「高所恐怖症の方は絶対に観ないでください」――。
そんな忠告すら必要なサバイバル・スリラー映画『FALL/フォール』。
地上600メートルのテレビ塔に登って降りられなくなったどうしょうもねぇ2人の女性が繰り広げる、極限のスリルと心理戦。
その内容はシンプルながら、視覚と感覚にガツンとくる一本。
基本情報
原題:Fall
邦題:FALL/フォール
公開年:2022年(アメリカ)、2023年2月3日(日本公開)
監督:スコット・マン
脚本:スコット・マン、ジョナサン・フランク
ジャンル:サバイバル・スリラー
上映時間:107分
制作国:アメリカ
出演者: グレイス・キャロライン・カリー(ベッキー役) ヴァージニア・ガードナー(ハンター役) メイソン・グッディング(ダン役) ジェフリー・ディーン・モーガン(ジェームズ役)
あらすじ
フリークライミング中の事故で夫を亡くしたベッキーは、1年経っても悲しみに暮れていました。そんな彼女を立ち直らせようと、親友のハンターが老朽化した地上600メートルのテレビ電波塔への登頂を提案します。二人は頂上まで到達しますが、直後に梯子が崩れ落ち、地上に戻れなくなってしまいます。食料も通信手段もない中、極限状態でのサバイバルが始まります。
感想

のっけからケツの穴がムズムズする。これ絶対に高所恐怖症の人は無理でしょ。
まぁすげぇ簡単に言うと、
旦那を亡くしたベッキーが、アホな企画系YouTuberの友人ハンターに誘われて600mある塔の上に登って降りられなくなった話。
「600メートルの電波塔に登ろうよ!人生変わるって!」
ね?アホでしょ?
再生数を稼ぐために、そもそも立ち入り禁止エリアに入って行ってわざわざ電波塔に登ろうとする時点で自業自得だろと誰しもが思うでしょう。
「恐怖を克服する」とか適当なことぬかしといて動画の再生数稼ぎたいだけだろお前。
もちろん彼女たちは立ち入り禁止の老朽鉄塔に勝手に入り、命綱もなくよじ登る。
頂上まではたどり着いたが、すぐに梯子が崩落。
取り残された2人を待っていたのは、水も食料も尽きる極限のサバイバルだった。
制作側はこの状況にするのに必死…
先にこのシチュエーションを思いついて、塔の上に登るストーリーは後付けみたいな単純な展開です。
アホな女子たちが自ら地獄を招く“自業自得”の物語
まず断言したい。
この映画、高所恐怖症の人は観るべきではない。
開始10分で手汗びっしょり。下を見下ろすアングル、足がすくむような風音、ぐらつく鉄骨。
とにかく「落ちるぞ落ちるぞ……!」という恐怖の連続。
ただしストーリーそのものはシンプルで、むしろツッコミどころ満載のバカ映画でもある。
600mの塔に登って降りられなくなるなんて、「いや、そりゃそうなるだろ」としか言いようがない。
立ち入り禁止エリアに堂々と侵入し、自撮り棒片手に「イイネください!」と言わんばかりの配信モード。
その姿に多くの観客が「いや、助からんでも仕方ないわ…」と心のどこかで思ったに違いない。
スマホとドローンを駆使する“現代的サバイバル”描写は好印象
唯一褒める点と言えばスマホ、自撮り棒、ドローンなどの現代的なアイテムを使って試行錯誤する点か。あぁ、だからYouTuberという設定にしたのかな。
しかしね、肝心のラストが雑。
ハンターの死体の中にスマホを忍ばせ、塔から落とすまではなかなか見応えあったけど、そこからの救助シーンは全く描かれていない。
気づいたら親父さんが駆け付けててめでたしめでたしって…
そこ一番見たかったのに!
せめてラスト5分、救出のドキュメントを加えるだけでも印象は変わったはず。
“タワーに登る”アイデア先行型映画だが、それでいい
本作は、「高い塔に取り残される」というアイデアを最初に思いつき、そこに無理やりストーリーをくっつけた感が否めない。
トータル冷や冷やしながら楽しめたから良かったんだけど心臓にはよくありません。
600mの高さから人間が追い詰められていく恐怖とスリルをリアルに描けているかどうかという点においては成功してると思う。
極限状況を、観客自身が体験しているかのような演出はお見事。
「ウォーキング・デット」に出演したジェフリー・ディーン・モーガン、やっぱ男前なだなぁ。