2011年にテレビ東京系「ドラマ24」で放送された福田雄一脚本・監督、山田孝之主演のコメディドラマ『勇者ヨシヒコと魔王の城』。
『ドラゴンクエスト』を強く意識したゲーム的な世界観に、福田雄一作品らしいパロディ、くだらない会話、唐突なギャグを組み合わせた異色の冒険ドラマとなっている。
本作のヒットを受け、2012年に『勇者ヨシヒコと悪霊の鍵』、2016年に『勇者ヨシヒコと導かれし七人』が制作された。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:勇者ヨシヒコと魔王の城
原題:―
公開年:2011年
製作国:日本
上映時間:全12話(各話約41分)
監督:福田雄一
脚本:福田雄一
原作:―
出演:山田孝之、木南晴夏、ムロツヨシ、岡本あずさ、佐藤二朗、宅麻伸
ジャンル:コメディ/ファンタジー/アドベンチャー
あらすじ

疫病に苦しむカボイの村に暮らす、純粋でお人好しな青年・ヨシヒコ(山田孝之)。村人を救う薬草を手に入れるため、「いざないの剣」に選ばれた勇者として旅立つ。同時に、薬草を探しに出たまま行方不明となった父・テルヒコを捜すことも目的だった。
旅の途中で、熱血漢の戦士ダンジョー(宅麻伸)、父の仇を追うムラサキ(木南晴夏)、微妙な呪文ばかりを使う魔法使いメレブ(ムロツヨシ)と出会い、奇妙なパーティーを結成する。やがて仏(佐藤二朗)から、村を苦しめる疫病の真の原因が魔王にあると告げられたヨシヒコたちは、魔王を倒すため新たな旅へ向かう。
低予算を武器にしたズルい作品。
本作を見ていて興味深かったのは、「低予算」という本来なら弱点になるものを、完全に作品の武器にしているところだ。
普通にファンタジーの冒険活劇を実写でやろうとしたら、村や城のセットを作って、モンスターを出して、魔法を見せて、大自然の中でロケをして……まともにやれば大変なことになる。
でも本作は、そこを最初から諦めている。
「低予算なんだから、これでいいじゃん」
その開き直り一つで作品にしてしまったアイデア一発の作品なのだ。安っぽいモンスターも、雑な特殊効果も、簡素なセットも、全部「低予算だから」という笑いに変わる。普通の作品なら欠点になる部分が、『ヨシヒコ』ではむしろ味になっている。
『大洗にも星はふるなり』で再び山田孝之とタッグを組んだ福田雄一監督のコメディも同じで、ギャグがスベってもなんとなく「スベリ笑い」の空気になる。
冒険活劇を100%やらなくてもいいし、ギャグも100%当てなくていい。
そう考えるとかなりズルい作品だなぁと思ってしまう。
俳優陣とコメディアンの差
山形の五重塔では、一段上がるごとに敵が待っているというRPGそのままの展開なのに、ホリが出てきてキムタクのモノマネを始めたりする。
もう戦闘なのかコントなのか分からないが、やっぱり芸人は笑いという意味では強いと感じさせられる。
しかし毎回のゲストによって面白さにはかなり差出てくる。
豪華な俳優が出てくれば必ず面白くなるわけではないのだ。
例えば綾野剛。コメディの人という印象ではないので、個人的にはそこまで笑えなかった。小栗旬も同じで、登場すること自体は豪華なのだが、尺が長いわりにつまんねぇなと思ってしまった。
結局この作品は、知名度よりも福田雄一のコメディとの相性が大きい。
ハマる人が出れば面白いが、ハマらないと「有名俳優が長々とふざけているだけ」に見えてしまう。
後半は東京ロケ
後半に入ると、いよいよ世界観そのものが壊れてきて完全に東京ロケになっている、
新宿、渋谷ときて、まさか調布の「たけちゃんにぼしらーめん」で普通にラーメンを食べている。

日活が近いからか?なぜ「たけちゃん」?
さらにヨシヒコは東京で居酒屋のアルバイトまで始める。ここまで来ると、もう自分が何のドラマを見ていたのか分からなくなってくる。
この辺は人によってはグダグダと捉える人もいるんだうけど、自分は肯定的にみてました。
それまでずっとRPGの世界で冒険してきたキャラクターたちが突然東京で普通に生活する。このギャップはそれまでのネタ振りがあるからこそ成立するのだ。
「RPGのキャラクターが東京で生活したらどうなるのか」
同時に、制作側がめちゃくちゃ節約しているのも分かる。
魔王の城をまともに作ったら大変だから、東京の街や建物で普通にごまかしている。後半になると東京ロケが増えて、おそらく新宿中央公園あたりに見える緑の中で、コスプレした人たちが演技しているような画になってくる。
でも最初に述べたように「低予算」という免罪符があるので、これが成立するのだ。
多分これが成立するのは、前半でちゃんとRPGの世界を作ってきたからだ。最初から東京の公園でコスプレしていたらただ安っぽいだけだが、一度世界観を成立させたあとだからこそ、それを自分たちで壊すことが笑いになる。
さらに魔王の声を『ドラゴンボール』のフリーザで知られる中尾隆聖が担当しているあたりは妙に凝っていて驚かせてくれた。
低予算を言い訳に何もかも雑にしているわけではなく、遊ぶところではちゃんと遊んでいるのが好感持てました。
『勇者ヨシヒコと魔王の城』は、そういう意味では本当にずるい作品だ。でもそのずるさこそが、この作品にしかない魅力なんだと思う。






