映画「ビューティフル・マインド(A Beautiful Mind)」は、実在した天才数学者ジョン・ナッシュの人生を描いた伝記ドラマで、2001年のアカデミー賞作品賞を受賞した名作です。
ラッセル・クロウ主演、ロン・ハワード監督という「シンデレラマン」と同じ黄金タッグによる感動作です。
基本情報
- 作品名:ビューティフル・マインド(A Beautiful Mind)
- 公開年:2001年(日本公開:2002年3月)
- 製作国:アメリカ
- ジャンル:伝記ドラマ/心理サスペンス
- 上映時間:135分
- 監督:ロン・ハワード(『アポロ13』『シンデレラマン』)
- 脚本:アキヴァ・ゴールズマン
- 原作:シルヴィア・ナサー著『A Beautiful Mind ジョン・ナッシュの栄光と悲劇』
- 音楽:ジェームズ・ホーナー
- 製作:ブライアン・グレイザー、ロン・ハワード
- 配給:ユニバーサル・ピクチャーズ
👥 主なキャスト
- ラッセル・クロウ … ジョン・ナッシュ(天才数学者)
- ジェニファー・コネリー … アリシア・ナッシュ(ジョンの妻)
- エド・ハリス … パーチャー(政府のスパイ)
- ポール・ベタニー … チャールズ(大学時代のルームメイト)
- クリストファー・プラマー … ローゼン博士(精神科医)
- ジョシュ・ルーカス … ハンセン(同僚)
あらすじ

1947年、天才的な頭脳を持つ若者ジョン・ナッシュ(ラッセル・クロウ)は、名門プリンストン大学の大学院に入学する。
しかし、彼は社交が苦手で、常に「独自の理論」を探求していた。
やがてナッシュは経済学で画期的な「ゲーム理論」を完成させ、ノーベル賞級の功績を挙げる。ところが、彼の頭の中ではもう一つの世界が動き出していた。
政府のスパイ任務に巻き込まれ、暗号解析の極秘ミッションに従事するナッシュ。
だが次第に現実と妄想の境界が曖昧になり、彼の精神は崩壊していく。妻アリシアはそんな彼を支え続けるが、ナッシュの幻覚は次第にエスカレート。
やがて彼は、自分の「友人」や「任務」すら幻だったことに気づく――。
頭のいいグラディエーター
かつて一度は観たことあると思うんだけどこのインパクトのないタイトルだけ聞いても見事に内容を覚えていない。
ラッセル・クロウ主演と言われてもピンときてないのでよっぽど印象に残ってない作品ということになる。
なので今回は初見のつもりで鑑賞したんだけどこれが想像以上に素晴らしい作品で感動すらしてしまった。
実際にいた天才数学者であるジョン・ナッシュをラッセル・クロウが演じてるんだけど一つだけ気になる点と言えば、ラッセル・クロウの身体つきが良すぎて「天才数学者っぽくない」ということくらいだ。
運動してないはずなのにTシャツ姿は完全に「グラディエーター」そのもの。
ただの偏見かもしれないけどもっとヒョロヒョロの人が演じた方が自然かと思った。
天才が故の代償
ジョン・ナッシュの性格だけど「脳みそは人の2倍だけどハートは半分」という自分を卑下したセリフの通り。
日本の原爆について「快挙に代償はつきものだ」とさらりと言ってのけるあたり、学者としては優秀なんだろうけど人として大きく欠けてるものがあるのかな。
セックスの誘い文句にいきなり「体液の交換をしよう」って軽いサイコパス感を出す辺りにもそれが現れている。
けどその言い回しちょっと面白いな。
女性はドン引きだろうけど。
だけど結局彼は精神分裂症(統合失調症)だった事が物語の後半にわかりちょっと複雑な気持ちになった。
そうなると政府の仕事もただの妄想でエド・ハリスも存在しないんだろうなと思ってたらまさか学生時代からの友人であるチャールズさえも幻覚だったとは。
実は、ナッシュが信じていたスパイ活動やルームメイトのチャールズ、その姪の少女マーシーなどはすべて幻覚。
彼が政府のために暗号を解いていたと思っていた任務も、すべて統合失調症による妄想だったのです。
観客も彼と同じ目線でこの世界を見ていたため、途中で「すべてが幻だった」と明かされる。
劇中でも触れていたけど友人との楽しかった思い出が全て本当はなかったと知った時の本人の気持ちって地獄なんだろうな。
せめて奥さんは本物で良かったよ。
テーマとメッセージ
ナッシュは知性では世界を解き明かせたが、人生を支えたのは愛だった。
「この世界で本当に美しいものは、論理ではなく愛だ。」
というメッセージが作品全体を貫いています。
ラストで彼が妻アリシアに向けて語る言葉は、この映画史上に残る名シーンのひとつ。
「私の人生のすべての答えは、君なんだ。」
統合失調症
幻覚で出てくる女の子が歳をとらない事に気付きようやく幻覚と受け止めた様だけど果たして精神分裂症ってそんなにリアルなのだろうか?
考えたら幻覚と現実の違いがわからなくなるってかなり恐ろしいよね。
何となくこの二年前に公開された「ファイト・クラブ」を思い出した。
現実のジョン・ナッシュは30年に渡ってこの病気と闘ったそうだ。
最後は奥さんと乗った車が交通事故に遭い二人とも死亡したらしい。
天才って他の人と違うって言うけど「自分の素直な感情を他人と歩調を合わせる事に苦痛を感じる」と述べるジョン・ナッシュは果たして幸せだったのだろうか?
とても孤独に見えるけど感性が異なるのでそれもまた勝手で失礼な話なのかもしれない。
演技と演出
何と言ってもラッセル・クロウ、彼の演技は圧倒的。
『グラディエーター』での勇ましさとは真逆の、内面の闇と苦悩を体現しています。
発症前後の微妙な表情の違い、目の焦点が合っていない、口元の震えなど、細部までリアルでした。
ラッセル・クロウの身体つきの違和感以外。
アリシア役のジェニファー・コネリーは本作でアカデミー助演女優賞を受賞。
「愛がすべてを包み込む」というテーマを象徴する存在で、「レクイエム・フォー・ドリーム」で公開ディルドまでされるスゴイ女優さん。
この映画を観ると、「天才とは何か?」を考えさせられる。
頭脳明晰でも、心が壊れれば世界は崩れる。
しかし、壊れた心を支えたのは、論理でも知識でもなく愛だったという普遍的なテーマ。
科学と愛情、理性と感情。
そのバランスが人間の「美しい心(Beautiful Mind)」なのだと感じさせてくれる。
では次はこの映画の監督であるロン・ハワードとラッセル・クロウが再びタッグを組んだ「シンデレラマン 」でも観るとしようか。
受賞歴
- 第74回アカデミー賞:
作品賞/監督賞(ロン・ハワード)/助演女優賞(ジェニファー・コネリー)/脚色賞 受賞 - ノミネート:主演男優賞(ラッセル・クロウ)ほか合計8部門
ゴールデングローブ賞でも作品賞・主演男優賞など多数受賞。
まさに2001年を代表する社会派ヒューマンドラマです。
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