考察『サイドウェイ』必ずワインが飲みたくなる!美男美女が出てこないけど不思議とずっと観てられるロードムービー

スポンサーリンク
スポンサーリンク
アメリカ映画


ワインを愛する冴えない中年男と、女好きの俳優。

まるで正反対の二人が、カリフォルニアのワインカントリーを旅しながら、自分の人生と向き合っていく“人生の味わい”を描いたアメリカのロードムービー映画『サイドウェイ(Sideways)』。

2004年に公開されて以来、世界中のワインラバーを虜にし、“サイドウェイ効果”としてワイン業界にも影響を与えたこの映画。

笑えて、沁みて、そして少し酔わせてくれる——
まさに人生のような一本だ。

本稿ではネタバレ全開で感想・考察していきます。

基本情報

  • 作品名:サイドウェイ(Sideways)
  • 公開年:2004年(アメリカ)
  • 日本公開:2005年4月23日
  • 製作国:アメリカ
  • 上映時間:126分
  • 監督:アレクサンダー・ペイン(『アバウト・シュミット』『ファミリー・ツリー』など)
  • 脚本:アレクサンダー・ペイン、ジム・テイラー
  • 原作:レックス・ピケット『Sideways』(2000)
  • 音楽:ロルフ・ケント
  • 配給:20世紀フォックス(日本配給:20世紀フォックス映画)
  • ジャンル:ヒューマンドラマ/ロードムービー/ワイン映画

主なキャスト

  • ポール・ジアマッティ … マイルス・レイモンド(離婚歴のある小説家志望の男)
  • トーマス・ヘイデン・チャーチ … ジャック・コール(俳優/マイルスの親友/結婚間近)
  • ヴァージニア・マドセン … マヤ(ワインに詳しい女性/マイルスの心を癒す)
  • サンドラ・オー … ステファニー(ジャックの恋人/ワイナリー従業員)

あらすじ

離婚してくすぶる中年作家・マイルス(ポール・ジアマッティ)は、

俳優の親友・ジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)の結婚を前に、

1週間のワインロードトリップに出かける。

舞台はカリフォルニア州サンタバーバラ近郊のワインカントリー。

目的は“最後の独身旅行”と称した飲み歩きの旅。

しかし、マイルスは繊細なピノ・ノワールを愛し、一方でジャックは女と酒に溺れるタイプ。

真逆の性格を持つ二人の旅は、やがて予期せぬ方向へと“サイドウェイ(脇道)”に逸れていく。

やがて出会う2人の女性――

ワインをこよなく愛するマヤ(ヴァージニア・マドセン)と、奔放なステファニー(サンドラ・オー)。

彼女たちとの出会いが、人生に迷う二人の男の“味わい”を少しずつ変えていく。

バツイチオッサンの恋愛克服ロードムービー

凄く簡単に言うとオッサン二人のロードムービー。

一人は結婚一週間前にハメを外そうとしてる落ち目の俳優、もう一人は前妻に未練タラタラのワインオタクのバツイチ。

この二人のオッサンがワインを飲みまくりながら一週間旅をするっていう話なんだけど、特に何があるというわけでもないのに不思議とダラダラと観れてしまうのは、この二人の空気感が自分と合ってるからか。

