2008年に公開された映画『ブラインドネス』。
公開当時劇場で鑑賞しずいぶんと重い気持ちになったが、今回改めて鑑賞。
本記事ではネタバレ全開で感想考察レビューしていきます。
世界、失明。
基本情報
- 作品名:ブラインドネス(Blindness)
- 公開年:2008年
- 監督:フェルナンド・メイレレス
- 脚本:ドン・マッケラー
- 原作:ジョゼ・サラマーゴ「白の闇」
- 音楽:マルコ・アントニオ・ギマランイス
- ジャンル:パニック/スリラー/社会派ドラマ
- 上映時間:121分
- 製作国:日本・ブラジル・カナダ
- 主なキャスト:ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、伊勢谷友介
あらすじ

始まりは一人の日本人男性だった。突然目の前が真っ白になり完全に失明する謎の伝染病は、彼の発症を皮切りに爆発的な勢いで拡がっていく。
有効な治療法のない中、政府がとった政策は感染者の強制隔離だった。次々と収容所に集められていく人々。最初に失明した日本人とその妻、彼を診察した医者や売春婦、黒い眼帯の老人、幼い少年・・・。
そしてその中にただ一人”見えている”女がいた。なぜか発症を免れたが、夫の身を案じて紛れ込んだ医者の妻だった。収容所は軍によって厳しく監視され、食料や薬品の要求もままならず、衛生状態も日増しに悪化していった。感染者の不安はやがて苛立ちへと変わり、所内の秩序は崩壊してゆく。生き残るのは果たして誰なのか―?
答えがない
この映画を批判する人って「なぜ目が見えなくなったのか?」の説明が一切されてないことに対して言ってるけどもうめちゃくちゃお門違い。
この映画のことを謎解きミステリーとして観てはいけません。
・なぜ目が見えなくなったのか?
・なぜジュリアンムーアだけが目が見えるのか?
・そしてなぜ人々は突然目が見え出したのか?
この映画ではその疑問に全く答えてません。
視覚を奪うことによって浮き彫りにされる人間の本質をひたすらリアルに描いた物語だからだ。
人間の本質を描くのに理由づけなんて大して重要ではないかと。
ただのもしもシリーズとして観るのが一番でしょう。
「もしも世界のみんなが失明したらどういう行動をとるか?」と言うのがテーマなだけで、『スターウォーズ』でなんでフォースが使えるの?ってことを言ってるようなものです。それを言い出すのは野暮だと思います。
しかしこの映画不思議なことにキャラクターの固有名詞が出てこない。
「サングラスの女」とかエンドロールでも「最初に失明した男」とか。ここでも人間は単なる記号なんでしょう。伝えたいテーマが明確です。
見られることによって「人となる」
この映画を観てると本当に他人の目の重要性を感じさせてくれる。
人が見てるからいいことをしよう。
人が見てるから悪いことをしないでおこう。
人が見てるから服を着よう。
人が見てるから化粧をして身なりを整えよう。
普段人は外に出れば常に誰かしらの目にさらされている。
ある種、他人の目は自分の行動の引き金やストッパーとなるわけです。
この映画ではみんな失明してるので他人の目なんか気にならないわけです、裸で歩き回るわ、排泄物はそこらへんでするわ、レイプしちゃうわ。
顔が見えないネット住民が悪口を言う感覚なのかな。感覚が麻痺してしまっている。
「どうせ誰も見ていない。」
ここでは、「目」というのが時に人間の行動を抑制したり、行動に移させたりする象徴として描かれています。
豪華俳優陣
目が見えなくなる最初の人間として伊勢谷友介・木村佳乃なんかも出演していて、あまり違和感なかったと思います。日本人がこういう映画に出るって嬉しいですね。
『モーターサイクル・ダイアリーズ』で主演を果たしたガエル・ガルシア・ベルナルは今回めちゃゲスい役でしたね。『バベル』でも思ったけどゲス役似合うな。
そしてなぜか一人だけ目が見える主人公を演じるジュリアンムーアも頑張ってました。スッピンの感じもリアル。
人間の欲望をあぶりだすための作品
「食い物が欲しかったら女を差し出せ」
めちゃめちゃステレオタイプな悪役のガエル・ガルシア・ベルナル。
拳銃を持つ彼らは食料を独占し、食料が欲しければ女を差し出すことを要求。
夫達は当然行って欲しくない。だけど何もできない。
生きるために女達はガエル・ガルシア・ベルナル達の元へ行きます。めちゃくちゃにされる女達。
さらに死人まで出てしまう。
そのシーンがこの映画でもっとも胸が痛いシーンでした。
もう最悪ですね。胸糞系シチュエーションで目を背けたくなるようなシーンのオンパレード。
だけどジュリアン・ムーアは一人だけ目が見えるんだから対応できたしょ?と思うんだけど、さっきも言ったようにこの映画は「そこじゃない」。
あくまで「人間の本質をえぐるための作品」なので、その辺が観てる人の目線で評価はいかようにも変わってきそうです。
魔がさした夫が他の女とやっちゃうシーンも恐ろしい。だってジュリアンムーア見てるから。
そのことで責めないジュリアンムーア。人間は弱い生き物、許す心でしょうか。
1人だけ目がみえるジュリアンムーアは献身的に働きます。目がみえることはみんなに伏せて。
最後は教訓めいた終わり方です。ちょっと宗教的なニュアンスもあるのでしょうか。
だけどこれらが決して遠い話とは思えない。
実際、東北震災や熊本震災に乗じて犯罪を犯す人間がいたくらいだから、実際にこのような状況になったときには(仮にね)これに近いことは起きるんじゃないかな。
原作も読んだけど話はここで終わってます。
人間の本質的なものを捉えることを追求した作品で、人によっては嫌悪感が残る映画だろう。
是非一度はご覧ください。凄く重いけど。
評価・受賞歴
- 第61回カンヌ国際映画祭 オープニング作品
- 第21回東京国際映画祭 特別招待作品
- 極限状態における人間心理の描写が国際的に高評価
- ジュリアン・ムーアの演技が海外批評家から高い支持を獲得







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