【映画】CUBE 一度入ったら、最後|「出られない箱」を日本で作ると、説教が入る【考察】

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青く冷たい立方体の空間で、緊張した表情の3人が身を低くして身構える様子を、水彩画タッチで描いた映画「CUBE 一度入ったら、最後」の一場面イメージ サバイバル

2021年に公開された映画『CUBE 一度入ったら、最後』。

本記事ではネタバレ全開で感想考察レビューしていきます。




基本情報

  • 作品名:CUBE 一度入ったら、最後
  • 公開年:2021年
  • 監督:清水康彦
  • 脚本:徳尾浩司
  • 原案:ヴィンチェンゾ・ナタリ「CUBE」
  • 音楽:やまだ豊
  • ジャンル:スリラー/密室サバイバル
  • 上映時間:108分
  • 製作国:日本
  • 主なキャスト:菅田将暉、杏、岡田将生、柄本時生、斎藤工 ほか




あらすじ

青く冷たい立方体の空間で、緊張した表情の3人が身を低くして身構える様子を、水彩画タッチで描いた映画「CUBE 一度入ったら、最後」の一場面イメージ

目を覚ますと、そこは無数の立方体が連結された謎の空間だった。

年齢も職業も性格も異なる男女が、理由も分からぬまま同じ「箱」に閉じ込められている。

各部屋には罠が仕掛けられており、一歩間違えれば即死。

生き延びるためには、他者と協力し、時に疑い、選択を重ねるしかない。

だが物語が進むにつれ、この「CUBE」は単なるデスゲーム装置ではなく、

現代社会そのものを象徴する装置として語られ始める。

役に立つ者、立たない者。

声の大きい者、沈黙する者。

責任を負う者、逃げる者。

出口を求めて進む彼らの行動は、やがて「生き残るための論理」から

「社会の縮図」をなぞる議論へと変質していく。




失敗したリメイク

本作は1997年にカナダで公開された『CUBE』のリメイク作品。

公開当時、小学生だったか中学生だったの時にレンタルビデオで観て衝撃を受けた作品だ。

どう考えても低予算なのにその設定の巧みさとスリル感、そして無機質な箱に閉じ込められたことによる人間の凶暴性との対比が見事で感動したのを覚えている。

それから時が経ち、何故かあの名作が日本でリメイクされた。嫌な予感しかないが、怖いもの見たさで鑑賞してみたが、案の定、酷い映画だった。

もはや原作は訴えてもいいくらいの出来映えである。

原作ではそれぞれのキャラクターの過去のシーンはない。

あくまで会話と表情だけで過去を語らせ、観客に想像させるという手法をとっていた。

それが密室の息苦しさを見事に表現していたが、本作のリメイク版では謎に主人公・菅田将暉演じる後藤の過去のトラウマシーンが加えられており、「余白を想像」させることなくえらく説明的である。

それに加え、登場人物たちのステレオタイプのキャラクター、特に越智というキャラクターは酷い。

コンビニでバイト生活を送り、世の中に不満がある若者であるが、えらく既視感満載でおまけに喧嘩も弱そう。それなのに後藤は一歩的にやられるばかりなのも観ていてしんどい。

吉田鋼太郎演じる安藤のキャラもなかなか鬱陶しいし、子供もいじめられてたのか謎に情緒不安定。

唯一、杏だけが冷静沈着で何を考えてるわからないキャラクターではあるが、最後に彼女こそが黒幕であるシーンが足されている。

原作ではそんなシーンはなかった。

キャラクターたちの個性を描こうとしてそれが逆に物語が非常にチープになってしまっている。

全てが既視感だらけの作品になっており、リメイクしたことでよりつまらなくなった典型的な作品と言えよう。




ツッコミどころ

素数のくだりや、音を出したら死ぬというゲーム的なアイディアはそのまま踏襲しつつも、何もしなくても箱は移動して元の位置に戻るというカラクリは中盤に明かされる。

過去のトラウマのシーンがキューブに映し出される。

あ、『今際の国のアリス3』はこれをパクったんだな。

後藤の弟が飛び降り自殺したシーンがキューブの壁に映し出されるシーン。

そのあとに千陽がなぜ部屋から飛び降りたのか行動理由が不明だ。

「弟の気持ちがわかる、嫌気がさした」と謎過ぎる言動に全くついていけない。

それに安東が越智に殺された話を同じ箱の中で内緒話をする後藤と千陽。

ってさすがにこの狭いキューブの中で内緒話って無理あるだろー。




訴えられてもおかしくないレベル

唯一感情を表さないキャラクターの杏。彼女がこのキューブの黒幕だが、原作にはそんなシーンはない。

別に足すならそれでいいんだけど、「じゃあなぜそんなことをしたのか」の理由も全く明かされないまま物語は終わってしまう。

そのくせ、過剰に付け加えられたシーンは酷く説明的で説教的。

もはや訴えられても仕方がないレベルでの改悪であり、なぜ主演者たちはこの作品に出ることをOKしたのか理解に苦しむほとである。

このレベルなら果たして映画にする必要があったのか?

演者やスタッフはこれを面白いと思って撮影に臨んだのか?

一体どういうメンタルでこの作品が出来上がったのか?

原作の緊張感や余白を持たせる展開、次第に崩壊していくキャラクター(黒人の警察官)、一見悪そうに見えた男(実は最後にはいいやつだった)、最後に生き残る知的障害をもった男とやっぱり原作はオリジナリティに溢れ、面白かったなと再確認させられた。

原作がやっぱり良かったと思われる時点で、

これはリメイクとしては大失敗である。




評価・受賞歴

本作は興行的には一定の成功を収めたものの、評価は大きく割れた。

評価点として挙げられるのは、

  • 日本映画らしいキャラクター配置
  • 豪華キャストによる安定した演技
  • クリーンで分かりやすい映像設計

一方で批判も多い。

  • オリジナルの持っていた「不条理さ」「無機質な恐怖」が弱い
  • 社会性やメッセージが前面に出すぎている
  • 登場人物が類型的で、意外性に乏しい

結果として、「密室スリラー」よりも「閉塞した日本社会を語るための箱」という印象が強く残る作品になった。

オリジナル版『CUBE』が持っていた「意味は分からないが、とにかく怖い」という感覚は薄れ、その代わりに「分かりやすく、説明される恐怖」へと変換されている。




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