映画『ロスト・ハイウェイ』徹底考察|リンチ流「迷宮」にハマる理由とは

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アメリカ映画

もうね、何回観ただろうか。

1997年公開のデヴィッド・リンチ監督作『ロスト・ハイウェイ(Lost Highway)』は、公開から約30年を経ても一切色あせない不思議な魅力で、多くの映画ファンを虜にしてきた。

むしろ観れば観る程、この映画の妖艶さを超える作品は出てこないのではないか?という位好きになっている。

今回改めてこの映画を考察してみる。

基本情報

原題:Lost Highway
公開年:1997年
上映時間:134分
監督:デヴィッド・リンチ
脚本:デヴィッド・リンチ、バリー・ギフォード
出演:

  • ビル・プルマン(フレッド・マディソン/ピーター・ロールズ役)
  • パトリシア・アークエット(レネ・マディソン役)
  • バッド・フェイス(ロバート・ブレイク)(フレッド・マディソン/ピーター・ロールズ役)
  • ロバート・ブレイク(フレッド・マディソン役)
  • ローレン・ベイリー(アリソン・ブーン役)
    ほか
    音楽:アンジェロ・バダラメンティ
    配給:アーバン・ワールド・シネマズ(日本)
    ジャンル:サイコロジカル・スリラー/ミステリー

あらすじ

ビル・プルマン演じるジャズ・ミュージシャン、フレッド・マディソンは、自宅の監視映像に「見知らぬ男」が映り込んでいることに怯えながら、妻レネ(パトリシア・アークエット)との関係もぎくしゃくしていた。ある夜、彼はレネを惨殺してしまい、警察に逮捕される。だが、拘置所の独房で次々と謎の電話を受け取った翌朝、フレッドはまったく別人の青年ピーター・ロールズ(バッド・フェイス)に変貌していた……。
物語はこの「フレッド→ピーター→フレッド」というループを軸に、現実と幻想、時間と自己同一性の境界を揺さぶる幻想的かつ不穏な展開を見せる。




これほど映像の常識を壊す監督はいない

自分の好きな監督である、デヴィッド・リンチの作品です。

映画好きな人なら知ってると思うが、『イレイザーヘッド』、『エレファントマン』、『マルホランドドライブ』、『インランドエンパイア』とか撮った人。

ドラマだと『ツインピークス』。もうこれは傑作中の傑作で新作も放映したばっか。

で、個人的にデヴィッド・リンチの映画の中ではこの作品が一番好です。

何回観ても面白くてストーリーがめちゃめちゃ。

自分なりに順序立てて整理していって「あ、そういうことね」と結論付けたところで最後の最後にまたわからなくなる。

なんとかほぼ完成しそうなパズル。

あと1ピースというところで「あれ?全然合わないぞ?そしたらまた分解しなきゃ・・・」みたいな。

ストーリーが無限ループの様に出口が見えないというか・・・

まさにタイトル通りの「ロストハイウェイ」。

観客も観てるうちにストーリーを追ってるうちに迷宮入り。

こういう「考える映画」が苦手な人は苦手だろう。

まぁ、考えてもわからないんだけどね。

私は大学生の頃にデヴィッド・リンチの作品に出合ってこれまで観てきた映画感が180度ひっくり返ったのを覚えている。

本当に衝撃を受けた。

だってほとんどの作品が意味がわからないんだから。

これは衝撃的ですよ。
極端な話、意味わかんないもの作っても評価されるんだって。

開き直りというか

いや、本人は意味わかって作ってんだろうけど。
あぁ、観客に一切媚びない監督なんだな。
自分のやりたいことをやってそれがちゃんと評価された人。

羨ましくもあり到達できないレベル。

逆にこれが評価されなかったら「意味のわからない映画撮った」ただの変人ですよ。

  • 不可思議な時間軸の分断:映画冒頭〜中盤にかけて、主人公がある夜に逮捕され、独房で電話を受ける──次の瞬間に別人になっている。しかも視覚的説明はほぼゼロ。
  • 音響の不気味な扱い:アンジェロ・バダラメンティのサウンドトラックは、ただのBGMではなく、場面ごとに不協和音を織り交ぜ、観客を不安定な精神状態へ誘う触媒となる。
  • 絵画的な構図とカラーリング:ネオンブルー、腐食した赤、深い影――ミステリアスで抑圧的な世界をスクリーン上に構築し、画に“力”を与える。

これらは「映画とはこうあるべき」という一般的イメージを突き破り、観客の感覚を再起動させる“リンチの魔力”そのもの。




単純な様でで難解。難解な様で単純。

『ロスト・ハイウェイ』の物語は一見、ジャズ・ミュージシャンのフレッド(ビル・プルマン)が妻レネ(パトリシア・アークエット)を殺し、逮捕されるというミステリー。しかしその後、彼はなぜかバッドフェイスと名乗る青年ピーター(ロバート・ブレイク)に“変化”し、新たな事件に巻き込まれていきます。この「フレッド ⇔ ピーター」という人間の入れ替わりは、以下のように捉えられる。

心理的投影としての二重人格
フレッドの罪悪感、怒り、抑圧された性衝動が“ピーター”という別人格に化身し、次々と不条理な行動を駆り立てる。

夢と現実の境界曖昧化
主人公は夢の中で別人になり、その夢から覚めた瞬間にまたフレッドに戻る——観客は「あれは夢だったのか?」「あるいは現実なのか?」と果てしなく迷宮をさまよう。

タイトルのメタファー
“Lost Highway” は「行き止まりのない道」を意味し、この無限ループの構造そのものを暗示。観る者は出口のない物語を体感し、思考の回路が快楽的に“ショート”する。

もうこの時点で大部分の観客が置いてけぼりを食らう。

細かくメモを取りながら観ていく。

夢オチなのか?男の妄想なのか?
脳みそフル回転させてあらゆることを考える。

なんとなく自分なりに解釈を見出す。

「そうか、そういうことね」

ようやくスッキリしてくる。

ところがだ。ラストにはまた最初のフレッドに戻り予想不能なエンディングで映画終了。

おいおい・・・

もうね、わかんなすぎて「気持ちいい!」

あるのは謎の高揚感。

もはや映画の変態ですよ。このように、単純に「人が入れ替わる話」ではなく、観客自身を巻き込んだ“錯覚システム”が本作の肝。理屈で解釈しようとすれば混乱するほど、“感じるままに身をゆだねる”醍醐味が味わえる。




世界でも稀な特異な監督

色々褒めたたえましたけどこの映画が果たして面白いか?と言われると疑問ですね。

「面白い」

この日本語だとどうもニュアンスが違う。だけど確実に見入ってしまう映像力はある。

テンポだってそんなによくない。しかしデヴィッド・リンチの映像って画に力があるんです。ずっと観てられる。これは理屈抜きで才能なんでしょう。

そして世界各国デヴィッド・リンチのファンがいる。

女優のローラ・ダ―ンも彼の大ファンで後の『インランド・エンパイア』に出演希望して主役を勝ち取ったくらいだ。

気付いたらこの不思議な映像世界にどっぷりはまってしまって抜け出せない自分がいる。

まったく、不思議な監督だよ。

「才能が枯渇した」って嘆いてるらしくもう映画は撮らないみたいだけどドラマの『ツインピークス』の新作で我慢するよ。いつかまた映画界に戻ってくるその日まで。

コメント

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