2001年に公開された映画『GO』。公開された当時も鑑賞し、公開されてから25年がたったいま再鑑賞。
本記事ではネタバレ全開で感想考察レビューをお届けします。
基本情報
- 作品名:GO
- 公開年:2001年
- 監督:行定勲
- 脚本:宮藤官九郎
- 原作:金城一紀
- 上映時間:122分
- 製作国:日本
- ジャンル:青春/恋愛/ドラマ
- 主演:窪塚洋介、柴咲コウ
あらすじ

在日韓国人として生きる高校生・杉原。
ボクシングを通じて怒りを発散させながら、社会への反発と自尊心の狭間で揺れる日々を送っている。
ある日、日本人の少女・桜井と出会い、初めて「誰かと分かり合いたい」という感情を知るが、国籍・差別・暴力という現実は、彼の前に容赦なく立ちはだかる。
本作は、恋愛をきっかけに世界が変わっていく物語ではなく、
「変わらない世界の中で、それでも前に進もうとする個人」を描いた青春映画である。
公開から25年。時代が変わると・・・
何十年ぶりに『GO』を観た。今更説明不要の映画だ。
監督は行定勲、脚本は宮藤官九郎、主演は窪塚洋介と柴咲コウといういま考えるとバキバキなメンバー。
なんだろう、当時も思ったんだけど映像はダニー・ボイルとかデヴィッド・フィンチャーとか意識してるのかな?カットのテンポとかグレートパワーチキンレースなどやたらと走るシーンなど細かい編集が匂わせるこの印象は昔から変わらない。
いまでこそエンタメに関して言えば韓国はアジア代表的存在となり、映画、音楽共に日本のカルチャーをぶち抜いてしまった印象があるが(個人的な見解だけど)、この頃はやっぱりまだ在日に対して差別があからさまにあった時代じゃないかな。
いや、厳密に言えば今だって「日本人は~」「韓国人は~」といったステレオタイプを前提にした発言や、日常生活における細かい差別的言動が依然として存在することはする。
だけども公開当時よりは幾分、特に若者たちは声を荒げて攻撃することは無くなったように思える。前述したようにそれは韓国カルチャーの台頭が非常に大きく、ファッションも音楽も韓国に影響される人が増えていることが大きい。
韓国は対アジアではなく、対世界へと世界戦を広げたことで、非英語圏の映画やドラマが次々と大ヒットし、世界から韓国の評価が上がったことで日本人も韓国のことを認めざるを得なくなったのかもしれない。
現に、NETFLIX作品などを観ても日本よりもクオリティが高くね?と感じることが多い。
それに伴い、日本人の韓国に対する見方がガラッと変わっていったように思える。だからと言って差別や偏見がなくなるとは言ってないがそれでもこの『GO』の時代と今とでは明らかに状況は異なっているのは明白だ。
自分ではどうしようもない「血」によって苦しめられる話
窪塚演じる主人公の杉原は在日朝鮮人で日本生まれの日本育ち。中学までは民族学校に通っていたが、本人は冗談でバイリンガルと表現しているが、日本人から差別的な目線でみられていることも自覚しているようで、「自分とは何なのか」、自分の存在についてついて常に考えているが答えが出ずにモヤモヤしている。
杉原は荒れた高校生活を送っているうちに桜井に出会い、恋をする。
しかし桜井の親父は「韓国人や中国人の血は汚れている」と思ってる差別主義者。
娘は「韓国人や中国人の男と付き合ってはいけない」という偏った教育を受けて育ったため、何故かわからないけど生理的に韓国や中国人の男を怖がっている。
これがいまの時代なら特に気にならないんだろうけど、たった25年で価値観はガラッと変わっていってしまうって結構怖いことだよな。
お互い惹かれているが、国籍が日本人ではないという杉原のカミングアウトで杉原を拒否してしまう。
自分ではどうしようもない「血」によって苦しめられる、大筋はそんな話です。
2024年の『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』でも柴咲コウが「汚らわしい血」について怒ってるのが感慨深いですね。
