映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート(The Wolf of Wall Street)』は、実在の株式ブローカー ジョーダン・ベルフォート の半生をもとにした、マーティン・スコセッシ監督によるアメリカ映画です。
レオナルド・ディカプリオが主演を務め、麻薬・金・女・権力・欲望にまみれた金融業界の狂乱を、ハイスピードで描ききった傑作です。
本稿ではネタバレ全開で感想・考察していきます。
基本情報
作品名: ウルフ・オブ・ウォールストリート(原題:The Wolf of Wall Street)
公開: 2013年12月25日(アメリカ)/2014年1月31日(日本)
製作国: アメリカ
上映時間: 179分
監督: マーティン・スコセッシ
脚本: テレンス・ウィンター(『ボードウォーク・エンパイア』)
原作: ジョーダン・ベルフォート自伝『The Wolf of Wall Street』
音楽: ハワード・ショア
配給: パラマウント・ピクチャーズ
🎭 主なキャスト
- レオナルド・ディカプリオ … ジョーダン・ベルフォート
- ジョナ・ヒル … ドニー・アゾフ
- マーゴット・ロビー … ナオミ・ラパグリア(ジョーダンの妻)
- カイル・チャンドラー … パトリック・デナム(FBI捜査官)
- マシュー・マコノヒー … マーク・ハンナ(ジョーダンの師)
- ジョン・バーンサル、ジャン・デュジャルダン、ロブ・ライナー ほか
あらすじ

1980年代後半。
ニューヨークのウォール街にやってきた若き株式ブローカー ジョーダン・ベルフォート(レオナルド・ディカプリオ)は、株の売買で金を稼ぐことに魅了される。
リーマン・ショック以前、バブル景気に沸くウォール街では、金こそすべて。
ジョーダンは“ペニー株”と呼ばれる低価格株を売りまくり、莫大な手数料を得る手法で成功。
やがて彼は自らの会社「ストラットン・オークモント」を立ち上げ、従業員たちにカネと女とドラッグを与えて煽りまくる。
クライアントをだまし、株を操作し、裏で麻薬パーティを開きながら、
彼らの快楽と破滅の物語は、やがてFBIの捜査の手によって崩壊へと向かう――。
実話を基にした破天荒な成功と転落
この映画の主人公ジョーダン・ベルフォートは、実在の人物。
彼は1990年代に証券詐欺で有罪となり、22か月の服役後に回顧録を出版。それが本作の原作となりました。
結構事実に即してる部分もあるっていうから驚きです。
実際の彼は出所後、講演家・作家として活動しており、映画ではレオナルド・ディカプリオ本人が本人役と対面するシーンまで存在します。
つまりこの映画は、「詐欺師が自らの悪行をエンタメ化した稀有な成功例」でもある。
映画自体は三時間もあるんだけど観始めたら止まらない。
逐一衝撃的なシーンがあってそれを抜群のセンスとテンポでみせていくスコセッシ監督の腕は超一流なんだなと再確認した。
「ゲス」って言葉が一時期日本で流行ったけどこの映画観てからその言葉を言いましょう。
この映画に出てくる奴らこそが正真正銘のゲスだよ。ゲスレベルが違う。
けれど「金、ドラッグ、セックス」という最もシンプルな人間の欲望の範疇にいるので観ていてそんなに引かなかった。
実は一番のゲスは親友のメガネ君

ディカプリオのキレっぷりだけが印象に残るけど実は親友のメガネ君の方がヤバイと思う。
金に目が眩んで絡んだこともないディカプリオの給与明細を見ただけで家族もいるのに会社をその場で辞めたり、従兄弟と結婚して子供2人も作るわ、みんなの前で自慰行為しだしたり、生きてる金魚丸呑みしたりディカプリオも引くくらいヤバイやつ。
実はこいつが一番のゲスかも。
しかも見た目も抜群にキモい。生理的に無理な人多そうだ。
私は途中でだんだん見た目が面白くなってきてしまったけど。
なんだよ、あのダサい眼鏡は。
でも「悪いことたくさんやってきたから」ってセリフがあって一応自覚はあるってことで完全なサイコパスではないようです。
会話のシーンが秀逸
冒頭の伝説的な人物とレストランで会話するシーン。
「俺らに必要なのはリラックスだ。
お前は週に何回オナニーをする?
