料理映画と聞けば、我々グルメ好きや料理人志望者にとってはそれだけで期待が膨らむ。
だが、この『二つ星の料理人』という映画。観終わったあとに残ったのは、芳醇な余韻でも、心震える感動でもなかった。
この主人公、料理人として「一番嫌いなタイプ」だった。
基本情報
邦題:二つ星の料理人
原題:Burnt
ジャンル:ドラマ/料理/ヒューマン
製作国:アメリカ・イギリス合作
上映時間:101分
日本公開日:2016年4月
アメリカ公開日:2015年10月30日
■ スタッフ
監督:ジョン・ウェルズ(The Company Men, August: Osage County など)
脚本:スティーヴン・ナイト(イースタン・プロミス, ロック, ダーティ・プリティ・シングス)
製作:スタジオカナル、ザ・ワインスタイン・カンパニー
■ キャスト
ブラッドリー・クーパー(アダム・ジョーンズ 役)
シエナ・ミラー(エレーヌ)
オマール・シー(ミシェル)
ダニエル・ブリュール(トニー)
アリシア・ヴィキャンデル(アンヌ=マリー)
ユマ・サーマン(シモーヌ)
エマ・トンプソン(ロザリー医師)
あらすじ
かつてパリで二つ星を獲得した天才シェフ、アダム・ジョーンズ(ブラッドリー・クーパー)。
だが成功に溺れ、ドラッグと酒に溺れた彼はすべてを失う。
やがて更生した彼はロンドンに現れ、かつての仲間たちを集めて新たなレストランを立ち上げ、三つ星を目指す。
ミシュラン三つ星を目指すのが、そんなに偉いか?

料理人ってのは客に美味い料理を食わせたいから料理を作るんじゃないのか?
この主人公が考えてるのはミシュラン三つ星を取ることばかり。え、なにそれ…
ミシュラン三つ星を取りたいがために料理をしていて客の方のことなんて全然見ちゃいない。こんなの論外でしょ。これの一体どこが「シェフとしては最高」なのか?
結果なんてのは後からついてくるもの。
ミシュランなんてのは審査基準があってそれに合致してるかどうかだけの問題。
料理をする動機がミシュランで三つ星を取りたいからという時点で料理人が料理を作る本質から外れてしまってる様に思えてならない。
三つ星はあくまで結果であって、目的ではないはずだ。
それを目的にしてしまった瞬間、料理はただの手段となり、魂を失う。
「評価されるために料理する」という姿勢に、職人としての誠実さは感じられなかった。
パワハラ・暴言・自己中——まるで厨房のモンスター
そしてなんと言ってもこの主人公、むやみやたらとキレ過ぎ。
「ディナーラッシュ」見た時も同じ事思ったんだけどヨーロッパの厨房ってあんな罵声とぶもんなのかな?
平目を無駄にしたからといって皆んなの前で「平目に謝れ!」と従業員にパワハラ発言するくせに自分は皿投げまくって一体何枚無駄にしてんだよ。
うまくいかなかったら喚き散らして物に当たって本当こいつ幼稚園生並みのレベル。
部下ができないのは上司の責任ですよ。
料理人としてもなんだかズレてるし人間的にも未熟すぎて痛々しすぎるレベル。
ただカッコ良さげにふるまる非常に薄っぺらいタイプです。
料理が見たいのに、ラブロマンス?
シエナミラーもなぜああまで罵倒されてあの男について行くのが理解不能。
それに余計なラブロマンスいらん。
キスシーンの時に魚をビニール袋みたいなのに入れてバサッと地面に落とすんだけどありえないでしょ。食材だよ?
食材は料理人にとって命だろ?
肝心の料理シーンはほんのわずか。
テンポは良いのでそれなりに緊迫感はあるがもっとじっくり完成した料理を見たかったのが本音。
何かこの店のスペシャリテを生み出す話とかあれば尚良かったんだけどそれも特にないまま終わってしまった。
一体この店の何が凄いのかがいまいちわからない。
まとめ|ミシュラン三つ星に惑わされるな
これだけ三つ星に拘る凄い料理人みたいな描かれ方してるけどやっぱり最後まで主人公が好きになれなかった。
やがて自分の過去の行いの報いを受け、仲間の大事さに気づくというかなりベタベタな感じで映画は終わる。
やっぱり信頼、謙虚。
一流の料理人になるにはこれが一番の近道なんだな。
ミシュランが凄いって言ってるから凄いじゃない。凄い店だからミシュランが評価しただけのこと。評価に踊らされるなかれ。
もしあなたが料理人なら、自問してみてほしい。
「自分は誰のために料理を作っているのか?」と。
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