2021年に公開された映画『ボクたちはみんな大人になれなかった』。
なんだか観てしまったよ。物語なんてほぼないというか、とある46歳が過去を振り返るだけの内容だけどダラダラと観れてしまうのは自分も主人公と世代が近いからか。
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:ボクたちはみんな大人になれなかった
公開年:2021年
監督:森義仁
脚本:高田亮
音楽:tomisiro
ジャンル:恋愛/ドラマ
上映時間:124分
製作国:日本
主なキャスト:森山未來、伊藤沙莉、東出昌大、SUMIRE、篠原篤、平岳大、片山萌美、高嶋政伸、ラサール石井、大島優子、萩原聖人
あらすじ

46歳になった佐藤誠は、どこか惰性のような日々を送っている。そんな彼が、ある日SNSでかつての恋人・かおりに誤って友達申請を送ってしまったことをきっかけに、止まっていた記憶が動き出す。
物語は1990年代の東京へと遡る。若き日の佐藤は、かおりという女性と出会い、彼女のまっすぐな言葉に支えられながら、不器用に夢を追いかけていた。しかし時代の流れとともに二人の関係はすれ違い、やがて彼女は何も告げずに去ってしまう。
そして2020年。再び現在に戻った佐藤は、過去の恋人や友人たちとの再会を通じて、自分が何を失い、何から逃げてきたのかを突きつけられる。青春の残像と向き合いながら、「大人になる」とは何だったのかを問い直していく。
「フツーだね」の意味
「フツーだね」が口癖のかつての恋人のかおりはフツーに結婚して、子供を産んでフツーに幸せな家庭を送っていた。そんなかおりにFacebookで友達申請を送ってしまう主人公・佐藤誠。
しかし「佐藤」って苗字もフツーだな。笑
劇中で出てくる小沢健二、sonic youthのTシャツ、なんか王道じゃないんだよね。わかるわぁ。
だけど、ラブホテルで流れる音楽はTRFだったりいわゆる王道のポップミュージック。
この辺の対比が興味深い。
なんとなく生きてきた結果、46歳になったいまの自分には何も残っていないと気づく誠。
なぜ誠はかおりに友達申請を送ったのか?
未練があるのか?結婚しているかおりに?
もしかしたら過去の誠の人生に未練があるのかもしれない。物語はそんな誠の過去に遡って展開していく。2020年から淡々と95年まで。なぜいまの彼はこんな表情なのか?
「大人」とは?
過去に遡りながら進行していく作品としては別に珍しいものではないけど、これが非常によくできている。
なんで誠が手に傷があるのかとか、なんでヤクザが死んだニュースに関心あるのかとか、ちゃんとその後に過去パートで伏線を回収してくれている。
冒頭シーンも人が全然いないの不自然だなと思ったらあとで2020年のコロナ禍ということがわかったり伏線回収が散らかってないので親切です。
だから観ていてストレスがない作品でした。
逆に大島優子演じる恵はちょいと切なかったですね。いずれ終わるであろう関係が描かれていてからの、恵の母親との顔合わせのシーンとかも。
誠も酷いね。全然恵に向き合ってない。いくら仕事が忙しいからって結婚する気がないならとっとと別れるべきだ。誠は結構不誠実な一面があるなとこのシーンで思ってしまった。
だけどこのシーンもそれこそ誠を象徴していて、過去に遡っていくにつれてやっぱり彼は常にダラダラしてるし、もじもじしてる。だから彼は根本では全然変わってないのかもしれない。
ここで言う「大人」ってなんでしょう。
主人公の誠は現在46歳で、結婚はしておらず、会社勤め。かたや友人の関口は会社をやめて、自分で独立して順調に仕事をしている。
誠はまだ自分は何者にもなれていない。ただ、人生をこなしているだけに見て仕方がない。
この「大人」とは「精神的な充実感」のことを表しているのではないだろうか。
そしてそんな誠をかつて恋愛対象とみていたLGBTの彼もまた、バーの仕事を辞め、「私には何も残ってない」と深夜の新宿のゴミの上で嘆く。
彼もまたここで言う「大人」になれなかったうちの一人である。
人生とは自分で行動して幸福は自分でつかむものと思ってるので、この誠はなかなか受け身でじれったく見えてしまう。
だってあんな使いっぱしりみたいな仕事をずっとしてる意味がわからない。
自分だったらとっとと辞めてるんだけど、誠はずっとあの会社にいる。いれてしまうというか、辞める理由を見つけないというか。
別に組織にいることが悪いことではないけど、「もっと主体的に生きたら?」と思ってしまいました。でもいるよね、こういう人。だから凄くリアルなんです。
「いつしか人の不幸で笑えなくなった」
しかし本作品って何が言いたかったんだろう。
ここで得られるもは、「いまを後悔ないように生きろ」くらいしか読み取れない。「大人になってから後悔するぞ?」かな。
もともとウェブでの連載小説が原作のようで、作者の燃え殻自身の内面の欠落や若き日の焦燥そもそもを描いた作品なので、強いメッセージ性のある作品というよりも、共感作品である。
そう考えるとなんだか『秒速5センチメートル』に近い作品なのかな。
誠はかつての恋人のかおりにどこか未練があって、なかなか前に進めないでいる。
ぶっちゃけ、過去は過去でいいけど「いまを大事に、いまを最高の瞬間」として生きてる感じが全くしない。
最初はチャラ男かと思ったけど時間軸が遡っていくにつれてだんだんと初々しくなっていって、最終的に童貞臭を感じさせる森山未來はやっぱり凄いね。最近観た『モテキ』でも熱演してたけどだいぶいい。
映画に出てくるロケーションも渋谷とか新宿とかよく知ってる場所ばかりで自分的にはそこだけはテンションが上がった。
常に空虚な目をしてる誠。
「ほんとフツーだな」
フツーに幸せに人生送れてる人の方がマイノリティなのかな?
フツーでいいじゃない。
確かに若い頃って「フツー」をかっこ悪いみたいなニュアンスで受け取りがちだけど、大人になって気づく。
フツーでよくね?十分じゃね?
誠「関口、離婚したって」
LGBT「いつしか人の不幸で笑えなくなったなぁ」
人の不幸で笑っていたころって、どこか自分のいる場所とは関係ない他人事だから笑っていられたけど、歳をとって自分の環境や状況・幸福度なんかと重ね合わせると急にリアルになったりする。
だから人の不幸が笑えなくなる。
でもね、それが「大人」ってやつなんじゃないかな。






