ニューヨーク全土を使った「ゲーム」という新機軸
子どもの頃に映画館で観た記憶があり、久しぶりに見返してみた。
そもそも『ダイ・ハード』シリーズが革新的だった理由は、主人公ジョン・マクレーンの存在にある。
ヒーロー映画の主人公なのに、決して格好良く描かれていない。本作においては妻とは別居状態で夫婦関係も破綻寸前。酒に溺れ、髪もハゲ上がり始めた冴えない中年刑事である。
当時のアクション映画といえば、筋骨隆々のスーパーヒーローが活躍する作品が主流だったが、そんな中で、どこにでもいそうな疲れた中年男が主人公だったことが『ダイ・ハード』最大の魅力だったと思う。
そして本作ではサミュエル・L・ジャクソン演じるゼウスとのコンビが物語を支える。二人の掛け合いは抜群で、後に『アンブレイカブル』でも再共演を果たすことになるが、今見返しても相性の良さは際立っている。
一方で、本作はシリーズの転換点でもあった。
前作までの舞台は高層ビルや空港など、限定された空間だった。しかし本作では舞台がニューヨーク全体へと広がる。
その代わりに導入されたのが「ゲーム」という要素である。
犯人サイモンは単純に爆弾を仕掛けるだけではない。クイズを出し、無理難題を押し付け、マクレーンとゼウスをニューヨーク中引きずり回していく。だから本作はアクション映画でありながら、謎解きやサスペンスの色合いも強い。
閉鎖空間の緊張感を求めていたファンからすると戸惑う部分もあるが、シリーズに新しい風を吹き込んだ挑戦作だったことは間違いない。
なぜ4ガロンを作れたのか?サイモンのクイズの答え
本作でちょっと考えてしまったのが、「3ガロン容器と5ガロン容器だけを使って4ガロンを作れ」という問題。
実は結構簡単だったりするので回答します。この問題には回答は2つあります。
回答1
① 3を満タン
[3] ●●●
[5] □□□□□
② 5へ移す
[3] □□□
[5] ●●●□□
③ もう一度3を満タン
[3] ●●●
[5] ●●●□□
④ 5へ移す
(5はあと2しか入らない)
[3] ●□□
[5] ●●●●●
↑
3側に1ガロン残る
⑤ 5を空にする
[3] ●□□
[5] □□□□□
⑥ 1ガロンを5へ
[3] □□□
[5] ●□□□□
⑦ 3を満タン
[3] ●●●
[5] ●□□□□
⑧ 5へ移す
[3] □□□
[5] ●●●●□
完成
4ガロン
回答2
① 5を満タン
[3] □□□
[5] ●●●●●
② 3へ移す
[3] ●●●
[5] ●●□□□
↑
5に2ガロン残る
③ 3を空にする
[3] □□□
[5] ●●□□□
④ 残った2を3へ
[3] ●●□
[5] □□□□□
⑤ 5を満タン
[3] ●●□
[5] ●●●●●
⑥ 3へ移す
(3はあと1しか入らない)
[3] ●●●
[5] ●●●●□
完成
4ガロン
つまりこのクイズは計算力というより、容器の容量差を利用して必要な量を作り出せるかを試す発想力の問題。
劇中ではマクレーンよりもゼウスの方が先に答えへ辿り着き、2人が爆弾解除に成功するきっかけとなった印象的なシーンである。
終盤で失速
前半はとにかく面白い。次々と出されるクイズや無理難題にマクレーンとゼウスが振り回され、観客も一緒になって謎解きを楽しめる。
ニューヨーク全体を使った鬼ごっこのような展開には独特のワクワク感があり、シリーズの新しい方向性として非常に魅力的だった。
ところが、個人的には終盤になるにつれて勢いが落ちていく印象がある。
その理由の一つが、サイモンというキャラクターの正体だ。
物語序盤では、サイモンは『ダイ・ハード』第1作でマクレーンに倒されたハンス・グルーバーの弟として登場する。つまり兄を殺されたことへの復讐劇として物語が進んでいくわけだ。
もちろんハンスはテロリストであり、悪人であることは間違いない。しかしサイモンの視点で見れば、大切な兄を殺されたという個人的な恨みがあり、その構図には単なる善悪では割り切れない面白さがあった。
だからこそ、「兄の復讐」という動機を軸に最後まで進んでほしかった。
しかし物語が進むにつれ、復讐はあくまで陽動だったことが判明する。サイモンの本当の目的は金塊の強奪だった。
警察やマクレーンの注意を自分に向けさせ、その裏で巨額の金塊を奪うという計画だが、それが判明するとキャラクターとしての深みが少し失われてしまったようにも感じる。
結局お前、金かよ。
その結果、ラストは前半のようなゲーム性やミステリー色が薄れ、比較的オーソドックスなアクション映画へと変化していく。もちろん十分面白いのだが、前半で感じたあの先の読めないワクワク感はどうしても弱くなってしまう。
アスピリンでアジトを特定した理由
終盤、マクレーンはサイモンとの会話の中で「アスピリンをくれ」と口にする。
これは頭痛持ちのマクレーンらしい軽口であると同時に、ドイツ生まれの薬であるアスピリンとドイツ人のサイモンを引っかけたブラックジョークでもあった。
ところが勝利を確信していたサイモンは、その場の余裕からマクレーンにアスピリンを渡してしまう。
この何気ない行動が致命的なミスとなった。
渡されたアスピリンは市販薬ではなく、調剤薬局で処方されたものだった。そして薬袋の情報を調べた結果、その薬局がカナダ国境付近に存在することが判明する。
つまりサイモン一味の潜伏先は、その周辺にある可能性が極めて高かったのだ。
さらに大量の金塊を積んだトレーラーで国境を越えるのは現実的ではない。
まだアメリカ国内にいると判断したマクレーンたちは、薬局の情報を手掛かりにアジトの位置を絞り込み、最後の反撃へとつなげていく。
たった一錠のアスピリンが、サイモンの完璧だったはずの計画を崩壊させる決定的な証拠になったというのもちょっと謎解き要素あって面白い。
映画シリーズは難しい
1作目が大ヒットし、2作目も成功すると、3作目では必ず「変化」が求められる。
同じことを繰り返せば「マンネリ」だと言われるし、変えすぎれば「前の方がよかった」とディスられる。シリーズものは客は入るが諸刃の剣なのだ。
ただ個人的にはこの作品でシリーズを終えてもよかったと思う。
この後も4作目、5作目と続いていくが、どんどん魅力が失われていってしまう印象がある。
一方で、本作が残した影響は決して小さくない。
犯人がゲームを仕掛け、主人公たちが理不尽なルールに振り回されながら事件を解決していく。この構図は今では珍しくないが、当時としてはかなり新鮮だった。
パッと思いつくのは『交渉人 真下正義』、Netflixオリジナル映画の『爆弾』なんかもこのスタイルで、犯人がゲームマスターのように主人公を翻弄する作品は数多い。
そう考えると、『ダイ・ハード3』は単なるシリーズ続編ではなく、その後のエンターテインメント作品に大きな影響を与えた一本だったのかもしれない。





