【映画】トレインスポッティング(1996)なぜ今も語られるのか?90年代カルチャーの衝撃と喪失感【考察】

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トレインスポッティングの若者4人がスコットランドの丘を背景に並び、酒瓶や缶を手に笑みを浮かべる印象的なシーン(水彩画タッチ) ヨーロッパ・その他の映画

1996年公開。ダニー・ボイル監督の代表作『トレインスポッティング』。

公開から約30年。いま改めて観返してみると、単なるドラッグ映画ではなく、「90年代という時代そのもの」を真空パックした作品だったと痛感する。

本記事では改めて『トレインスポッティング』を考察する記事である。




基本情報

作品名:トレインスポッティング

原題:Trainspotting

公開年:1996年

監督:ダニー・ボイル

脚本:ジョン・ホッジ

原作:アーヴィン・ウェルシュ

音楽:ブライアン・イーノ ほか

ジャンル:ドラマ/クライム/青春

上映時間:94分

製作国:イギリス

主なキャスト:ユアン・マクレガー/ロバート・カーライル/ジョニー・リー・ミラー/ユエン・ブレムナー/ケヴィン・マクキッド


トレインスポッティングの若者4人がスコットランドの丘を背景に並び、酒瓶や缶を手に笑みを浮かべる印象的なシーン(水彩画タッチ)

スコットランド・エディンバラ。

主人公レントンはヘロイン中毒の若者だ。友人たちも同じくドラッグに溺れ、退廃的で刹那的な日常を繰り返している。

「人生を選べ。」

そんなモノローグとは裏腹に、彼らは“選ばない人生”を選び続ける。

友情、裏切り、恋愛、犯罪、そして死。

何度も更生を誓いながらも、現実の重さに押しつぶされる若者たち。

だがレントンは、ある決断を下す。




破滅的なのに爽快

タイトルの原題『トレインスポッティング』は「鉄道オタク」を意味し、当時のスコットランドの薬物依存者がよく鉄道の廃車両の中でドラッグを乱用していたことに由来する。

ヘロイン中毒の若者レントンと、その仲間たちの破滅的な日常を描く作品で、友情、裏切り、恋愛、犯罪、死。となかなか救いはない。未来もない。だが不思議なことに、観ているこちらはどこか爽快感を覚えてしまうのが本作の魅力ではないだろうか。

本作は「破滅」を描いているはずなのに、テンポ、カット割はやたらと軽快で、編集は鋭く、音楽は爆発的にエネルギーを放っている。

イギー・ポップの「ラスト・フォー・ライフ」、アンダーワールドの「ボーン・スリッピー」などパンクとテクノが交錯するサウンドトラックは秀逸で破滅をスタイリッシュに変換している。

つまり本作は、映像センスと音楽がバチっとハマってケミカルを起こした奇跡的な作品であり、本作はこの当時のすべてのカルチャーに影響を与えたように思う。




ダニー・ボイルとユアン・マクレガーの確執

原作はアーヴィン・ウェルシュの小説。本作品、実は1990年代に原作から舞台になって、舞台から映画化されている。

最初に舞台化された際には、後に映画版で「スパッド」を演じたユエン・ブレムナーが「レントン」を演じていた。

その後、ユアン・マクレガーが主役に抜擢され本作を機に大ブレイクすることになる。ユエン・ブレムナーは当時複雑だっただろうな。このキャスティングが、本作をカルトから世界的ヒットへ押し上げた。

当時まだ無名だったユアン・マクレガーは、本作で一気にブレイク。ちなみに『シャロウ・グレイブ』『トレインスポッティング』『普通じゃない』と3作連続でタッグを組んできたダニー・ボイルとユアン・マクレガーは、2000年の映画『ザ・ビーチ』でも一緒に仕事をする予定だったが、スタジオ側の意向もあり、ダニー・ボイル監督は主演にレオナルド・ディカプリオを起用し、ユアンを降板さた。

この時、ユアンは降板の伝え方に不満を持ち、彼らの友情と仕事上の関係は10年ほど不仲状態に。

ユアンは「裏切られた」と感じ、ダニー・ボイルは「対応を誤った」と後に認めている。

2009年頃、ダニー・ボイルは自身のしたことを恥じており、ユアンに謝罪し和解。2017年には本作の続編『T2 トレインスポッティング』で再タッグを組み、大きな話題となった。




カルチャーの頂点

ストーリーは至ってシンプル。主にヘロイン中毒の若者たちのハチャメチャな日常を描いており、最終的には主人公のレントンが仲間を裏切って盗んだ大金を持ち逃げして物語が終わる。ボーンスリッピーが流れるレントンの微笑みの先に待ってるのは果たして幸福か否か。

まぁ、それは続編の『T2 トレインスポッティング』で描かれているが、本作を観た当時の興奮と同時にいま感じるは別の感情だ。

こんな新しい表現が、この先生まれるのだろうか?という問いである。

90年代はCD全盛期。音楽は共有され、カルチャーは爆発的に拡散した。映画もまた、単なる物語ではなく「時代の衝動」をそのままパッケージする力を持っていた。本作の編集テンポ、色彩設計、音楽の使い方は、まさに新しい何かを感じさせた。

この映画に限らず90年代はとにかくエネルギッシュに満ちており、ハリウッド映画なんかも大ヒットを記録しまくっていた時代だ。

ところがいまの映画はどうだろう。

もちろん完成度は高い。CGなんかも格段に進化している。

だが「突き抜けた衝撃」に出会う回数は減った気がする。配信の普及で作品数は増えたが、音楽も映像も細分化され、巨大なムーブメントは生まれにくくなった。

『トレインスポッティング』は、物語自体はシンプルだ。若者が堕ちていくだけの話。だが映像と音楽が化学反応を起こし、「退廃」を「革命」に変えてしまった。

その意味で本作は、単なるドラッグ映画ではなくカルチャー映画の側面もある。

正直言って続編の『T2 トレインスポッティング』も本作をなぞるような作品であり、大きく新しい要素はなかったように思える。なぜならあの90年代の空気は、もう戻らないからだ。

日常生活で「あの頃が良かった」とは思わないが映画や音楽に関しては間違いなくあの頃が良かったと思ってしまう。

「もう二度とあの衝動には出会えないかもしれない」という喪失感の方が大きくて少し複雑な気持ちにもなる。

映画史的にも評価は高い。Rotten Tomatoesでは高い支持率を誇り、英国アカデミー賞脚色賞を受賞。アカデミー賞にもノミネートされた。しかし数値以上に重要なのは、カルチャーに与えた影響だろう。

ファッション、音楽、広告、編集スタイル。

あらゆる領域に影響を及ぼした。

改めて思う。

『トレインスポッティング』は間違いなく名作だが、それ以上に、「90年代という奇跡的な時代の産物」だったのではないか。

いまの若者が観たらどう感じるだろう。退廃か、ダサさか、それとも再び革命か。

30年経っても色褪せないのは、作品そのものの力か、それともあの時代への郷愁か。

その問いこそが、本作をいま語る意味なのだと思う。




評価・受賞歴

・Rotten Tomatoes 批評家支持率 約90%

・Metacritic 加重平均 80点台前半

・英国アカデミー賞 脚色賞受賞

・アカデミー賞 脚色賞ノミネート

公開当時は賛否両論を巻き起こしたが、現在では90年代を代表する英国映画の一本とされている。

サウンドトラック、ビジュアル、編集テンポは後続作品に多大な影響を与えた。

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