2019年に公開された映画『愛なき森で叫べ』。
実際に起きた北九州の事件をモデルにした作品。監督は『冷たい熱帯魚』などの園子温。
『冷たい熱帯魚』がだいぶ良かったから期待したんだけど、本作はちょっと・・・
本記事ではネタバレ全開で感想考察していきます。
基本情報
作品名:愛なき森で叫べ
公開年:2019年
上映時間:152分
監督:園子温
脚本:園子温
出演:椎名桔平、満島真之介、日南響子
配信:Netflix
ジャンル:クライム/スリラー
原作:実際の事件(北九州監禁殺人事件着想)
あらすじ

上京してきた青年シンは、仲間たちと自主映画を制作することになる。
その中で出会ったのが、女性たちを巧みに操る男・村田だった。
一見魅力的で人当たりの良い村田だが、その本性は冷酷な支配者。
言葉と心理操作によって周囲の人間を支配し、徐々に歪んだ関係へと引きずり込んでいく。
やがて彼らは、想像を超えた狂気の事件に巻き込まれていく――。
実写化ではない。
まず一つ言っておきたいのが、何かと「北九州監禁殺人事件を園子温が映像化した!」とか騒がれていたが正確にはあの事件から着想を得ただけで実写化ではないということ。
ここ重要なとこ。
なので北九州監禁殺人事件のノンフィクション「消された一家」を読んだことがある方がこの作品にあの残虐性を求めたりしても肩透かしを食らうだけだ。
いや、十分に残虐であることは間違いないが、実際の事件の方があまりに桁違い的に残酷なので…
園子温が北九州監禁殺人事件に着想を得て映画を作ったということで『自殺サークル』や『冷たい熱帯魚』などで発揮されていたスプラッター性が今回でも爆発するのかなと思ったけどそう言ったシーンは少なめ。
さすがに糞尿食わせるシーンはないにしても陰部への通電もなく、子供を殺し解体するシーンもない。
そもそもこの映画では被害者たちは一室に監禁されていない(村田のマインドコントロールにかけられていて逃げられないという点においては監禁と同じだが)。
共通してるのは村田という詐欺師によってマインドコントロールにかけられ殺されるというくらいでこれはあの事件とは別物として観るべきである。
園子温の作風が裏目に出た
映画の妙子は実際の事件の緒方純子の位置だけど肝心の「なぜ洗脳されたのか?」という部分の描き方がちょっと雑。
気づいたら村田にゾッコンだったからちょっと描写が粗い。
粗いくせに園子温は今回も色んな余計なもの足しすぎてる。
冒頭のロミオとジュリエットのくだりが出てきた瞬間から「あぁ、これはもうあの事件と切り離して観ないといけないな」と腹をくくって観るわけだけど最後まで展開がめちゃくちゃ。
あえて実写化でなく園子温なりのポップさを加えてほぼオリジナルっぽくしてるんだけどだったら完全オリジナルにしてほしかった。
なんで満島真之介が最終的に殺人犯に…?
でんでん夫婦が村田に脅されてなんでパンクな衣装?
村田のリサイタル?
正直全く笑えない。
『地獄でなぜ悪い』のめちゃくちゃ加減とも違う。
園子温の作品って整合性とか取れていなくてもテンションでなんとなく押し切る部分があっていい方にブレた時の爆発力は凄いんだけど、そうでない時はかなりの確率で駄作になる傾向がある…。
なぜ今回全然笑えないのかというとやっぱりあの事件のせい。被害者もいるわけで。
どうしても「北九州監禁殺人事件をモチーフにした」と言われるとあの事件を重ねてしまうのは当然でこの作品とのギャップに違和感を感じるのは自然なこと。
これ、もしかしたら誰も得しない作品なんじゃないかな。
全体のノリが学生の自主製作映画みたいな空気なのは毎度の事だけど。
事実は小説よりも奇なり。
あまりに実際の事件の松永太が色んな意味で凄すぎたので椎名桔平が霞んで仕方がないというのが正直なところ。
あぁ、自分で「別物」と言っときながらやっぱりここでも比べちゃってるよ…
椎名桔平は確かに怪演といった感じでなかなかハマってます。
けど話が進むうちにどんどん凡庸になったかな。
ただ口が達者なおっさんって感じで狂気みたいのが感じられなかった。
2時間半あるけど今回は観ていて少ししんどかった。
やっぱり映画内で本人をモデルに村田が映画を撮るって設定自体に無理があるような気が…
「事実は小説よりも奇なり」とはよく言ったもので作家の新堂冬樹がこの事件をモチーフに描いた小説「殺し合う家族」も正直言って生ぬるかった。
こういう言い方は遺族には申し訳ないが、もうこの事件に関してはどんな作品も実際の事件には太刀打ちできないし結局は比べられてしまうので誰も得をしないと思う。
「こういう恐ろしい事件があった」という事を後世に伝えていくことは意味があることだとは思うけど、作品としては非常にモヤモヤが残る印象を受けました。






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