【考察】冷たい熱帯魚|でんでんの怪演はなぜ日本映画史に残ったのか【ネタバレ感想】

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映画『冷たい熱帯魚』の狂気と日常が交錯する不穏な人物像を描いた劇画タッチのイメージ サスペンス

改めて『冷たい熱帯魚』を鑑賞することに。この映画は実際に起きた「埼玉愛犬家連続殺人事件」を元にしたもので随分ハードな内容。

本記事ではネタバレ全開で感想考察レビューしていきます。




基本情報

  • 作品名:冷たい熱帯魚
  • 公開年:2011年
  • 監督:園子温
  • 脚本:高橋ヨシキ/園子温
  • 音楽:原田智英
  • ジャンル:ホラー/クライム/スリラー
  • 上映時間:146分
  • 製作国:日本
  • 主なキャスト:吹越満、でんでん、黒沢あすか、神楽坂恵




あらすじ

映画『冷たい熱帯魚』の狂気と日常が交錯する不穏な人物像を描いた劇画タッチのイメージ

死別した前妻の娘と現在の妻。

その折り合いの悪い二人に挟まれながらも、主人公の社本信行は小さな熱帯魚店を営んでいた。

波風の立たないよう静かに暮らす小市民的気質の社本。

だが、家族の確執に向き合わない彼の態度は、ついに娘の万引きという非行を招く。

スーパーでの万引き発覚で窮地に陥る社本だったが、そんな彼を救ったのはスーパー店長と懇意のある村田だった。

その親切さと人の良さそうな男に誘われて、社本と村田夫婦との交流が始まる。




監督は『愛のむきだし』『自殺サークル』『ヒミズ』などで知られる鬼才・園子温。

1度目の視聴は園子温節炸裂のジェットコースタームービーのような映像描写、過激なエロス、終始叫んでいるでんでん、血だらけの残酷なシーンの連続に心奪われた。

さて、今回は2度目の視聴。

冷静にじっくりこの映画を分析してみようと思う。




実際の事件の概要

1993年に埼玉県大里郡でペットショップを経営する関根元と風間博子(2人は夫婦)が客など含めて4人を殺した事件。

手口は非常に姑息。

「超高級犬」として相場の100倍の値段で売りこみ、その後に売り先の家に忍び込んで盗み出したり、殺したりしてしまう。

さらに顧客の悲しみにつけ込みもう一度ペットを売りつける。

「おかしい」と彼らの悪事に気づいた客は殺してしまう。

めちゃくちゃでしょ…

死体の処理方法は細かく切り刻んで(肉と骨を分ける)、煮てから何箇所かに分けて捨てる。

彼ら曰く「ボディを透明にしてやった」だ。

気に入らなければヤクザだろうが殺す。

関根が言うには「俺は30人は殺している。人間の寿命は俺が決める」だって…

凶悪版ジャイアンじゃねぇかよ。




右肩上がりのテンション

映画の話に戻ろう。

設定は「ペットショップ」から「熱帯魚店」にはなってはいるが、でんでんと黒沢あすかがこの関根と風間を演じている。

吹越満は彼らの犯罪に加担させられる役でこの映画の主人公。

冒頭の吹越満と神楽坂恵と娘の冷めきった食事のシーンからなんだか重くてどんよりしている。

その夜に娘が万引きで捕まりでんでんが娘を助けたことから家族ぐるみでの交流が始まる。

ここまでは色々と違和感はあるものの映画としてはなんとなくゆったりとした感じだ。

ある時でんでんが神楽坂恵の胸をガッとつかみ出すシーンから徐々にでんでんの二面性が出てくる(しかし神楽坂恵がエロいのなんの)。

そして詐欺まがいの商売シーンの途中ででんでんがいきなり「まだ捕まるわけにはいかねぇんだよ」とポツリと漏らす。これが凄くナチュラル。

「え?いまなんて言いました?」

毒薬を飲まされた客は目の前で苦しみながら死んでいく。

そこで初めてでんでんが豹変。

「おい、社本!」と吹越満を呼び捨て。

このスイッチの入れ方が実に上手い。

不安を煽るような音楽が相乗効果となってここから一気に流れが変わる。

残虐シーンの連続でテンポも一気に加速し全く目が離せなくなる。

まさに園子温監督の真骨頂。




でんでんのハマリ役

彼には罪悪感なんてこれっぽっちもない。