俺は日に2回は抜く。
頭脳と下半身のバランスが大事なんだ」
という謎の持論が意外と説得力があったのが面白かった。
なんじゃそりゃ?からのだんだんとビジネス話に持っていく巧みな話術。
なるほど、ついつい聞き入ってしまったがこの会話こそがこの映画の核となる要素。
この「会話」こそが次々と株を売りつけていく彼らの武器である。
ディカプリオの演説のシーンも尺としては凄く長いけど見入ってしまった。
会話の緩急のつけ方が上手く編集のテンポもいいのでずっと観れる。
アクションドンパチはないのに三時間観れるのはこういうことなんだな。
テーマ:「金は人を幸福にするのか?」
それから所々挟むエロシーンのオンパレード。
社内セックスや飛行機貸し切っての上空ドラッグ乱行パーティなど。
本作は単なる成功と堕落の物語ではない。スコセッシが描きたかったのは、「金が人間のモラルをどう侵食するか」というテーマ。
ジョーダンは最初こそ夢を持っていたが、次第に「金を稼ぐこと」自体が目的になり、社員を煽り、客を騙し、ドラッグに依存していく。
観客は彼を最低な男と思いながらも、どこかでその狂気に魅了される。
それこそがスコセッシの狙いであり、「人間の本能的欲望」をあぶり出す仕掛けなのでしょう。
マーゴット・ロビーという衝撃
この作品でもう一つ特筆すべきは、マーゴット・ロビー(ナオミ役)のブレイク。
当時23歳の無名女優だった彼女は、レオナルドとの大胆なヌードシーンで一躍スターダムへ。
その後『スーサイド・スクワッド』『バビロン』『バービー』へと躍進します。いま振り返ると、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』はまさに彼女の“出世作”。
美人だしエロいし完璧。スコセッシ監督、あざす。
スコセッシ監督による“狂気のテンポ”
マーティン・スコセッシは、3時間近い上映時間を一気に見せる驚異的なテンポで観客を引き込みます。
全編にわたってコカイン・セックス・金が乱舞し、それをまるでギャング映画の快楽性で描くスコセッシの手腕は圧巻。
実際、撮影現場では即興演技が多く、ディカプリオはマコノヒーのリズムをそのまま採用したと語っています。
もはやインパクトあるシーンの連続で、ドラッグきめながらメガネ君との床を這いつくばっての喧嘩のシーンとか、金をもらってスキンヘッドにする女性社員とか、タイタニックばりの沈没だとかよくもまぁこんなに詰め込めるなと。
1シーン1シーンがそんなに重くないので観客は全く飽きることがない。
ドラマ要素
ただのいかれたたシーンのオンパレードなだけではない。
後半からのFBIとの駆け引きがさらに物語を面白くしています。こんなにめちゃくちゃやってたら追われるのは当たり前。まぁ向かうのは破滅の道なんだけど。
「悪いことしたら必ず自分に返ってくる。知ったことか、クソ喰らえ」
いいですね。変に更生するとかなく、あまり説教くさくなくあくまで最後までゲス。
最後はサラッとしてて好きです。
さて、あなたはどう考える?ある種観客に投げて終わる。
抜群のセンスです。
ディカプリオはこの映画にかけてましたね。アカデミー取れませんでしたね。
なんで?こんなにやっても取れないの?彼の落胆っぷりは凄かったな。マジヘコみだったし。
- 第86回アカデミー賞 5部門ノミネート
(作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、脚色賞) - 第71回ゴールデングローブ賞 主演男優賞(ディカプリオ)受賞
批評家からも高評価を受けつつ、興行収入は世界で約4億ドル超。
スコセッシ作品としては異例の大ヒットを記録しました。
私は『レヴェナント』より断然この映画です。
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