【映画】ラーゲリより愛を込めて│(2022)|実話の山本幡男と「ダモイ」の意味を徹底考察

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ラーゲリーより愛を込めて(2022)|雪の収容所で涙を浮かべる主人公・山本幡男の水彩画風イラスト 人間ドラマ

2022年公開の映画『ラーゲリより愛を込めて』。

正直言って二宮和也は苦手なんだけど本作の二宮和也はなかなかいい演技を見せている。

本記事ではネタバレ全開で感想考察レビューしていきます。

基本情報




作品名:ラーゲリより愛を込めて

公開年:2022年

監督:瀬々敬久

脚本:林民夫

音楽:小瀬村晶

ジャンル:戦争/ヒューマンドラマ

上映時間:133分

製作国:日本

主なキャスト:二宮和也、北川景子、松坂桃李、中島健人、寺尾聰、桐谷健太、安田顕

あらすじ

ラーゲリーより愛を込めて(2022)|雪の収容所で涙を浮かべる主人公・山本幡男の水彩画風イラスト




昭和20年(1945年)、第二次世界大戦終戦。ロシア語に堪能な山本幡男は、満鉄調査部勤務を経てソ連軍の捕虜となり、シベリア・ハバロフスクの収容所(ラ―ゲリ)へ送られる。

氷点下40度の極寒、飢えと過酷な強制労働。仲間が次々と生きる気力を失う中、幡男は言う。

「諦めるな。今日という日を、よく覚えておくんだ」

やがて咽頭癌を患い、余命三ヶ月と宣告される幡男。彼は家族への思いを遺書に綴るが、そのノートは没収される。しかし仲間たちは彼の言葉を分担して暗記し、帰国後に家族へ届けることを誓う。

閉ざされた空間で「どう生きるか?」を問う

『ラーゲリより愛を込めて』を理解するうえで、まず押さえておきたいのが「ラーゲリ」という言葉の意味。

ロシア語で「収容所」を指すこの言葉は、第二次世界大戦後のシベリア抑留を象徴している。




終戦後、多くの日本兵がソ連によってシベリア各地のラーゲリへ送られたそうだ。もちろんそこは単なる滞在施設ではない。

極寒の地での強制労働、思想教育、劣悪な環境。零下40度にもなる土地での生活は、そもそも生存そのものが闘いだった。

二宮和也演じる山本幡男は安田顕演じるかつての上官に嵌められてラーゲリへ送られる一人。しかもやってもない罪で25年。これ実話だと言うから恐ろしい。

上官は山本がロシア文学にめざめたきっかけの人で、奇しくもラーゲリでロシア語の通訳を任されることになるのがなんとも皮肉・・・。

満州で家族と暮らしていた山本は、敗戦によって突然すべてを失ってしまう。妻と子どもたちは日本へ戻るが、山本は帰れない。

だが本作が描くのは被害や悲惨さではなく、ラーゲリという閉ざされた空間で、山本は「どう生きるか」を選び続けるのがテーマ。

仲間を励まし、「諦めるな」と声をかける。その姿勢が、絶望の中に小さな秩序と希望を生み出していく。

ラーゲリとは肉体が拘束される場所であると同時に、人間性が試される場所でもあったわけだ。

南京虫の刑とは?




特に印象的だったのが南京虫の刑。ラーゲリで実際に行われたとされる懲罰の一つで、トコジラミが大量発生する狭い営倉に捕虜を閉じ込めるというもの。

逃げ場のない空間で吸血され続け、激しい痒みと不眠により心身を衰弱させることを目的としたヤバすぎる拷問。

人間って痛みよりも痒みの方が辛いと聞くけどこれはまさに地獄だっただろうな。

物語はけっこうテンポよく進むため、この辺の痛みや苦しみのシーンはわりとサラッとしてました。どちらかと言えば肉体的な痛みよりも精神的な痛みの方にフォーカスされていたのかな。

尺の問題もあるだろうど個人的にはもっと実際に行われていたこういう非人道的な仕打ちをみせてほしかったかな。

「ダモイ」とは何か?帰るという希望




「ラーゲリ」と対照的な言葉が「ダモイ」。

ロシア語で「帰国」「帰れ」を意味する言葉だ。ラーゲリの抑留者たちにとって、それは何よりも強い願いを込めた言葉だった。

「ダモイ」と叫ぶことは、「生きて帰る」という意思表示でもあり、帰国は彼らにとって唯一の希望だった。

しかし山本自身は喉の癌に犯され、余命宣告されてしまう。もはや救いようがないほど酷い話である。

彼の遺書を没収されることを危惧して、仲間たちがそれぞれ暗記する。

紙は没収されても、頭のなかのことまでは盗まれない。

これは文字を書けない新谷が山本から文字を教わり歌を綴るようになったシーンとリンクしている。文字で記録することはスパイ行為だと、ロシア兵から歌を綴った紙を取り上げられてしまった時に新谷に対して山本がかけた言葉が蘇る。

頭で考えたことは誰にも奪われない。

今度は山本の家族への想いを新谷たちが記憶して、日本に持ち帰る感動的な伏線回収。

こうして「ダモイ」は単なる身体の帰還ではなく、「想いを持ち帰ること」へと意味を広げていく。

帰るとは、場所へ戻ることだけではない。記憶や言葉を未来へ届けることでもある。この変換こそが、本作の大きな軸だ。

歴史を超えて残るもの、受け継がれる言葉。

最終的に物語は1950年代を経て、2022年へとつながる。孫娘の結婚式で語られる山本の言葉。

「今日という日を、よく覚えておくんだよ」。

ラーゲリで綴られた言葉が、世代を越えて生き続けている。




背景にあるシベリア抑留は歴史的事実であり、満州国の成立、敗戦、ソ連占領という流れの中で、多くの人が翻弄された。

極限状況でも他者を思いやることができるか?希望を語り続けることができるか?

「ラーゲリ」と「ダモイ」。閉ざされた空間と帰るべき場所。この二つの言葉が対照的に配置されることで、本作は単なる戦争映画を超えた普遍的なテーマを提示する。

瀬々敬久監督は過酷な描写を必要以上に煽らない。暴力や悲惨さよりも、「言葉」と「眼差し」に焦点を当てる。だからこそ、二宮和也演じる山本幡男の静かな強さが際立つ。

特筆すべきは、抑留体験を怒りではなく希望の継承として描いた点だ。

戦争映画としての迫力よりも、人間ドラマとしての余韻を重視した作品であり、静かだけど確実に胸に残る一本でした。

受賞歴




・第46回日本アカデミー賞

 優秀主演男優賞(二宮和也)

 優秀美術賞

・第65回ブルーリボン賞

 主演男優賞(二宮和也)

実話をベースにした映画3選