基本情報
- タイトル:キャラクター
- 公開日:2021年6月11日(日本)
- ジャンル:サスペンス/スリラー/ミステリー
- 上映時間:125分
- 製作国:日本
- 配給:東宝
スタッフ
- 監督:永井聡(『帝一の國』『恋は雨上がりのように』など)
- 脚本:長崎尚志(原案も担当)
- 音楽:小島裕規(Yaffle)
- 主題歌:SEKAI NO OWARI「Character」
キャスト
- 菅田将暉:山城圭吾(主人公/漫画家)
- Fukase(SEKAI NO OWARI):両角(殺人犯)
- 小栗旬:清田俊介(刑事)
- 中村獅童:真壁孝太(刑事)
- 高畑充希:川瀬夏美(山城の恋人)
- 尾上寛之、山田裕貴、小島聖 ほか
あらすじ

売れない漫画家・山城圭吾(菅田将暉)は、正義感が強く“悪人を描けない”という致命的な弱点を持つ青年。ある日、偶然立ち寄った一軒家で一家殺害事件に遭遇。現場に居合わせたにも関わらず警察に通報せず、目撃情報を伏せる代わりに、その殺人鬼をモデルにした“リアルな悪”を描いた作品を世に出す。
漫画『34』は瞬く間に大ヒット。しかし、世間の注目を浴びる中で、犯人・両角(深瀬慧)が再び山城の前に現れ、自らを「作品のファン」と語る。
一方、警察は事件の真相に迫ろうとするが、やがて山城、両角、警察それぞれの思惑が交差し、事態は予想を超えた結末へと向かっていく──。
キャストと演技:深瀬慧の怪演がリアルすぎる
気持ち悪いやつがいるなぁ。
いや、褒めてるんです。殺人鬼・両角を演じるSEKAI NO OWARIの深瀬慧。
「なんだこの気持ち悪い男…」と思ったらまさかの本人。妙なナイーブさとゾッとする無邪気さが同居するキャラを、「演技してないように見える演技」で成立させており、これが非常に効いている。
一方、主人公の山城圭吾を演じる菅田将暉は安定感のある演技。だが、脚本上の問題か、やたらとお人好しで無鉄砲な行動が多く、ツッコミどころが多発。
観客としては「いや警察に連絡しろよ」「なんで単独行動するんだよ」とモヤモヤする場面が続出する。
ツッコミどころが多すぎて入り込めない
最大のネックは登場人物の行動がやたら鈍臭いこと。
例えば――
・最初の殺人現場、普通なら通報するでしょ?
・本屋で犯人に再会→警察に連絡せず追跡?なぜ?
・犯人が嫁を狙ってると分かっているのに、なぜ警察と一緒に行かない?
これらのシーンは、視聴者が「お前バカか?」と感じてしまう要素が満載。
中村獅童演じる警察もかなり悠長。主人公の焦りに対してあまりにも反応が鈍く、観ていてイライラが募る。
せっかくの良いキャスト、秀逸な映像、そして狂気のキャラクターが揃っているのに、登場人物がみんな頭悪い構成によってリアリティが崩れてしまっている。
セブン感と日本映画の壁
冒頭の一家惨殺シーンは、確かに不穏で印象的。どこか映画『セブン』を彷彿とさせるような陰鬱さとサイコ感が漂う。
しかしその後の展開が惜しい。犯人の不気味さを活かしきれず、全体的にテンポももたつき気味。
また、「殺人者をモデルにした創作が現実を引き寄せる」というテーマも面白いが、掘り下げが浅く、結局「普通の追いかけっこ」になってしまった印象。
小栗旬の退場の早さには驚いたが…
刑事役で登場する小栗旬が中盤であっさりと退場するのも意外だった。
彼の存在感やリアクションに頼っていた部分も大きかっただけに、そこから映画のリズムが崩れていった印象もある。
ラストバトルも盛り上がりに欠け、全体的に惜しい映画という位置付けにとどまってしまった。
総評:キャラは魅力的、でもストーリーが追いついていない
『キャラクター』は、ビジュアルも設定もキャストも非常に魅力的な作品だ。
だが、脚本とキャラの行動にリアリティが乏しく、視聴者の共感を置き去りにしたまま進んでいくのが非常にもったいない。
せっかくの深瀬慧の怪演、小栗旬の存在感、菅田将暉の演技力。
それらを活かしきれていない脚本の弱さが、作品のポテンシャルを削いでしまった印象だ。
コメント