2012年に公開された映画『おおかみこどもの雨と雪』。
本作は『サマーウォーズ』に続いて大ヒットした作品でもある。
脚本を奥寺佐渡子と細田守監督が共同で担当しており、母と子の普遍的な絆や関わりを描いた作品。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:おおかみこどもの雨と雪
原題:おおかみこどもの雨と雪
公開年:2012年
製作国:日本
上映時間:117分
監督:細田守
脚本:奥寺佐渡子・細田守
原作:細田守
出演:宮﨑あおい、大沢たかお、黒木華、西井幸人、大野百花、加部亜門、菅原文太 ほか
ジャンル:アニメ・ファンタジー・ドラマ
あらすじ

人間と狼、二つの血を引く「雨」と「雪」。突然夫を亡くした母・花は、二人を女手一つで育てながら、人間として生きるのか、それとも狼として生きるのかという選択を子どもたちに委ねていく。
気持ち悪いと感じる人へ
花がまだ学生という立場なのに「避妊をしない描写が不自然」「無責任で気持ち悪い」といった批判や疑問の声があがっているらしい。
確かに生まれてくる子供は「狼とのハーフ」について悩むだろうし、「花は物事を後先考えてない」という見方もできる。
できるのだが、皆さん、ファンタジーですよ。
それを言っちゃあお終ぇよ。
話展開しねぇじゃねぇか。
本作、実は「狼」というのは「子供の個性」へのメタファーと考えるとすんなりと入っていくと思われます。
奥寺さんの脚本が秀逸
本作まではまだ奥寺さんの脚本がしっかり生きている印象だ。
テーマも分かりやすいし、物語として「ん?」と思うような引っ掛かりがほとんどないのがすごい。避妊の件は置いといて。
これ以降の細田脚本は、「なんでそうなるの?」という展開が多くなり、自分としても安心して観られるのは本作くらいまでな印象。
次作の『バケモノの子』も悪くはないんだけど、後半の唐突な展開に戸惑う人も多かったな。
ちなみに物語の最初に花たちが暮らしている街は、東京・国立市がモデルになっている。
実は自分も以前、国立で仕事をしていたことがあって映画を観ながら、「白十字だ」「この街並み懐かしいな」と思いながら鑑賞してました。
国立は都心から少し離れているが、とても雰囲気のいい街でこの作品の空気感にもよく合っている。
けどさすがに狼の子を育てるには都心過ぎるのか。
夫を亡くし、一人で子供を育てる母親の話。そして生まれ持った血に向き合ってどう生きていくかを問う子供の話。
本作のテーマは大きく分けて2つかなと思いました。
子どもには、その子に合った人生がある。
親は子どもの人生を決める存在ではない。
子ども自身が、自分で生き方を選べるように選択肢を与えてあげる存在なんだということ。
花は最初から子供たちに「人間として生きなさい」とは言わないし、「狼として生きなさい」とも言わない。
それは二人が決める人生だからだ。
本作は一応、ファンタジーであるものの、テーマ自体は普遍的である。
もちろん花が田舎へ引っ越した理由は、自分が育てやすい環境を求めたというのもあるが、子どもたちに「生き方の選択肢」を与えたかったからだと思う。
結果として雪は人間社会を選び、雨は自然へ帰ることになる。
同じ母親に育てられても、同じように育てても、同じ人生にはならない。
人にはその人に合った生き方があって、それを最後まで尊重した母親の物語だった。
「狼」は「個性」というメタファー
花が背負った苦労は想像以上だった。
夫を亡くし、女手一つで二人の子どもを育てる。
しかもその子どもたちは狼と人間のハーフという思い切った設定。
感情が高ぶれば狼になり、病院にも簡単には連れて行けないし、近所からは動物を飼っていると誤解される。
もちろん、自分は狼の子どもを育てたことなんてないから本当の意味で共感はできないが、母親としての苦悩はものすごく伝わってきた。
雨がほかの動物に怪我をさせられ、花に「狼はなんで嫌われるの?」と言うセリフがあるが、生まれ持った血に抗うことはできない。
雨は最終的には自分の意志で森へ還り、狼として生きると決めたとき、花は無理に止めずにその生き方を認めてあげる。
人間と狼のどちらであっても、我が子が自分で決めた道を信じて送り出したのだ。
山へ消える雨の遠吠えを聞き、「しっかり生きろ」と心で願いながら、彼の自立を受け入れた。
親は優しく肯定してあげ、子供がちょっとだけ前に進めるように後押ししてあげることが大事なんだ。
だから本作、実は普遍的な親が子供へそそぐ愛情の話なんだと感じました。だからこそ狼という突拍子もないシチュエーションでも多くの人が感動できたんだろう。
高木正勝の音楽が素晴らしい
スタジオジブリ作品があそこまで愛される理由は間違いなく、久石譲による音楽の力も大きいだろう。
本作の高木正勝の音楽もだいぶ素晴らしい。
美しいピアノの旋律を中心に作品の自然豊かな世界観を表現を見事に表現することに成功している。
特に雪が生まれるまでをセリフをほとんど使わず、音楽だけで見せていくシーン。
お腹が大きくなっていく花。つわりで苦しむ花。うどんを作ってあげる父親。
音楽だけで家族ができていく幸せを表現していて、子どもがいる親なら胸にくる場面だと思う。
どこか『クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲』の、ひろしの回想シーンを思い出すエモーショナルなシーンだ。
本作のテーマはとてもストレートで、だからこそ誰にでも伝わるものだ。
「自分はどう生きるのか。」
「親は子どもに何を残せるのか。」
その答えを、難しく理屈で語るのではなく、まっすぐ描いた作品だった。






