2005年7月23日に公開された日本の青春映画『リンダ リンダ リンダ』。
『リアリズムの宿』などの山下敦弘が監督を務め、文化祭直前に急造された女子高生バンドの数日間を描く。
韓国人留学生ソン役をペ・ドゥナ、バンドメンバーを前田亜季、香椎由宇、Base Ball Bearの関根史織が演じる。THE BLUE HEARTSの「リンダ リンダ」などを題材に、派手な事件ではなく、練習や放課後、友人関係といった高校生活の何気ない時間を積み重ねていく。
2005年の公開当初はミニシアターを中心に上映され、その後、日本国外でも支持を広げた。2025年には公開20周年を記念した4K修復版も上映された作品。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:リンダ リンダ リンダ
原題:Linda Linda Linda
公開年:2005年
製作国:日本
上映時間:114分
監督:山下敦弘
脚本:向井康介、宮下和雅子、山下敦弘
原作:なし
出演:ペ・ドゥナ、前田亜季、香椎由宇、関根史織、三村恭代、湯川潮音、山崎優子、甲本雅裕、松山ケンイチ、小林且弥、小出恵介
音楽:ジェームス・イハ
主題歌:THE BLUE HEARTS「終わらない歌」
ジャンル:青春/音楽/ドラマ
あらすじ

文化祭を数日後に控えた高校で、軽音楽部のガールズバンドがギター担当の骨折をきっかけに分裂してしまう。ギターとボーカルが抜ける中、恵、響子、望の3人はステージ出演を諦めず、THE BLUE HEARTSの楽曲を演奏することを決める。
新たなボーカルとして声をかけたのは、偶然目の前を通りかかった韓国人留学生ソン。日本語もまだ十分ではなく、バンド経験もない彼女を加えた4人は、文化祭本番までわずか3日という状況で練習を始める。
最初はまとまらなかった4人だったが、放課後や夜の練習、学校生活の何気ない時間をともに過ごすうち、少しずつバンドとしての一体感を作り上げていく。
バンド映画というより、女子高生4人の「青春の数日間」を覗く映画
文化祭まであと3日。急きょ韓国人留学生のソンをボーカルに迎え、4人でTHE BLUE HEARTSのコピーをやるという話。
設定だけ聞けば王道の青春バンド映画だけど、実際に観るとバンドはあくまで物語を動かすきっかけに過ぎない。
改めて観るとこんなに何もない映画だったっけと思わされる。
前田亜季演じる山田響子には好きな人がいる。でも結局、告白しそうで結局しないまま終わる。
映画的にいいの?と思ったけど高校時代なんて、好きな人がいても何も言えずそのまま卒業することだって普通にある。
恵には元彼との微妙な関係が残っている。放課後にダラダラしたり、カラオケへ行ったり、くだらない話をしたり、扱っている出来事は驚くほど小さい。
そもそもこの「何もなさ」こそが青春なんでしょうね。
この映画は青春をドラマチックに加工するのではなく、その中途半端さまで含めて切り取っている。
ただ4人の女子高生が、文化祭のステージへ間に合わせるため一生懸命走る。
それだけ。
でもその「それだけ」を114分かけて撮るのが、この映画なんだと思う。
友情も音楽も国境を越える
そんな小さな物語の中で、ソンの存在はかなり大きい。
もし日本人の女子高生4人だけだったら、タイプの違う女の子たちが文化祭でバンドをやるという、本当にそれだけの話になっていたかもしれない。
韓国人留学生のソンは最初は日本語も十分ではなく、3人との間にも微妙な距離がある。でも一緒に練習し、何でもない時間を過ごしているうちに、だんだん普通に4人の一人になっていく。
友情は国境を越える。音楽も国境を越える。
別に映画が大声でそんなメッセージを叫ぶわけじゃないが、そんなことも含んでるのかも。
カラオケ店のくだりは山下監督ならではのユニークさでしたね。
ドリンクを頼まなければ利用できないという仕組みにソンが引っかかる。日本人からすれば当たり前になっているけれど、外から見れば「なんで歌う場所なのに飲み物を頼まないといけないのか?」となる。
言われてみれば確かに変だ。
個人的には部室にTHE MUSICのポスターが貼ってあったのも「おっ」となった。そういえばそういう時期だったか。
さらに恵の夢にはラモーンズ風の4人とピエール瀧まで出てくる。ピエール瀧なんて本当に一瞬。
今考えると、ずいぶん贅沢な使い方をしているよね。
こういう本筋にはほとんど関係ない遊びまで含めて、2005年の空気がそのまま残っている映画でもある。
何も起きないし、正直だるい。でも「なんとなく覚えている」不思議な映画
ただ映画として面白いかと聞かれると、かなり難しい。
とにかく淡々としているし、同じ山下監督の作品なら『その男狂棒に突き』の方が好みだ。
物語に大きな波はないし、特に恋愛も成就しないし、巨大なトラブルもない。ソンが入ることで多少物語は膨らむけれど、それでも規模感は最後までめちゃくちゃ小さい。
正直、実際に観ている最中は結構だるかったが、ラストの演奏は4人がようやくステージへたどり着き、「リンダ リンダ」を鳴らす。その瞬間にはちゃんと青春映画らしい気持ちよさがある。
でも猛烈なカタルシスがあるわけでもない。
ところが不思議なのは、こういう映画って後から妙に残ることがある。
自分にとっては『ロスト・イン・トランスレーション』に少し近いかも。
何かありそうで、実際には大きなことは何も起きない。
観終わった直後には「何だったんだろう」と思うのに、何年か経つとなぜか空気だけは覚えている。
『リンダ リンダ リンダ』もまさにそう。
女子高生4人が文化祭前の数日間をダラダラ過ごし、バンドを練習して、好きな人のことを考えて、最後に演奏する。
それだけ。でもいいじゃん。こういう映画があっても。
この映画は強烈な物語を残す映画ではなく、青春のぼんやりした記憶そのものを残す映画なのかもしれない。






