2019年に放送されたTBS日曜劇場『グランメゾン東京』のその後を描く劇場版『グランメゾン・パリ』。
木村拓哉演じる天才シェフ・尾花夏樹と鈴木京香演じる早見倫子が、舞台を本場フランス・パリに移して三つ星を目指す――。
ある意味、予想通りの展開。しかし「分かっていても熱くなる」、それがこの映画の最大の魅力です。
基本情報
タイトル:グランメゾン・パリ
公開日:2024年12月30日
上映時間:117分
製作国:日本
配給:東宝、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
監督:塚原あゆ子(ドラマ版と同じく)
脚本:黒岩勉
料理監修:小林圭(アジア人初のフランス三つ星シェフ) 。
あらすじ
『グランメゾン東京』で三つ星を獲得した後、尾花夏樹(木村拓哉)と早見倫子(鈴木京香)はフランス・パリに新店舗「グランメゾン・パリ」を開業します。本場フランスでの挑戦は、食材調達の困難や文化の壁など多くの試練に直面します。ある日、ガラディナーでの失敗をきっかけに、尾花はかつての師匠と「次のミシュランで三つ星を獲れなければ、店を辞める」という約束を交わすことになります 。
ネタバレ感想

テレビドラマ「グランメゾン東京」、そしてスペシャル版を経ての映画版。
「なぜパリなのか?」、「なぜ窪田がいるのか?」を無視すればスペシャル版を観てなくても問題ない。
前半と後半でガラリと変わる温度差
最初に上映時間を見るとほぼ2時間。
ドラマの1クール(約10時間)で丁寧に積み重ねたストーリーを、映画という限られた尺でどうまとめるのか。
1クールかけて三つ星まで丁寧に描いていたのにパリ編はたったの2時間。
そしてやっぱり結果的にはもう30分くらい欲しかった。よく言えば無駄がない。
だけどドラマ版はその無駄とも思えるシーンがキャラクターたちの人間味を膨らませていた。
この映画に限らずだけどドラマから映画版になると新キャラクター達の描写は浅く、極端に薄っぺらくなり、感情移入するにはやや時間不足感が否めない。
この作品、前半と後半で大きく作品のトーンが変わります。

前半は観ていてしんどくなるほどピリピリしてる。三つ星に取り憑かれた昔の尾花に戻っている。え?なにこのキャラ変?あと倫子に対しての上からな発言とか凄い嫌。ヒヤヒヤする。
尾花は自分1人の力の限界を知り、仲間が実は自分を助けてくれた事を知り、仲間に頭を下げてみんなの協力を得ようとする後半戦は一気に引き込まれた。
やっぱりチームで何かを成し遂げるって王道の流れなんだけどジャンプ的で日本人はみんな大好き。
その為に前半の尾花はあんな「嫌なやつ」だったのか。布石としては十分。あからさまだけど。
そう、大どんでん返しとか期待しちゃいけません。そう言うのではないのです。既定路線です。王道のドラマは頭を空っぽにして観るのです。
けどこれ冷静に考えると展開が「二つ星の料理人」に似てない?絶対に参考にしてるよね?
暴力・放火・チーズと、やや強引な映画的装飾
映画ならではの演出として、韓国人パティシエの借金トラブルによる放火事件が盛り込まれている。
このあたりはちょっとやりすぎ感も否めない。
結果、あの韓国人パティシエの借金による放火に同情&迷惑かけたコンテチーズ買い占めのおかげで信頼した市場の人たちから最高の食材を仕入れさせてくれる事になったわけだ。
暴力&爆破は映画だから無理に入れたのかな?爆破シーンは果たしているのかどうがは不明。
コース料理とサービスの描写も秀逸
料理監修は、フランスで三つ星を獲得した小林圭シェフ。
肝心のコース料理だけどいくつか味が想像つくものがあったけど素直に独創性豊かでした。特にメインの数種類の肉を閉じこめたパイ包みは視覚的にもインパクトがあり食べてみたいと思った。
藁とか、鱗焼きって日本の飲食店ではいまやどこもやってて珍しくないんだけど、本当に想像を超える料理になってるのかな?コース値段はいくらくらいなんだろう?気になる。
一般の日本人はみんながみんなフレンチに精通してるわけじゃないからリンダの解説が料理をわかりやすくしていた。今回いい解説者でしたね。
サービスは料理を運ぶタイミングも計算してたり、料理チームだけでなく「サービスの重要性」もちゃんと描いてたのが良かったです。
レストランはシェフたちだけのものじゃない。
僕はかねてからレストランはサービスの重要性を説いてます。
だっていくら美味しくてもサービスが台無しにするパターンも大いにあり得るし。
レストランは厨房だけでは成立しないというメッセージがしっかり伝わってくる。
これは飲食業に関心のある人には刺さる部分だろう。
締めのスピーチ、そしてフランス語
最後は三つ星を獲得することになるが、まぁそこはドラマの構成上約束されたようなもの。にしても終わりは結構あっさりとしてます。
スピーチは倫子さんの時の方が良かった。もうちょい余韻は欲しかったかな。
あと劇中思った以上に役者たちはフランス語話しててめちゃめちゃ努力したのが伝わってきました。
まとめ|王道だからこそ“沁みる”、大人の青春ドラマ
『グランメゾン・パリ』は、大きなどんでん返しや斬新なプロットで魅せる作品ではない。
だが、チームで困難に立ち向かい、やがて夢を叶える――という王道展開を丁寧に描いた、大人の青春ドラマだ。
過剰な演出もあるが、役者の熱演、美しい料理、音楽の力がそれを包み込んでいる。
『グランメゾン東京』ファンなら観て損はない。
そして、観終わった後にきっとこう思うだろう――
「やっぱり、チームっていいな」と。
「これを映画にする必要あるの?」というレビューも見えるが、劇中の音楽の重要性を話しておかなければならない。
壮大なオーケストラによる音楽によって物語を盛り上げ、特に最後のコースのシーンは胸をうたれる。
「映画にする必要あるか?」と言われたらまぁこの音楽でしょうね。
ちなみに山下達郎のエンディングではないのはなぜ?
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