2024年に公開された映画『湖の女たち』。
吉田修一原作、大森立嗣監督。どちらも好きな方たちなので作品を観ましたが・・・
本記事ではネタバレ全開で感想考察レビューしていきます。
基本情報
作品名:湖の女たち
公開年:2024年
監督:大森立嗣
脚本:大森立嗣
原作:吉田修一『湖の女たち』(新潮社)
ジャンル:ヒューマンミステリー/サスペンス
上映時間:141分
製作国:日本
主なキャスト:福士蒼汰、松本まりか、福地桃子、浅野忠信
あらすじ

湖畔の静かな町に建つ介護施設で、100歳の寝たきり老人が何者かに殺害される。
事件を担当するのは、西湖署の若手刑事・濱中圭介とベテラン刑事・伊佐美佑。施設関係者への聞き込みが進む中、容疑者として浮上するのが介護士・松本だった。
だが捜査は単なる犯人探しでは終わらない。
圭介は佳代に対して次第に歪んだ支配欲と執着を抱くようになり、取調室は真実を明らかにする場ではなく、心理的な駆け引きの舞台へと変質していく。
一方、事件を追う週刊誌記者・池田由季は、過去に隠蔽された薬害事件と今回の殺人が結びついている可能性に気づく。
やがて浮かび上がるのは、個人の罪だけではなく、組織、世代、そして社会そのものが抱える闇だった。
『国宝』や『怒り』など、近年の日本映画ではかかせない作家の吉田修一原作。
めちゃくちゃ売れっ子作家ですよね。いまはどの日本映画観ても彼の原作ばかりな気がします。
そして監督は『日日是好日』や『MOTHER マザー』などの大森立嗣監督。
結果から言えば、稀に見る退屈な作品でした。とは言え、実際の事件をモチーフにしているので退屈と言ってしまうのも気がひれるのですが、あくまで「作品」としての感想を述べていきます。
ちょっとわかりづらい構成なので以下、簡単にまとめます。
簡単にまとめます
物語は、湖畔の介護施設「もみじ園」で起きた100歳の老人・市島民男の不審死から始まる。
捜査線上には人工呼吸器のアラームを「誰かが意図的に止めた可能性」が浮上し、若手刑事・濱中とベテラン刑事・伊佐美が捜査を担当するが、伊佐美は介護士の松本を犯人と決めつけ、強引な取り調べを進める。
濱中は違和感を覚えつつも、上司に逆らえず、そのストレスから同じもみじ園で働いている佳代を主従関係で支配してしまう。
一方、週刊誌記者の池田は、「17年前のMMO薬害事件」がこの事件に関わっていることに気づき、西湖にやってくる。この事件は当時、危険性が指摘されていた薬の治験が止められず、多くの被害を出したにもかかわらず、政治的圧力によって真相は闇に葬られたとされてしまった事件である。
被害者のもみじ園の市島は戦時中に731部隊に所属していた過去を持つ人物で、その時に実験を行っていたのが当時、少年兵であった宮森である。彼はのちにMMO薬害事件を隠蔽した現在の次期医師会会長。
終戦前年、宮森らの少年兵が少年とロシア人少女に実験をし、死亡する事件が起こり、市島の妻はそれを知っていたが宮森を告発することなく今日に至るのだった。
池田はある動画を入手し、車のナンバーからもみじ園で働いてる服部久美子の孫娘である三葉が呼吸器のアラームを止めたと確信。
しかし池田もまたMMO薬害事件を捜査することを上からの圧力で禁じられてしまう。
そしてある朝、バードウォッチングで三葉たちが次の老人ホームへ犯行しに行くと思われるシーンを目撃するも、特に行動を映すことなく終了。
超簡単に言ってしまえばこんな感じだけど、意味わかります?次で詳しく解説していきます。
繋がりが弱い
つまりもみじ園の被害者である市島の妻と宮森(少年兵で現・次期医師会会長)の関係は、池田と三葉の関係を表しています。
この構図が明確な「黒幕逮捕」というカタルシスには向かわないのでちょっとモヤモヤします。
事件の犯人は三葉たちと考えて間違いないでしょう。
そしてちょいちょい挟んでくる濱中と佳代のSMシーン。
これもまた観ていてしんどいレベルだし、いきなりドSになる濱中も濱中だし、簡単に受けれる佳代も佳代だ。まるで安いAVを観させられてるような感じで唐突感が否めませんでした。
松本まりかはもっと肉感的だったらそれこそAVみたいだったけど、実際はかなり華奢で、それが逆にリアルでもあったかな。
「このもみじ園をめぐる話とMMO薬害事件がどっぷりと関係があったか?」と言われると被害者が市島というくらいで実は表面的には関係が弱い気がします。
ぶっちゃけ、「市島の妻と宮森の関係」と「池田と三葉の関係」も実にそれっぽいとってつけたような構図。
濱中と上司の伊佐美の「相手に逆らえない」という構図や西湖署の上司の部下たちに対する妙な圧も、SMのそれに当ててるようで、それぞれがふわっとした繋がりなのでスッキリしません。
実は象徴的なキャラクターは伊佐美
浅野忠信演じる伊佐美は一体何だったんでしょう。
本当に松本を犯人だと思っていたのか、めんどくさいから松本を犯人ということにしようとしていたのか、彼の心が映画からは読み取れませんでした。
彼は昔、MMO薬害事件を追っていたが、上からの圧力で証拠がそろっていたにも関わらず、捜査を断念せざるを得なかった過去があり、まさに今回の記者の池田とリンクする。
が、彼はそれからなのか、「真実をみようとするのをどこかで諦めたような」感じを受けました。
池田も真実を告発したいのにそれができない状況に追いやられ、それが最後の三葉たちをただ傍観してるシーンに繋がります。
実はこの伊佐美こそがこの映画の象徴的なキャラクターなのかな。
正義を貫こうとする者ほど排除され、システムは守られる。
「誰だって最初から隠蔽したくて刑事になった人間なんていない」
このセリフからもわかるようにシステムによって正義を貫くことの難しさを表現した映画と言えましょう。
なので物語として気持ち良く分かりやすい展開があるわけでもなく、構造を理解しないと置いてけぼりを食らう映画です。決して万人には受けないでしょうね。
過去の罪も、現在の事件も、明確な解決を見ないまま、湖は静かに存在し続ける。そんな映画でした。
評価・受賞歴
- 2024年公開作品
- 国内主要レビューサイトでは概ね平均2点台後半〜3点未満の評価
- 原作は週刊新潮連載後に単行本化、のち文庫化
- 原作者・吉田修一は数々の文学賞受賞歴を持つ作家
映画版は原作の持つ心理描写や社会性をどこまで映像化できたかについて賛否が分かれている。
演出の重厚さや俳優陣の演技を評価する声がある一方で、テンポや構成については意見が分かれる作品となっている。









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