話の主となるのはバツイチオッサンが妻を忘れて恋愛克服するまで。

このオッサンだいぶ冴えない上にネガティヴ。妻への劣等感から浮気し、そのせいで離婚。

以来前妻を引きずりまくりで恋愛にも消極的。

小説を書いて出版しようとするけど不採用。

旅中に前妻の結婚を知るという散々なオッサン。

旅先のレストランで美人のマヤに出会いバツイチオッサンは奮闘するんだけどもうグダグダ。

対してもう一人の落ち目の俳優は無神経な上に自由奔放で結婚控えてるくせに美人でもないアジア人の女をナンパしてゲット。

こういう時ってズボラだけど適当な奴がいい思いしたりするんだよな…

真面目な奴が損をするのは世の常か。

なんとかバツイチオッサンはマヤと一夜を共にするんだけどズボラオッサンが結婚することを知って同類と思われキレられる。

旅を終え、ズボラオッサンはめでたく結婚。

バツイチオッサンは相変わらず冴えない毎日。そんなある日マヤから留守電が入っていることに気づき、意を決してマヤに会いにいく。

そしてマヤの家のドアをノックする手元のシーンでエンドロール。

このラスト、実に潔くて好きだ。

結果はどうであれ「オッサンが立ち直って前に進んでいく」と言うのが物語の核なのであえてあそこで終わらすのがいい。

まぁきっとこの後二人は結ばれるんだろうけどそこまで描き切らなかったのが逆に想像力を掻き立てられる。

テーマ:ワインは人生のメタファー

『サイドウェイ』は単なるグルメ映画ではなく、ワインを通して人生を語る映画。

特に印象的なのが、マヤ(ヴァージニア・マドセン)のこのセリフ:

「ワインは生きているの。
呼吸をして、歳を重ねて、そしていずれは死んでしまう。
だからこそ、ワインを飲むたびにその瞬間を大切にしたいの。」

この言葉に、主人公マイルスは自分の人生を重ね合わせる。

彼が愛するピノ・ノワールは繊細で、育てるのが難しく、扱いを誤るとすぐに駄目になる。
まるでマイルス自身のよう。

一方で、ジャックは奔放で、人生を陽気に生きようとするカベルネ・ソーヴィニヨン型。

この2人の対比が映画全体を支えている。

舞台:カリフォルニアのワイン・カントリー

ロケ地はサンタ・イネズ・バレー(Santa Ynez Valley)。

映画のヒット後、この地域は世界的なワイン観光地として一気に人気が爆発してます。

ナパ・ソノマのワインがこの時期から「サイドウェイ効果(Sideways Effect)」と呼ばれる社会現象を起こしました。

特にこの作品によって、ピノ・ノワール(Pinot Noir)の消費量が激増。

一方、劇中で「メルローなんか飲まねえ」と言い放ったことで、メルローの売上が実際に落ちたという逸話も残っています。

特に山場はないけど何かいい

基本はコメディタッチのヒューマンドラマなのでちょいちょい笑えるシーンがある。

落ち目の俳優が「お前だって生暖かい所に◯◯◯入れたいだろ」とバツイチオッサンに言うシーンでそれを聞いていた爺さんが「おい!そんな大声で言う事じゃないだろ!」と怒るシーンには笑ってしまった。

この落ち目の俳優、デリカシーのかけらもねぇ。

さらに人妻の家に財布を取りにいくシーンで人妻の旦那が素っ裸で走ってくるのにも笑ってしまった。

完全に男性器出てたけどあれは映倫的に大丈夫なのか?

この映画って山場らしいものがこれと言ってないんだけどそれなのに2時間みせるのは監督の力量なのかな。

美男美女は出てこないしある意味リアルかも。

だけどこの映画を観ると確実にワインが飲みたくなる。うん、たまにはこういう映画も悪くないかも。

監督:アレクサンダー・ペインの演出

ペイン監督は、アカデミー賞脚色賞を受賞。

過剰な演出を排し、自然光とロケ撮影で“日常の美しさ”を捉えています。

旅の中で変わっていく友情・恋・挫折をワインの熟成過程になぞらえる巧みな構成。

セリフや構図の隅々まで、“人生の味”が感じられる演出です。

受賞歴

  • 第77回アカデミー賞
     🏆 脚色賞受賞(アレクサンダー・ペイン/ジム・テイラー)
     🎬 作品賞・監督賞・主演男優賞・助演女優賞ノミネート
  • ゴールデングローブ賞
     🏆 作品賞(ミュージカル・コメディ部門)受賞
     🏆 脚本賞受賞
  • 全米批評家協会賞/ニューヨーク映画批評家賞/ロサンゼルス映画批評家賞など多数受賞

コメント

タイトルとURLをコピーしました