Netflixで2024年1月から配信された映画『雪山の絆(原題:La sociedad de la nieve)』は、1972年に実際に起きたアンデス山脈での飛行機墜落事故を元にした壮絶なサバイバル・ドラマです。
リアルな描写と、倫理的な葛藤、極限の人間ドラマが詰め込まれており、見終わったあと、しばらく動けなくなるほどの衝撃を受けた。
映画を観て久々の感覚…
基本情報
原題:La sociedad de la nieve
監督:J・A・バヨナ(『ジュラシック・ワールド/炎の王国』『永遠のこどもたち』)
原作:パブロ・ビエルチのノンフィクション小説
上映時間:145分
製作国:スペイン、アメリカ、ウルグアイ、チリ
ジャンル:ドラマ/サバイバル レーティング:PG-12
配信:Netflix(2024年1月4日より)
あらすじ
1972年、ウルグアイのラグビー選手団を乗せたチャーター機がチリへ向かう途中、アンデス山脈の氷河地帯に墜落。乗客45名のうち29名が生存しましたが、極寒の高地で食料も通信手段もない状況に置かれます。彼らは生き延びるために究極の選択を迫られながら、72日間にわたる過酷なサバイバル生活を送ることになります。
のっけから圧倒的絶望。

まず描かれるのは、圧倒的な「無力感」。
墜落した瞬間から始まる極寒の地獄。
夜はマイナス30度にもなり、眠ることすら命がけ。何日も何も食べられず、雪を舐めて飢えを凌ぐ姿が痛々しいほどリアルな超ハードな環境。
こんな状況でサバイバルって、
実話のサバイバル系でいやだなーと思ったのは「127時間」以来久々。
正直、「LOST」や「ウォーキングデッド」のがなまっちょろく思えるほどハードボイルド。
現実はフィクションより奇なり。
そんな中、最も衝撃的だったのが「人肉を食べる」という選択。
初めは誰もがためらう。
しかし、飢えと寒さに耐えきれず、亡くなった仲間の遺体を食料とせざるを得なくなる。
地獄でしょ。
最初は顔が分からないように解体し、食べる瞬間は目を閉じるような描写。しかし次第に、それすらも「日常」になっていく様が恐ろしくもあり、どこか納得してしまう自分もいて、観ている側の倫理観を揺さぶっていく。
生のまま食べたのかな?その辺はもっと詳しく知りたかった。
腹壊すよね?実際には火は使えたのか? その辺りはもっと詳しく描いてほしかったと思う部分はある。
実話だからこそ感じる「人間の尊厳」と「絆」
この物語が「実話」であるという事実が、さらに重みを加えていく。
驚くべきは、この状況下でも彼らはほとんど仲間割れしなかったということ。
むしろ亡くなった仲間が「自分が死んだら食べてくれ」と語り、遺体が贈り物として扱われる。その精神的な高みに、ただただ言葉を失う。
人肉を拒否する仲間にこっそり食料を渡す者もいれば、何かの役割を担って皆を支えようとする者もいた。
死と隣り合わせの状況でこそ見える人間の美しさが描かれていて、自分もそうありたいなと思ったり思わなかったり。
映画を観終わったあと、知りたくなった「その後の人生」
個人的にいちばん気になったのは、彼らが救出されたその後。
果たして、72日間の地獄を生き延びた彼らは、どうやって普通の生活に戻ったのか?
心の傷、罪悪感、家族との再会……
そのドラマも別の映画になりそうなくらい濃厚だと思う。実際ネットで調べてもほぼ彼らのその後の人生は出てこない。
映画の最後に数名のその後が短く紹介されてるが、もっと詳しく描いてくれても良かった。なんかモヤモヤする。
『雪山の絆』は心に傷を残すけど、観るべき一本
正直、もう一度観たいかと言われると「完全にNO」。
でも「観てよかった」と心から思える映画なのは間違いない。
映画というのは、たった2時間で他人の人生を「疑似体験」できる稀有なコンテンツ。
この作品はまさにその極致。観ているだけで寒くて痛くて苦しくて、それでも目が離せなくて、最後には深い感動が押し寄せる。
家族、子供が一緒だったら…考えたくもない擬似体験だけど一度は考えるには重要なテーマではある。
人間の尊厳、仲間との絆、命の重さ、そして生きるということの意味を、あらためて考えさせられます。Netflixで観られる今、重いけど絶対に観ておくべき一本だ。