1985年公開の伊丹十三監督作品『タンポポ』。ラーメン映画でありながらも、かなりぶっ飛んだ作品です。
いま観ても確実に楽しめる名作をネタバレ感想・考察していきます。
基本情報
- 作品名:タンポポ
- 公開年:1985年
- 監督:伊丹十三
- 脚本:伊丹十三
- 音楽:村井邦彦
- ジャンル:コメディ/ドラマ
- 上映時間:115分
- 製作国:日本
- 主なキャスト:山崎努、宮本信子、役所広司、渡辺謙 ほか
あらすじ

さびれたラーメン屋を営む女店主・タンポポは、ある日、流れ者のトラック運転手ゴローと出会う。
彼の助言をきっかけに、タンポポは「本当にうまいラーメン」を作るため、奇妙で個性的な人々の力を借りながら修業を始める。
一方で本作は、ラーメン作りの物語と並行して、「食」と「欲望」をテーマにした数々の短編エピソードが挿入されるという、非常に実験的な構成をとっている。
物語は一直線には進まず、むしろ寄り道を重ねながら、人間の本質を浮かび上がらせていく。
興行成績は大ゴケ
私は伊丹十三監督が大好きだ。
作品は常にオリジナルでユーモラスでそして、前衛的。
映画でその世界の裏側を暴き過ぎて暴力団に殺害された説もあるくらいストックに作品と向き合った監督さん。
それだけでなく、俳優としてもあの棒読み具合が逆にいい味を出している。「北の国から」とかね。
今作はそんな伊丹十三監督作品としては二作目にあたる。
一作目の「お葬式」が大ヒットしたが、実はこの二作目の「タンポポ」は大ゴケ。
こんなに面白いのになんでよ?
個人的には伊丹十三監督作品の中でも一位、二位を争うくらい好きな作品なのに。
だが海外では何故かヒットし、この映画に影響されて海外の方が世田谷区の芦花公園に「アイバンラーメン」としてお店を出したこともあったな。
今は店はなくなったけど元気かな?アイバンさん。
脱線エピソードがとにかく秀逸
ラーメン屋を営む未亡人の宮本信子の店を「町一番のラーメン屋にする」ために山崎努や渡辺謙、安岡力也などが奮闘するというのが話の本筋。
非常にわかりやすいプロットなんだけど随所随所に、ラーメンとは全く関係ないショートムービーがぶち込まれているのが非常に斬新だ。
これがクスッと笑えるブラックユーモアばかりでかなり面白い。
例えば「スパゲッティは音を立ててはいけません。海外ではマナー違反です。」と得意げに生徒に向かって話すオバさんマナー講師。
だけど隣の外国人が思いっきり音を立ててスパゲッティをすすっている。
生徒達も影響を受けて次第に音を立ててスパゲッティをすすり始める。
まぁ、日本人はそっちの方が楽だしね。
一人不機嫌な講師。
だけど試しに音を立てて食べてみる。
そして次にさらに大きな音を立ててスパゲッティをすする。「もうマナーとかクソ喰らえ」と開き直るかの様に。
そこにいる全員がまるで自我を解放するかの如くスパゲッティを音を立てて食べるようになる…というショートムービー。
物凄いシュールだ。
だけどもうとにかくおかしい。
「食に対してのマナー」だとか「勝手な決めつけ」がいかにバカげているかという伊丹十三なりの風刺がよく効いている。
他にもスーパーで食材を手で潰す婆さんと店員が追いかけっこの話だったり、歯が痛い男の話だったりと次々と本筋と関係ないエピソードの連続。
中には何が伝えたかったんだろう?とよくわからない話もあるが何故か目が離せない。
まるで不二子A不二雄のブラックユーモア短編集を読んでるみたいだ。
「食」は生の根源
この脱線エピソードのメインとも言える役所広司。
彼のエピソードはとにかくエロい。
ちなみに役所広司と一緒に出てくる娼婦役の黒田福美もエロい。
黒田福美の胸にレモンやら生クリームやら塗りたくってペロペロしたり、生卵を割らずに口移しをし合ったりとにかくエロエロ。
まるでポルノ映画みたい。
しまいには海女さんから牡蠣を貰ってそのまま熱い接吻を交わすシーンなんてもはや訳わからん。
訳わからないが何故か観てしまう。
だが単にエロショートムービーというわけではなくここは「食=性」というテーマにつながっている。
ラストのエンドロールで母乳を飲む赤子の長回しなんかは「食=生」を表しており、何かしら「食」にまつわるエピソードになっている。
繰り返すがこれはラーメン映画だ。
だけどこの映画の半分以上がこう言った食のエピソードで占められてる。
めちゃめちゃ自由で斬新な作りだ。
ちょっと前衛的すぎて当時の日本では受け入れられなかったのかも。
最後には無事に店は繁盛し山崎努がトラックに乗って去っていくシーンなんてカッコよすぎる。
帽子を被った山崎努はまるで日本のインディジョーンズと言ってもいい。
今回で2回目の鑑賞だけどやっぱり面白い。
そして決まって観た後はお腹が空く。
さて、何を食べようかな。
受賞歴
- 日本アカデミー賞 優秀作品賞
- 日本アカデミー賞 優秀監督賞(伊丹十三)
- 日本アカデミー賞 優秀脚本賞
- 日本アカデミー賞 優秀主演女優賞(宮本信子)
- 海外映画祭・批評家からも高い評価を受け、日本映画を世界に知らしめた一本






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