基本情報
原題:Blue Valentine
公開年:2010年(日本公開:2011年)
監督:デレク・シアンフランス
出演:ライアン・ゴズリング、ミシェル・ウィリアムズ
上映時間:112分
ジャンル:ヒューマンドラマ/恋愛映画
あらすじ

ディーン(ライアン・ゴズリング)とシンディ(ミシェル・ウィリアムズ)は、かつて激しく燃え上がった恋人同士。やがて結婚し、娘が生まれるが、やがて歪んだ日常に疲弊し、すれ違いが積み重なっていく。
物語は「幸せだった頃」と「壊れゆく現在」を交互に行き来しながら──二人の愛がどう芽生え、どう壊れていったのかを綴る、極めてリアルで痛ましいラブストーリーだ。
間違いなく傑作。けどトラウマになる。
久々にみた。2回目の視聴です。
最初に観た時はあまりのインパクトに軽くトラウマになりそうなくらいでした。
『ラ・ラ・ランド』を観てライアン・ゴズリングと言えばこの映画が浮かんで2回目の視聴。
「若気の至りで結婚したカップルが別れていく物語」を、甘くない愛の実像とともにリアルに描き出す傑作中の傑作。
簡単に言うと若気の至りで結婚したカップルが別れる話。もう夢も希望もありません。
破局向かうまでの話と2人が結ばれるまでの話が交互に進んでいきます。
それがラストに向かうにつれて破局と結婚の話を交互に行き来させる巧みな構成。
若い時の話は2人は凄くキラキラしています。
明るいと思っている未来に向かって。ところがいずれくるであろう破局に突き進んでいると思うと胸が張り裂けそうになります。
2回目の視聴ですがこの構成の秀逸さには改めて感心させられました。
圧倒的リアル
冒頭の愛犬が死ぬところから物語は始まります。まるでこれからの2人の未来を暗示しているかのように不吉。
「いつか消えてしまう感情を信じられる?」
印象的なミシェルウィリアムズのセリフ。家庭環境から恋愛に対してはあまり前向きではない感じなんでしょうね。
けれど愛するには感情を信じるしかないわけですよ。
夫のディーンと妻のシンディはうまくいっていない。
別にどっちかが浮気したとか決定的な理由があればわかりやすいんだけど妻のシンディの心は完全に離れている。
ディーンはなんとか2人の関係を修復したい。
で、ラブホテルに誘うわけです。
そのラブホテルに向かう車の中でシンディが元彼に会った話をするんです。
信じられる?この女何考えてんだ?
しかもこの2人子供って実はその元彼の子供なんです。ディーンはそれを知ってて結婚したわけです。
もう最悪な女です。デリカシーもクソもありません。
安いラブホテルでロマンティックなムードを演出しようとするディーンはもはや痛々しくて観ていられなかった。

だけどシンディはラブホテルでも夫を拒否るんです。
仕方なく諦めたシンディはやりたくもないけど不貞腐れながらパンツを脱ぐ。
おいおい、そりゃなくないか?
もう最悪。
ここに関してはディーンに対して同情的な意見が多いですよね。
せっかくディーン頑張ってるじゃないか。
「欲しいのは君の体じゃない、君自身だ。」というセリフは染みます。
けどね、生理的に無理と思った相手と一緒にいることも苦痛なのは知っているのでシンディの気持ちもわからなくもない。相手側が努力しようとすればするほどに冷めていく。
特に女性は感情の生き物なのでさらに思うんじやないかな。
ディーンが明るく振る舞おうとしてるいるのが逆に観ている方はつらい。
ここのラブホテルのシーンは圧倒的にリアルです。こわいくらい。
じゃあどうすればよかったのか?
二人のすれ違いは、「人生のベクトルのズレ」にあると感じます。
- シンディ:向上心が強く、努力によって夢を追い続けた。
- ディーン:ペンキ屋で才能を活かせてない。家庭と娘を最優先に愛情を注いだ。
ディーンは家族が大事だし愛情は常に妻と子供に注がれている。はたから見ればこの上なくいい夫ではある。それ故にどうしたらいいかわからない。
シンディがディーンに直して欲しいところを指摘すればディーンはそれに対して直す努力はするだろう。
だけどそう言うことじゃないんですよね。
もうすでにシンディの中では心が冷め切っているのでディーンが何をしても無理みたいです。
シンディも少しはそれに応じようとしようとしたがやっぱり無理!って感じ。
そもそもこの2人は合ってないな思うのが「笑いのツボ」。
シンディのジョークがつまらないというシーンやシンディの大学の講師の名前に一人笑い出すディーン。
お互いが「おかしい?」と言い合う感じからしてそもそも感性が合ってないということがわかる。
お婆さんの「愛した相手が本当に自分にふさわしいか考えなければならない」というセリフを思い出しました。
相手をよく知る期間って大事なんですよね。
映画史に残るラスト

最終的にディーンとシンディは大げんか。原因はシンディがラブホテルから勝手に帰ったから。
そりゃディーン怒るわ。
ここまで観てるとやっぱこの妻が悪いと思うんだよな。
最終的にはシンディはディーンに対して「女々しい」って言い放つんです。これにブチ切れ。
こりゃだめだ。最悪。
男はプライドの生き物。それ言われたら怒るわな。
だけどディーンは怒りがおさまらず止めに入った男を殴ってしまう。
そりゃだめだ。どんなに怒っても暴力振るったら悪くなるんだよ。
家に帰り修羅場の別れ話。
「俺は家族のために戦ってるだけだ」泣きながらそういうディーン。
「もう無理なの」の一点張りのシンディ。
二人とも迫真の演技です。
結果、ディーンは家を出ていくんです。そしてお父さんを泣きながら追いかける娘。
もうカオスです。
これ以上残酷なエンディングがあるだろうか?
恋だけでは結婚生活は送れないという壮大で普遍的なメッセージが観客の胸に深く刻まれるラストです。
役に乗り移る俳優
プロットも演技も素晴らしいですが俳優たちのプロ根性が凄いです。本作の凄さはその「憑依」にある。
ライアン・ゴズリングは髪の毛を抜いて自らハゲに。
カツラじゃないんです。その覚悟にスタッフは息を飲んだみたいです。
ミシェル・ウィリアムズも太ってだらしない中年の身体になってましたね。
特にゴズリングの「無骨な愛情」は言葉以上に迫力があり、ウィリアムズの「断絶の表情」は言語化できない深みを感じさせます。いいようにみせる日本の俳優とは一線を画す、「死力を尽くした演技」に息を呑むしかありません。やっぱり作品に対して意気込みが違う感じがします。
この映画、気分が落ち込んでいるときに観てはいけません。
だけど気分がいい時に観ても暗い気持ちになります。
観るタイミングが難しい映画です。
だけど超ド名作なのは間違いないです。
困ったね。
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