【映画】BAD LANDS バッド・ランズ|なぜ緊張感が生まれないのか?短絡的すぎる犯罪描写を考察

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映画『BAD LANDS バッド・ランズ』で、安藤サクラ演じるネリが路上で男たちと並んで歩くシーン サスペンス

2023年公開の映画『BAD LANDS バッド・ランズ』。原作は黒川博行。監督は『検察側の罪人』の原田眞人。

本記事ではネタバレ全開で感想考察レビューしていきます。




基本情報

  • 作品名:BAD LANDS バッド・ランズ
  • 公開年:2023年
  • 監督・脚本:原田眞人
  • 原作:黒川博行「勁草」
  • ジャンル:クライム/サスペンス
  • 上映時間:143分
  • 製作国:日本
  • 主なキャスト:
     - 安藤サクラ(橋岡煉梨)
     - 山田涼介(矢代穣)
     - 生瀬勝久
     - 吉原光夫




あらすじ

映画『BAD LANDS バッド・ランズ』で、安藤サクラ演じるネリが路上で男たちと並んで歩くシーン

大阪を舞台に、特殊詐欺の受け子や指示役を束ねる女・ネリと、刑務所から出所したばかりの弟ジョー。

血のつながった姉弟は、金と嘘と暴力が渦巻く裏社会で再び手を組むが、組織・警察・裏切りが絡み合い、事態は思わぬ方向へ転がっていく。




どっちつかずのクライムもの

大阪・西成という、日本でも指折りのディープなエリアが舞台のクライム映画。

観終わって残ったのはスリルでも余韻でもなく、「今ので人殺す?」という素朴すぎる疑問の連続。

私は普段からどて煮や串カツを好んで食べないし、バキバキの大阪弁を聞くこともなければ、彼らを取り巻く環境が自分とは離れ過ぎていてまるで外国のようにうつりました。

もちろん西成区には何回か行ったことはあるが、西成区が地元の人と東京の人とではこの作品に対する見方が全く異なるだろう。

そもそも特殊詐欺グループが主役なので彼らに同情もクソもない。

確かに彼らが育った環境は不運だったかもしれないが、別にそれが犯罪の免罪符になるわけでもないし、人を騙して金を得てるので別に彼らが捕まろうが、死のうが知ったことじゃない。

こういうクライムサスペンスって主人公は悪いことしてるけど、逃げ延びてほしいと思わせないとしんどい。キャラクターたちもそんなに魅力的じゃないし、テンポだけはいいから観れるけどたいした内容でもない。

ではかと言って「彼らがやってることが悪いことだ」という教えもなく、淡々と物語は進んでいくので、どっちにも触れてない結果的に中途半端な作品になってしまっている。

一番重要なのが、犯罪映画に不可欠な「選択の重さ」がないことだ。

なぜその判断をしたのか?他の道はなかったのか?引き返せない理由は何か?

これらが描かれないまま進む物語は、ただの出来事の羅列に過ぎない。結果的にただキャラクターたちを追いかけるだけの浅いドラマと化している。




笑いを取ろうとしてるのか?

西成の描写そのものは悪くない。ふれあい荘、路上の空気、貧困層同士の独特な距離感。

宇崎竜童演じる曼荼羅の存在は、その象徴で、アルコールで壊れかけながらも、かつての危うさを身体に残した男。

彼はこの映画の中で、唯一人間の重みを背負っているキャラクターでしたね。

ただし、物語は相変わらず深掘りされない。

貧困だから犯罪をするのか、持たざる者はどう生きるのか、そうした問いが立ち上がりそうで、立ち上がらない。

さらに致命的なのが、緊張感の削ぎ方だ。命が賭けの局面で挟まれる、妙な軽口や小ボケ。それが魅力の一部ではあるんだろうけど、いちいち滑ってる。

大きな笑いを取りにきてるわけではないけど、正直言って邪魔。

例えばサリが演じる裏賭場の帳付をする金髪女性の林田。

会話の途中に誰かの物まねをするんですが、ああいうのいらない。全然笑えないし。

犯罪映画だから少し会話をウィットにしたいのか知らないが関西人特有のユーモア感出してます的な感じがして観ていて薄ら寒かった。

もっと自然体でいいのに。




キャラクターが漫画的で短絡的な行動

ネリを追いかける元カレ。彼も女性に暴力をふるうサイコパス系。いちいち漫画っぽい。

そして最大のノイズが、弟・ジョーの存在。

賭博で250万円の借金を背負い、追い詰められた末に勢いでネロの親を殺す。

250万円で殺す?

ここに葛藤も積み重ねもなく、ただ追い込まれたから、勢いだからで片付けられてしまう。

この瞬間、物語のリアリティは大きく地に落ち、浅はかさだけが残る。

犯罪映画に必要な善悪の判断がない。

「そうせざるを得なかった」と観客が理解できる導線が必要なのに行動が軽率過ぎてついていけない。

本作はその一番大事な階段をすっ飛ばすもんだから犯罪映画として共感が全くできない。かと言って『トレイン・スポッティング』のような高揚感があるわけでもない。




ネリは魅力的だが、映画が彼女を活かしきれない

安藤サクラ演じるネリは、間違いなくスクリーンを支配していました。

立ち居振る舞い、視線、判断の速さ。

だからこそ惜しい。

彼女の冷静さと、弟の短絡さの落差が、ドラマとしてではなく粗として浮き彫りになっている。

ネリが一挙手一投足から目が離せない分、周囲の行動があまりにも雑に見えてしまうのだ。

だが、肝心の物語は「人が犯罪に手を染める理由」を環境のせいにしてるだけ。

短絡的な行動、緊張感を壊す演出、積み上がらない心理描写など、「雰囲気だけはそれっぽいが、腹には何も残らない犯罪映画」。

サスペンスとしても、どこかで踏み込むべき一線を越えられなかった。そんな感想でした。




評価・受賞歴

  • 各映画レビューサイト平均:★★★☆☆前後
  • 大型映画賞での主要受賞:特になし
  • 評価傾向:
     - 安藤サクラの存在感は高評価
     - 物語構成・テンポに不満の声が多い
     - クライム映画としての爽快感不足が指摘されがち




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