1995年に公開された映画『Love Letter』。
「お元気ですか〜?私は元気です!」
もう岩井俊二作品は過去に全て観たが、ぶっちぎって好きなのが本作
1995年公開の日本映画『Love Letter』は、岩井俊二が監督・脚本を務めた長編デビュー作であり、日本映画史に残る純愛映画の代表作である。
ちなみに本作や『四月物語』『花とアリス』なんかはホワイト系、『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』などはブラック系に勝手に分けてます。
何がいいって映像美。観て一発で岩井俊二の作品だと分かるほど光の具合が美しい。
それでいて本作は小樽の雪の風景などや学生時代のキラキラした感じがまさに映像とリンクしている。
しかもこれが岩井俊二の長編デビュー作だというんだから高なる。
本記事ではネタバレ全開で感想考察レビューしていきます。
基本情報
作品名:Love Letter
公開年:1995年
監督:岩井俊二
脚本:岩井俊二
音楽:REMEDIOS
ジャンル:ロマンス/ドラマ
上映時間:117分
製作国:日本
主なキャスト:中山美穂、豊川悦司、酒井美紀、柏原崇
あらすじ

神戸に住む渡辺博子は、山岳事故で亡くなった婚約者・藤井樹の三回忌を終えたあと、彼の母から中学時代の卒業アルバムを見せてもらう。そこに記されていた小樽の旧住所へ、衝動的に「お元気ですか?」と手紙を送る博子。本来届くはずのない手紙だったが、思いがけず返事が届く。
差出人は、同姓同名の女性・藤井樹。小樽の図書館に勤める彼女は、博子の亡き婚約者と中学の同級生だった。こうして二人の往復書簡が始まる。
手紙のやりとりの中で、女性の樹は中学時代の思い出を語り始める。クラスで男女二人いた「藤井樹」はからかわれ、図書委員に任命される。無口で本ばかり借りる男子の樹に、女子の樹はどこか特別な感情を抱くが、それは当時は恋とは気付かぬ淡い感情だった。
一方、博子は亡き婚約者の面影を女性の樹に重ねながら、彼をもっと知りたいと願う。親友の秋葉の支えもあり、彼女は少しずつ喪失と向き合っていく。
ちょいとしたミステリー要素
主演は中山美穂。彼女は渡辺博子と藤井樹という同姓同名の二人の女性を一人二役で演じた。
共演に豊川悦司、酒井美紀、柏原崇ら。当時まだ新鋭だった岩井俊二は、本作によって一躍注目を集め、その後の日本映画界に大きな影響を与えることになる。
物語は、雪山の遭難事故で婚約者・藤井樹を亡くした渡辺博子から始まる。
二年が経ち、三回忌のため小樽を訪れた博子は、彼の実家で中学時代の住所を目にする。
もう会えないと分かっていながら、どうしても気持ちを断ち切れない博子は、ややメンヘラチックであるがその住所宛に「お元気ですか。私は元気です。」と手紙を送る。届くはずのない、亡き恋人への手紙だった。
しかしその手紙には思いがけない返信が届く。差出人は同じ「藤井樹」という名前の女性。
博子は混乱しながらも文通を続けるうちに、自分の知らなかった婚約者の中学時代の記憶が少しずつ明らかになっていく。
やがて判明するのは、亡くなった藤井樹と、手紙を書いている女性の藤井樹が中学時代の同級生で同姓同名だったという事実。
この辺のトリックも見事としか言いようがない。ここから物語は学生時代の2人の藤井樹の話になっていく。
2人の藤井樹
二人は同姓同名で、クラスメイトからからかわれ、図書委員に半ば強制的に選ばれるなど、奇妙な関係を共有していた。
女性の藤井樹は、小樽で図書館司書として働いている。彼女は体が弱く、風邪をこじらせやすい体質でもある。物語は現在の博子と女性の樹の文通を軸にしながら、回想という形で中学時代の記憶が描かれていく。
雪深い小樽の風景、図書室の静寂、貸出カードに書かれた名前。
岩井俊二は光と空気感を巧みに使い、記憶の中の時間を淡く、どこか儚く映し出す。これがうっとりするくらい美しい。なんだろう、ノスタルジーを映像化するとこんな感じになるよねという一種の最適解のような。
中学時代の藤井樹(男性)は、無口で本ばかり読んでいる少年。彼はクラスの中で孤立気味だったが、同姓同名の女子・藤井樹と間にははっきりとした恋愛関係があったわけではない。
物語が進むにつれ、博子は次第に理解していく。
自分が愛した藤井樹は、過去のどこかで、確かに誰かを想っていた少年だったのだと。
これが実に切なく、残酷だ。
映画史に残るエンディング
そしてクライマックス。博子は藤井樹が亡くなった雪山を訪れ、白一色の世界に向かって叫ぶ。
「お元気ですか? 私は元気です。」
それは亡き恋人への呼びかけであり、同時に自分自身への問いかけでもある。喪失を受け入れ、前へ進むための儀式のような瞬間だ。この台詞は日本映画史に残る名フレーズとなり、多くの観客の心に刻まれた。
そして女性の樹もまた、当時は気づかなかった少年の想い触れることになる。
図書カードの裏に描かれていた自分の似顔絵。
それは彼が最後まで言葉にできなかった初恋の証だった。
うわぁ・・・いい意味で鳥肌が立つ完璧な最後。この時の中山美穂の表情が、驚きと戸惑いと暖かな気持ちが入り混じったなんとも言えない表情で映画がエンドロールを迎える。
長編デビュー作にして傑作
これは喪失の物語であり、記憶の物語であり、そして再生の物語である。同姓同名という偶然を軸に、過去と現在、現実と記憶、生と死が交差する構造は極めて巧妙だ。
博子のそばには豊川悦司演じる秋葉茂という男性がいる。
茂はかつて藤井樹の親友であり、今は博子を支え続ける存在だ。茂は博子に想いを寄せているが、彼女は亡き恋人への気持ちを手放せずにいる。茂の存在は、過去に縛られる博子と、前に進もうとする現実との対比を際立たせる。
言葉にできなかった想い、すれ違った時間、それでも確かに存在した感情。観る者は誰しも、自分自身の記憶と重ね合わせずにはいられない。
映像美、音楽、演技、構成、そのすべてが高い完成度で結実した『Love Letter』は、岩井俊二の出発点であり、日本映画の一つの到達点でもある。
評価・受賞歴
本作は国内外で高い評価を受け、第19回日本アカデミー賞では優秀作品賞をはじめ、豊川悦司が優秀助演男優賞、柏原崇と酒井美紀が新人俳優賞を受賞。音楽を担当したREMEDIOSも優秀音楽賞に輝いた。
中山美穂はブルーリボン賞、報知映画賞、ヨコハマ映画祭などで主演女優賞を受賞し、一人二役の繊細な演技が高く評価された。
また、韓国公開時には日本映画として異例の大ヒットを記録し、台詞「お元気ですか?」が社会現象になるなど、国境を越えて支持を集めた作品でもある。
今なお冬になると観返される、喪失と初恋を描いた名作である。





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