2018年に公開された映画『スマホを落としただけなのに』。
志駕晃の同名小説を原作に、中田秀夫監督が手がけたSNS時代のスリラー。主演は北川景子、共演に千葉雄大、成田凌、原田泰造ら。興行収入19.6億円を記録し、シリーズ化・韓国リメイクへと展開したヒット作である。
本記事ではネタバレ全開で感想考察レビューしていきます。
基本情報
作品名:スマホを落としただけなのに
公開年:2018年
監督:中田秀夫
脚本:大石哲也
音楽:大間々昂、兼松衆
ジャンル:サスペンス/ミステリー
上映時間:116分
製作国:日本
主なキャスト:北川景子、千葉雄大、バカリズム、要潤、高橋メアリージュン、酒井健太、原田泰造、成田凌
あらすじ

ある日、タクシーでスマートフォンを拾った男。そこにかかってきた着信の主は、美しく聡明な女性・稲葉麻美だった。
スマホを落とした「だけ」の出来事が、二人の人生を狂わせる。
その頃、神奈川県の山中では若い女性の白骨遺体が発見される。捜査を進める刑事・毒島は、連続殺人事件の可能性を疑う。
スマホの中に残された個人情報。SNS、位置情報、パスワード。
見えないはずの「データ」が、人間の裏側を暴き、やがて狂気へと繋がっていく。
『リング』『事故物件 恐い間取り』『“それ”がいる森』などの中田秀夫監督作品。
もう中田監督はあのおどろおどろしい『リング』のようなゾクゾクくるような作品は撮らないようだ。正直言って近年の中田監督作品はお世辞にも面白いと思える作品がなく、B級テイストばかりだ。
特に『事故物件 恐い間取り』『“それ”がいる森』の二作品は酷い出来栄えだ。
本作も面白いかどうかと言われると全然面白くなかった。
厳密に言えば原作の、スマホを落としたことでそれを悪用する人間がいてトラブルに巻き込まて行くという話自体は面白いアイディアだとは思う。
だけど、なぜ僕はこの映画が刺さらなかったのかを振り返ってみようと思う。
緊張感が0
本作は、ホラーではないがどうにも緊張感がない。
それは役者の演出に責任があるように思える。特に田中圭は『おっさんずラブ』の演技そのままじゃねぇか。
というか彼はどの役も似たり寄ったりでキムタクのような金太郎飴俳優の部類である。
さらに刑事役に原田泰造など、いつしか中田監督作品には芸人が起用されることがめちゃ増えた。
別に芸人さんが演技をすることについては否定はしていない。
だが、どうにも緊張感が変わってしまうのだ。
原田泰造が刑事の役をやってる時点でコントの設定に見えて仕方がない。これはシリアスな作品ではネガティブにはたらくので実にもったいない気がする。
バカリズムしかり、本作はちょいちょい演出がコミカル。別に作品自体が違うので『リング』のような雰囲気をいまも観たいとは思わないが、もっと物語に没入させる方法はいくらでもあったのではないか。これでは意識が散乱としてうまく話にはいっていけない。
スペックの高い犯人
本作、物語は三つの軸で進行する。
① 富田と麻美の恋愛とスマホトラブル
② 黒髪女性連続殺人事件
③ ITセキュリティに詳しいエンジニア・浦野の存在
麻美はトラブル解決のため、ITエンジニアの浦野に相談する。浦野は冷静で知的、頼りがいのある人物として描かれる。だが実際は彼が富田のスマホのデータを盗んだ猟奇殺人者でしたというオチ。
ストーカーっぽいバカリズム(実はフェイク)が犯人と思わせておいてのこっちか。
まぁ、協力者が一番怪しいというお決まり過ぎる流れでそれはいいんだけど、
この浦野はめちゃめちゃスペックが高くてセキュリティパスワードを簡単に解いてみせる。(富田はセキュリティコードを自分の誕生日に設定してるのもアホだけど)
彼は母親から虐待なんかがなかったらその能力を活かして警察になっていたかもね。
原田泰造とコンビを組む新人刑事もまさに浦野と同じようなスペックの高さで捜査を進めていく。のちに彼も過去に闇があるようで、闇落ちしたのが浦野で、真っ当に生きてるのが刑事の新人君みたいな対比はよかったです。
麻美の過去パートはいるのか
拉致された北川景子演じる麻美は、実は本物の麻美ではなかった。
彼女の正体は「ナミエ」という別の女性であり、整形手術によって稲葉麻美になりすましていたのだ。本物の麻美は既に死亡しており、ナミエは彼女の人生を奪う形で生きていた。
ってこのくだりいる?
スマホを落としたことでのハッキングサスペンス、連続殺人スリラーまではわかるんだけど、
「なりすましミステリー」まで入ってしまうとスマホサスペンスがブレてしまう気がする。
あまり重層的に絡み合う構造にはなっておらずなんでこんなことになったのか不思議でした。
SNS時代の個人情報社会への警鐘を、娯楽サスペンスに落とし込んだ作品ではあるが、もっと「SNS社会では、スマホ一つで人生が崩壊する」などシンプルなメッセージ性で十分よかったのに。
評価・受賞歴
『スマホを落としただけなのに』は、興行収入19.6億円を記録したヒット作。
SNS社会の恐怖をテーマにした“身近すぎるサスペンス”として話題を呼んだ。
一方で評価は賛否が分かれる。
・現代的テーマがリアルで怖い
・成田凌演じる浦野の不気味さが秀逸
・テンポが良くエンタメ性が高い
という肯定的意見がある反面、
・展開がご都合主義
・原作との違いが大きい
・サスペンスとしての深みが弱い
という声も見られる。
つまり本作は、
社会派スリラーとしての問題提起性と、大衆娯楽性のバランスが評価の分岐点になっている作品である。
受賞歴
・第42回日本アカデミー賞 新人俳優賞(成田凌)
※原作小説は「このミステリーがすごい!」大賞(隠し玉)選出作品。








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