Netflixオリジナルドラマ『アンビリーバブル たった一つの真実(原題:Unbelievable)』は、実際の事件を基にした社会派クライムドラマで、2019年に世界的な高評価を得た傑作です。
性暴力被害者の「真実」を誰も信じなかった——その悲劇と再生を描いた作品で、全8話のミニシリーズ。
本稿ではネタバレ全開で感想を述べていきます。
基本情報
- タイトル:アンビリーバブル たった一つの真実(Unbelievable)
- 配信開始:2019年9月13日(Netflixオリジナル)
- 製作国:アメリカ
- ジャンル:社会派ドラマ/クライム/実話ベース
- 話数:全8話
- 監督:スザンナ・グラント、リサ・チョロデンコ ほか
- 原作:ProPublica(プロパブリカ)と The Marshall Project に掲載されたノンフィクション記事
 ※記事タイトル「An Unbelievable Story of Rape」
- 脚本・製作総指揮:スザンナ・グラント、アイレット・ウォルトマン、マイケル・チェイボン
- 制作会社:Netflix
👥 主なキャスト
ダニエル・マクドナルド(Danielle Macdonald) … アンバー(支援者)
ケイトリン・ディーヴァー(Kaitlyn Dever) … マリー・アドラー(被害者の少女)
トニ・コレット(Toni Collette) … グレイス・ラスムセン刑事
メリット・ウェヴァー(Merritt Wever) … カレン・デュヴァル刑事
ブレイク・エイボリー(Blake Ellis) … クリス(マリーの恋人)
あらすじ

ワシントン州。
18歳の少女マリー・アドラーは、自宅に侵入した男にレイプされたと警察に通報する。
しかし、警察は彼女の証言の矛盾点を責め立て、最終的に「虚偽通報」と判断。
マリーは「嘘をついた被害者」として逮捕され、世間からも孤立してしまう。
数年後、別の州で同様の手口の連続レイプ事件が発生。
女性刑事グレイスとカレンが捜査を進めるうち、事件の共通点が浮かび上がる。
そして、マリーの事件こそが「最初の被害者」だったことが明らかになっていく――。
物語の構成
この作品はザックリと2つの物語が並行して進んでいきます。
・被害者・マリーの孤独な戦い(ワシントン州)
・女性刑事たちの地道な捜査(コロラド州)
最初からこの二つの時間軸が丁寧に描かれ、視聴者は「過去に信じてもらえなかった事件」と「今まさに信じようとする捜査」を同時に追いかける構成になっている。
物語は非常に淡々としており、暴力の痕と沈黙を映し出す。
泣き叫ぶ演技や大げさな音楽はないのに、それでも胸が締めつけられるのは、描かれる現実の重みが嘘ではないからだ。
そう、本作は実話を基に作られた作品なのです。
言うなれば激し目な展開を想像すると割と退屈ではあります。
テーマとメッセージ
「信じること」
この作品の核心は、レイプ事件ではなく「信頼」。
誰かの言葉を疑う社会。
立場や性別によって、発言の重みが変わってしまう現実。
タイトルの「Unbelievable(信じがたい)」は、事件そのものよりも、人々が他人の痛みを信じられない社会を指している。
「正義とは何か」
正義は犯人を捕まえることだけではない。被害者の声に耳を傾けることでもある。
このドラマはその単純な事実を、静かに、しかし強烈に突きつけてくる。
現実を映すカメラワーク
リサ・チョロデンコ監督(『The Kids Are All Right』など)は、実際の被害者に敬意を払うため、暴力シーンを徹底的に排除したようです。
セカンドレイプにもなりかねないしね。
その代わり、視線の揺れや手の震え、沈黙の時間で感情を描いている。
観る人の想像力に訴える構成だからこそ、余計に痛みがリアルに伝わってくる。
とは言えドラマ化するに当たっては実際の被害者たちがいるので少々地味な感じなってしまうのは否めない。
なぜ嘘をついたのか?
女の子がレイプされた。
ところがそれは「嘘だった」と供述する少女。
「なぜ?」
ここに大きな「謎」というか、「秘密」があるのかと思ったら、特にミステリー要素はなく、レイプされたことへの後ろめたさが原因だったことが物語の最後に明かされる。
そうか、そう言うミステリー要素のアプローチのドラマじゃないんだなと最後まで観て感じました。
「私はレイプされました」と自ら告発することは、自分にさらにメスを入れるような行為だからだ。
「あれは嘘だった」と自分自身に嘘をつくことで自らのメンタルを守っていたのね。でも結局その行為が、警察から訴えられたり、友達を失ったり代償はめちゃ大きかった。
この子のパートはなかなか複雑ですね。
でも新しい人生を取り戻し、免許を取ってドライブするラストシーンは救われた気がした。
モヤモヤが残る点
先ほども述べたように、「なぜ彼女はレイプは嘘だった」と発言したのか?
「ここに何かどんでん返しがある」と期待すると肩透かしを喰らいます。
だって特に大きな山場がないから。
本作は基本的に女性たちの物語です。
レイプされた被害者たち、犯人を追う二人の女性警官。
目線は徹底的に女性から。
だから犯人が捕まっても、犯人の男側の主張が出てきません。
なんでもいいからこの辺は犯人の心理描写を紐解いて欲しかった。
だって被害者は大柄のふくよかな女性、黒人女性、さらになんと72歳の女性と幅が広すぎてまるで統一感がない。
この辺が明らかにされてないから実に気持ち悪いんです。
女性なら誰でもいいのか?
女性警官2人も正直あまり魅力的なキャラクターでもありません。だから観ていてけっこうしんどかった。まぁリアルと言えばリアルだけど。
受賞・評価
- Rotten Tomatoes:98%(圧倒的高評価)
- IMDb:8.4/10
- ゴールデングローブ賞:リミテッドシリーズ部門ノミネート
- ピーボディ賞/AFI TV作品賞 受賞
- ピュリッツァー賞受賞記事が原作
批評家だけでなく、実際の視聴者からも「教育的価値がある」と絶賛され、2020年のNetflixドラマの中でも最も再生された社会派作品のひとつとなった。

 
  
  
  
  
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