【映画】万引き家族|「家族」とは何かを突きつける是枝裕和の到達点【考察】

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映画「万引き家族」をモチーフにした家族が縁側に集う劇画・水彩画タッチのイラスト ミステリー

2018年に公開された是枝裕和監督作品にしてパルムドール受賞やアカデミー賞を総なめにした『万引き家族』。

本記事ではネタバレ全開で感想考察レビューしていきます。




基本情報

  • 作品名:万引き家族
  • 公開年:2018年
  • 監督・脚本:是枝裕和
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • 上映時間:120分
  • 製作国:日本
  • 主なキャスト:リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、池松壮亮




あらすじ

高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込んで暮らしている。

彼らの目当ては、この家の持ち主である祖母の初枝の年金だ。それで足りないものは、万引きでまかなっていた。

社会という海の、底を這うように暮らす家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、口は悪いが仲よく暮らしていた。

そんな冬のある日、治と祥太は、近隣の団地の廊下で震えていた幼いゆりを見かねて家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。

だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく──。




日本の社会問題を散りばめた力作

是枝監督の演出ってセリフもナチュラルでアドリブっぽいのが特徴だけど個人的にはちょっと鼻につくときもある。

だけど作品のテイストは好きでほぼ観てはいる。

今作は記念すべきパルムドール受賞作品。

さらにアカデミー賞を総なめにしたからみんなも知ってるだろう。

側から見れば貧乏だけど仲のいい家族。

だけど本当は「全員他人」という不思議な設定。

実際にあった、親の死亡届を出さずに年金の不正受給を続けていたある家族の事件から着想を得て構想10年近くをかけて作ったようです。

今作の「血が繋がっていれば家族なのか?」このテーマは「そして父になる」とも若干かぶっている。




底辺だけど暖かい奇妙なアンバランスさ

この家族は貧乏とか言うレベルではない

万引きで生計を立てているわ、子供はそのまま連れてきてしまうわ、窃盗はするわ、物乞いみたいな生活だわ。

まさに「底辺」。

だけども彼らは特に悪いことをしているという感覚があまりないようだ。

むしろ「生きていく為には仕方ないんだよ」という開き直りすら感じる。

リリーフランキーは子供に万引を教える最低な親父(血は繋がってないけど)。

そんなリリーフランキーがある夜、女の子を拾ってくる事からこの物語ははじまる。

父親としては最低なんだけど子供に対してはとても愛情があってそのアンバランスさは『凶悪』のリリーフランキーを彷彿させた(あんなにサイコパスじゃないけど)。

安藤サクラも一見冷たそうだけど子供が大好き。

自身が子供を産めない身体ということで世の中の母親を憎んだりしている部分もある。

樹木希林は今回銭ゲバ的な扱い。

あっさり寿命で死んで葬式する金がないからと言ってリリーフランキーに庭に埋められる。

子供達は拾われてきたけどそんなリリーフランキーと安藤サクラからの愛情を一身に受ける。

側から見れば金はないけど実に仲のいい家族に見える。

だけどやってることは犯罪なので何だか暖かい目でみてあげられない。

穏やかだけど実はやってることは狂気的というここのアンバランスさが実に秀逸。

だってこの家族はどう考えても最後にハッピーエンドなんてありえないんだもん。




家の汚さ=家族の精神状態

俳優陣はみんな良かったけど樹木希林は毎回テイストが一緒で「またか」という感じだった。

いい意味でも悪い意味でも汚いお婆さんを演じさせたら右に出るものはいないとは思うんだけど今回は特にうっとおしかった。

ものを食べながら話したり、なんというか観ていて不愉快なレベルだった…

この家族の家もとにかく汚い。

物もたくさんあってカオス状態だし風呂なんかもめちゃくちゃ不潔。

汚さにも種類があってただ単に古くなって汚くなっているか、掃除をしてないから汚くなったか分かれるがここは明らかに後者だ。

この家の汚さというのがこの家族にとっての日常であり、特に気にならないという精神状態こそがまさにこの映画を象徴している気がする。




家族を引き裂く女の子の存在

この底辺家族に一人の女の子が加わる。

この女の子が加わることによって家族の雰囲気はグッと変わる。

まるで本物の家族の様にとても暖かく観ているこちらも幸せな気分になってくる。

だけど女の子に捜索願なんかが出されたりして世間ではニュースになってしまう。

暖かい気持ちになったけど要はこの家族、女の子を誘拐しているわけだ。

感覚がどこかズレている。

家の汚さが気にならない理由もここで納得がいくわけだ。

前半は全体的にもいつもの是枝監督ののほほんとした雰囲気。

もしかしてこれで最後までいくのかな?なんて思ってたらあっさり途中で男の子が万引きで捕まってしまう。

男の子にならって万引をしようとした女の子を庇うために捕まることになったのだ。

そしてこれをきっかけに警察に樹木希林の死体遺棄や子供の誘拐がバレて家族がバラバラになってしまう。

まさに展開がガラッとかわった。

是枝監督のよくも悪くもダラダラいく感じとは違って段々とこの家族の秘密が検察官の話を通して徐々に明かされていく。

このミステリー要素がなんだか是枝監督には新鮮に思えた。

この女の子の存在は家族を変えると同時にこの関係性をも壊すものとなったわけだ。

ここに宗教的な解釈を求める人もいるようだ。色んな考え方ができてなかなか興味深い。




穏やかな狂気

検察官との話で徐々にリリーフランキーと安藤サクラとの関係性、樹木希林との関係性なんかが次々と明かされていく。

それまでどういうことなんだろう?とモヤモヤしていた部分が本当にさりげなくセリフによってサラッと明かされていく。

この伏線回収が実に巧み。

リリーフランキーの「教えられるものが万引きくらいしかない」というセリフや安藤サクラの「血が繋がってたら家族なの?」というサラッとしているけどかなりドキッとさせられるセリフのオンパレード。

ここの検察官からの追求と告白のシーンが特にドキドキしたし安藤サクラの涙のシーンなんてとても胸が痛くなった。

今回特に安藤サクラの抑えた演技が凄く印象的だった。

この映画を観て凄く怖いなと思ったのが自分達が悪いことをしているという自覚がないということ。そして彼らは彼らで一生懸命だということ。

この生活から脱却する為にはどうすべきか?ということは考えない。

金を作るベクトルがとことんズレた方に行っている。

その世界にどっぷり浸かってしまっている人達からすれば「それが日常」になってしまっている。それこそ狂気的だなと思った。

男の子の「学校へ行くやつは家で勉強できないからでしょ?」というセリフも印象的だ。

狭い世界で生きている人の価値観がよく現れている。

衝撃的なシーンはないが観た後はいつまでも余韻が残っている。

やっぱり是枝監督は凄い。才能を認めざるを得ない映画だ。




受賞歴

  • 第71回カンヌ国際映画祭にて、最高賞であるパルム・ドールを受賞。日本映画としては21年ぶりの快挙となった。
  • 日本アカデミー賞では最優秀作品賞をはじめ、監督賞・主演女優賞(安藤サクラ)など主要部門を多数受賞。
  • アカデミー賞(米)外国語映画賞の日本代表作品として選出され、国際的評価を決定づけた。
  • 世界各国の映画祭・批評家賞で高く評価され、「現代日本映画を代表する一本」として広く認知されている。

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