2025年3月からNetflixで配信されているドイツ映画『デリシャス(Delicious)』は、一見すると南フランスの美しい田舎の別荘を舞台にした優雅なサスペンス。しかし、その実態は…
基本情報
- タイトル:デリシャス(原題:Delicious)
- 配信元:Netflix
- 公開年:2025年(配信開始:2025年3月)
- 製作国:ドイツ
- ジャンル:サスペンス/心理ドラマ
- 舞台:フランス・田舎の高級別荘
- 監督:ネレ・ミュラー=シュテーフェン(Nele Mueller-Stöfen)
- 出演:
- ヴァレリー・パフナー(Valerie Pachner)
- ファーリ・ヤルディム(Fahri Yardım)
- カルラ・ディアス(Carla Diaz)
あらすじ

裕福なドイツ人一家が、夏休みを過ごすために南フランスの別荘を訪れる。
ある晩、家族は車で若い女性をはねてしまい、彼女を別荘に連れて帰ることに。
彼女は“ホテルで働いている”と名乗り、家族の一員のように振る舞い始めるが……
次第に明らかになる“正体”と目的。
静かな田園風景に、不穏な空気がじわじわと忍び寄るサスペンス。
ネタバレ感想:サスペンスからの“まさかの食人”へ
美しい映像、静かな空間、フランスらしい優雅さ…。ありがちと言えばありがちだけど雰囲気や入りはとてもよいですね。
だが、最後の最後で展開が唐突に変貌する。
「裕福な家族に入り込む謎の女性」という構図は、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』を彷彿とさせるが、本作が酷いのは、その先に明確な“目的”が描かれないことだ。
『パラサイト』は貧困が原因の社会構造における犯罪ということで動機が非常に明確だった。韓国は学歴社会で、優秀にも関わらず競争率が高いが故にその競争から脱落せざるを得なかった一家の犯罪。決して犯罪は肯定するべきではないが動機は非常に理解できる。
本作も動機は明確と言えば明確だが、あまりに現実離れし過ぎている。
彼女がこの家族に近づいた理由は、金でも地位でもなく、「ただ人肉を食べるため」。
なんじゃそりゃ…なぜ人肉を? 仲間と共にそういう集団でしたみたいに言われてもねぇ…。
観る側の頭には「???」が浮かび、あまりに説明不足で、結果的に「意味不明」「雑すぎる」と感じてしまう。
良かった点:映像美と緊張感の演出
否定的な感想が多くなるが、映像美は非常に完成度が高い。
田舎の空気感、サマーリゾートの涼しげな光、上流階級のインテリア、全てが画として成立している。
真上からの構図も美しいですね。色彩もいい。もはや映画じゃなくてPVでよくね?と思ってしまった。
また、前半の「異物が入り込んでくる」静かな恐怖感は、サスペンスとしての構成はよくできていると思う。
まぁ無理に褒めるとしたらこのくらい。
ダメだった点:動機が弱く、オチも雑
繰り返しになるが最大の欠点は、犯人の動機の薄さと描写の希薄さ。
観客が最も納得したい部分、つまり「なぜ彼女がこういう行動に出たのか」が明かされないまま、家族が次々と破滅していく。
その展開にリアリティも説得力もなく、「結局この映画、何がしたかったの?」という感想で終わってしまう。
タイトル『デリシャス』の意味とは?
「デリシャス=おいしい」という単語が、“人肉がデリシャス”というブラックジョークでひねりもクソもない。
いわばこれは“人間関係を食い荒らす女”とも見えるがいずれにせよ内容としては浅い。
雰囲気は良かったが脚本の力量不足が目立つ作品だった。
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