自分は物体X
杉原の母親のセリフ、
「親のすねかじってる間はね、韓国も朝鮮も日本もないの。ガキなんだよガキ。」
そして杉原がラストで桜井に放つ言葉、
「どうして何の疑問もなく俺のこと在日なんて呼べんだよ。在日って呼ぶってことはなあ、俺がいつかこの国から出てくよそ者だって言ってるようなもんなんだよ。それわかって言ってんのか。
俺はときどきお前ら日本人をどいつもこいつもぶっ殺したくなるよ。お前ら俺が怖いんだろ。名前つけなきゃ不安でしょうがねぇんだろ。
なぁ。じゃあ俺はライオンな。ライオンは自分のことライオンだなんて思ってねぇからな。おめえらが勝手につけた名前じゃねぇか。調子こいて近づいてみろ。頸動脈に飛びついて噛みーーしてやんぞ。
名前なんて何だっていいんだよ。マムシでもサソリでも。エイリアンでもいいよ。だけど俺は自分のことエイリアンだなんて思ってねぇからな。俺は在日でもエイリアンでもねぇんだよ。俺は俺なんだよ。いや、俺は俺であることすら捨ててやる。クエスチョンだ。はてなマークだよ。物体Xだ。どうだこえーだろ。なぁ。何黙ってんだよ。何とか言えよ。なんなんだよ。チキショウ。うるせーな。だからなんなんだよ。チキショウ。」
引用がちょいと長くなってしまったが、このセリフこのがこの作品が言いたい全てではないだろうか?
あの人は黒人だ、白人だ、アジア人だ。
人は区別をしたがるが、当の本人からしてみれば同じ人間であり、痛みも苦しみも悲しみも喜びも同じ人間だから同じじゃないか。
区別と差別は異なるもの。
むしろ偏った教育で偏見や差別を刷り込まれた人間の方が私は怖い存在です。だってわけもなく人を怖がったりすることこそ意味ないことだから。
映画はポップに描かれていたが、なかなかテーマとしては重めです。
たまたま私は日本人に生まれ、日本人として育ったため、そう言った偏見や差別は受けてこなかったが、本作は観る人のバックグラウンドによってそれぞれ感じ方が変わってくるだろう。
キャラクターが魅力的
さて、本作は非常に出てくるキャラクターが魅力であります。
「めっちゃウンコしてえ」を日本語で連発して教師にぶん殴られる新井浩文は抜群ですね。これでこの俳優を覚えた人も多いのでは?
グレートパワーチキンレースで優勝した経験を持つ杉原の先輩の山本太郎もいい味出してます。
ボクシングやってた杉原の親父・山崎努も魅力的。
彼はもともと戸籍は北朝鮮で韓国籍に変えたことで弟から一切連絡が来なくなってしまった。「在日や日本人とかこだわるのがだせぇ」と息子の杉原から言われたことで考えが変わる。
「もっと外へ目を向けるべきだ。」
実際にそのあとの日本は変わりましたね。ちょっとづつだけど。
ジョンイル役の細山田隆人もいい。不良ばかりのキャラクターの中でも知性派で杉原の親友となる。
ちなみに彼は子役時代から活躍する俳優さんで『学校の怪談2』でも印象に残っています。
しかしそんなジョンイルが同じ在日の女の子(水川あさみ)を守って首を刺されてしまうシーン、なんで刺された時に誰も動かないのか?あれは超不自然なシーンです。周りの人がぼーっと突っ立てるだけって違和感でしかないんだけど。
まぁ、気になったのそのくらいで、本当に「在日への差別」というヘヴィなテーマをポップに描き、観客に考えさせるきっかけにもなった良質な作品だと思います。
行定監督は『今度は愛妻家』とかいい作品を撮られる監督さんなのでさらに今後も追っていこう。
この作品泣きましたよ。
評価・受賞歴
- キネマ旬報ベスト・テン 日本映画第1位
- 第25回 日本アカデミー賞
- 最優秀主演男優賞(窪塚洋介)
- ほか複数部門受賞
- 国内外で高い評価を受け、日本青春映画の代表作として語り継がれている









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