トム・ハンクス主演の『オットーという男(原題:A Man Called Otto)』は、
孤独と喪失感に苛まれた男が、隣人たちの優しさに触れ、再び人生と向き合っていく物語。
派手な演出や劇的な展開はないが、観終わったあとにいつまでもここに残っている一本。
基本情報
原題:A Man Called Otto
公開年:2022年(日本公開:2023年3月10日)
上映時間:126分 ジャンル:ヒューマンドラマ/コメディ
脚本:デビッド・マギー(『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』など)
監督:マーク・フォースター(『プーと大人になった僕』など)
原作:フレドリック・バックマン『幸せなひとりぼっち』
あらすじ
オットー・アンダーソンは、町内一の嫌われ者で、いつも不機嫌な中年男性。曲がったことが大嫌いで、近所を毎日パトロールし、ルールを守らない人々に説教をするなど、面倒で近寄りがたい存在です。最愛の妻に先立たれ、仕事も失った彼は、自らの人生を終わらせようと考えていました。しかし、向かいの家に引っ越してきた陽気な女性マリソルとその家族が、何かと彼の生活に関わってくることで、オットーの人生は次第に変わっていきます。
感想
主人公のオットーは曲がったことが大嫌い。規則や法律が歩くような超堅物。

まぁ、彼の言いたいことはわかるけど生きづらいタイプの人なんだろう。ずっとイライラしてる。ある種のADHDだ。
否定してるわけじゃない。これもいまとなっては個性と言える時代だ。その個性を周りの人たちが認めてくれるかどうか。
今回は引っ越してきたご近所の夫婦が彼の理解者。こういう人たちがいるって幸せなことなんだよ。
しかしトムハンクスは老け顔だったね。
「フォレストガンプ」の時から老けてた。だからこの老人役が実にしっくりくる。
亡くなった嫁のことが人生の全てで生きる意味を見つけようとしない。だから妻が亡くなったことで自らの人生を終えようとしている老人。
一つのことに真っ直ぐ。
奥さんは自分の子を宿していたがオットーと乗ってたバスの事故によって失われてしまった。
とても悲しいできごとだ。
だが家族はできなかったが、近所が家族のように振舞ってくれた。おかげで彼らのお節介が彼を生かすことになった。
物語が進むにつれてあの面倒くさいオットーが段々と好きになっていくではないか。
間に挟まれる奥さんとの回想シーンがオットーと言う人物を立体的にしているからだ。
彼は彼なりの正義があってずっと戦ってる。だから嫌いにはなれない。
物語は老人の単純なラブストーリーだ。
だけどもっと深い。
「人が生きる意味とは何か」
「愛を失ったとき、人はどう立ち直るのか」
という普遍的な問いを投げかける哲学的な作品。
人は1人では生きていけない。
人と生きることで人は成長する。だから生きるとは人をも成長させるのだ。あなたが生きたことは決して無ではない。
『オットーという男』は、人生に疲れた大人にこそ観てほしい映画です。
失ったものに囚われながらも、再び誰かと繋がっていくその姿に、
「ああ、自分も誰かに救われていたんだな」と気づかされる。
そして今度は、自分が“誰かのオットー”になれるかもしれない。
なんだかジーンと胸が熱くなる硬派な映画でした。間違いなく、いい映画だと思います。
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