死体をバラすシーンなんてなんだか料理人が仕込みをしているかのような感じだ。

彼の発言もやけに堂々としている。

「殺しのオリンピックがあれば、俺は金メダル間違いなしだ。
殺しのオリンピックは本物のオリンピックよりずっと面白い」

「そのうち、俺は殺しの世界で一番の男になりたいと思うようになった。
人間なんでも一番にならなきゃ駄目だ。殺しにかけては俺がいまナンバーワン」

「死体がなければただの行方不明だ。証拠があるなら出してみろ。
俺に勝てる奴はどこにもいない」

「最初は俺も怖かったが、要は慣れ。
何でもそうだが、一番大事なのは経験を積むこと」

「臭いの元は肉だ。
そこで透明にする前に骨と肉をバラバラに切り離すことを思いついた」

「骨を燃やすのにもコツがいる」

死体を解体しながら吹越満に「お前に技を伝授してやる。俺らがいなくなったら誰がこれをやるんだ?」

「はい…」

「まずはできるだけ細かく切る。骨と肉を切り離すのがコツだ」

「はい…」

まるで料理人の師匠と弟子のような会話に思わず笑ってしまった。

でんでんはいままで脇役が多かったイメージ。

インタビューを読むともともと悪役に憧れがあったらしい。

一見「人の良さそうなおっちゃん」だけど実は「残虐な殺人鬼」というこのギャップはでんでんが演じることでよりリアルさが増す。まさにハマリ役だ。




園子温の趣味につきあわされてる

この映画、ストーリー上明らかに必要のない「エロシーン」の連続だ。

神楽坂恵と黒沢あすかの格好もよくわからない。

でんでんがヤクザに詰め寄られてる間に黒沢あすかが女性従業員とのキスシーンも必要ない。

たぶんこれ園子温の趣味だろう。

単純にこの人は人の気をひくのが好きな監督さん。

今までの作品もそうだったけど無意味なシーンばかりだけど「なんか観てしまう」というのが多かった。

とにかくただインパクトを残すために作ったようなシーンの連続。

神楽坂恵も黒沢あすかも実は「支配されたい欲」が強い女性。

でんでんから殴られ「もっと殴ってください。ありがとうございます」とか言うドMな神楽坂恵のシーンは「これ一体なんの映画観させられてるんだ…」と思ってしまった。




実はそこまでグロくもない

グロいシーンに関してはそこまで目を背ける程のシーンはなかったように思う。

ここら辺は園子温が「ただ血糊を使えばいい」という浅はかな考えなのか単純に私がそういったシーンに強いのかどちらかだ。

画面から伝わってくる「痛み」というのがあまり感じられなかったのは園子温の演出がちょっと独特だから現実味がないのかもしれない。

最後のでんでんが死んでからのシーンは少し長かったように思う。

実際の事件では2人とも死んでおらず警察に捕まり死刑囚に。

ちなみに関根は刑務所で病死しています。

ところが園子温バージョンでは吹越満がブチギレてでんでんを滅多刺しにしてしまう。

映画的にはおそらく吹越満がキレる要因が欲しかったんだろう。

「カタルシス」という意味においては根暗で自分を出さない吹越満がブチギレるシーンは有効だけどここで終わっていればよかったかな。

その後もダラダラと蛇足的なシーンが続く。

このシーンは凄く疑問なんだけどでんでんはなぜあんなに吹越満を怒らせたんだろう?

「お前は自分で何もできない」「殴れよ」

結果的にでんでんは吹越満に殺されることになます。おそらく、でんでんは彼に後継者になってほしかったのだろう。だから試しに煽ってみたのが私のなかの答え。

そう、この映画はでんでんの話というより吹越満がでんでんに携わったことにきっかけに変わる話なのです。

とにかく2時間ちょっともある長めの映画にも関わらず全く飽きずに最後まで観ることができた。




受賞歴・評価

  • 第64回カンヌ国際映画祭
    • 監督週間部門 正式招待
  • 国内外で園子温の代表作として高評価
  • 日本映画における「実録犯罪×心理崩壊」ジャンルの決定打的作品として定着




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