映画 『シンデレラマン(Cinderella Man)』 は、アメリカの歴史に実在したボクサーをモデルにした感動の実話ドラマです。
ラッセル・クロウ主演、ロン・ハワード監督という黄金コンビが生み出した、まさに「どん底からの奇跡の復活劇」。
本稿ではネタバレ全開で感想を述べていきます。
基本情報
- 作品名:シンデレラマン(Cinderella Man)
- 公開:2005年(アメリカ)/日本公開:2005年6月
- 製作国:アメリカ
- ジャンル:ヒューマンドラマ/スポーツ/実話
- 上映時間:144分
- 監督:ロン・ハワード(『アポロ13』『ビューティフル・マインド』など)
- 脚本:クリフ・ホリンズワース、アキヴァ・ゴールズマン
- 音楽:トーマス・ニューマン
- 製作総指揮:ブライアン・グレイザー、ロン・ハワード
- 配給:ユニバーサル・ピクチャーズ
👥 主なキャスト
- ラッセル・クロウ … ジェームズ・J・ブラドック(主人公・元ボクサー)
- レネー・ゼルウィガー … メイ・ブラドック(妻)
- ポール・ジアマッティ … ジョー・グルード(ブラドックのマネージャー)
- クレイグ・ビアーコ … マックス・ベア(対戦相手)
- パディ・コンシダイン … マイク・ウィルソン(港湾労働者)
あらすじ

舞台は1930年代、アメリカ大恐慌の真っ只中。
かつてはボクサーとして活躍した ジェームズ・J・ブラドック(ラッセル・クロウ) だったが、
怪我と不況で引退し、港湾労働で家族を養う日々を送っていた。
だが仕事もままならず、貧困と飢えに苦しむ家族。
「父親としての誇り」を失いかけていたブラドックに、
ある日、奇跡のチャンスが訪れる。
欠場したボクサーの代打としてリングに立つことになった彼は、
誰もが「もう終わった」と思っていた男。
しかし、彼のパンチは再び輝きを取り戻す――。
「大恐慌の時代に立ち上がった男」
それが“シンデレラマン”と呼ばれたジェームズ・J・ブラドックの物語です。
実在したシンデレラマン
最近改めて観たロン・ハワード監督の「ビューティフル・マインド」が思いのほか良かったので続けて本作を。
今回も実際にいたジェームス・J・ブラドックというボクサーをラッセル・クロウが演じている。彼は1935年に世界ヘビー級チャンピオンとなった人物。
彼は貧困層の希望の象徴とされ、新聞記者によって「シンデレラマン(Cinderella Man)」と名づけられました。
タイトルの由来は、「灰かぶり娘(シンデレラ)」が奇跡のように王女になるという童話になぞらえたもの。
つまり、絶望の底から再び這い上がった男の奇跡を意味します。
ロン・ハワード監督 + ラッセル・クロウ主演 + 実話ということで、もろ「ビューテフル・マインド」の流れを汲んでいるんだけど、
正直言って今年観た映画の中でダントツの出来でした。
簡単に言うと怪我で落ちぶれたボクサーが大恐慌による貧乏生活から脱却する為に再度ボクシングで奮闘する王道パターンの話。
もうね、ボクシングものは貧乏設定に限ります。
まぁ、何不自由ない金持ちボクサーの話なんて誰も観たくないだろうし応援する気になれないしね。
どん底から這い上がる王道モノ

で、この主人公のブラドック(実際にいた方)はエグいです。
とことん金が無くて借金までして日雇いの過酷な肉体労働で家族を支えてるんだけど、ついに家の電気も止まってさらにボクシングのライセンスまで剥奪され、子供が体調崩して…
もうかなり生き地獄。観てて辛くなってくるレベル。
でも世界恐慌でこの時代はみんなこう言った貧困と戦っていたんだよね。
だけどね、人は追い詰められ負けられない状況になればなるほどブラドックを応援したくなるわけです。
これ、ボクシング映画としては完璧な要素。
これを観てる人はブラドックにさらに不幸になってくれなんて絶対思わないはず。
ブラドックは右手を骨折してるにも関わらず試合に出たことでやる気のない試合をしたとみなされライセンスを取り消しされるんだけど、これはちょっと処罰がエグすぎるだろ。
家族もいて明日の食うものもない状況で血も涙もなさすぎる。
結果、ブラドックは一回限りの復活ということでリングに上がるんだけどこれが思った以上の活躍で再びライセンスを与えられ、ここからブラドックの快進撃が始まる。
ラッセル・クロウの演技が神がかり的
ラッセル・クロウだいぶ鍛えてんだろうな。
『グラディエーター』の剛毅な印象とは違い、ここでは家族思いの父であり、ひたむきな労働者。
汗まみれの手で家族を守ろうとするその姿は、演技を超えて生き様そのもの。
リング外でもリング内でも、彼の拳は「愛する家族のため」にある。
ボクシングシーンは演技だとわかっていながらもかなり手に力が入るものになっている。
おまけに編集も上手い。
最後の試合は鳥肌モノ
で、ついに世界チャンピョンのベアーと試合をすることになるんだけどこのベアーは試合中に二人も殺してる殺人マシーン。
ボクシングではなくまるで殺戮と言われるベアーと対戦することにブラドックの奥さんは大反対。
だけど最終的にブラドックは試合を放棄することなく殺人マシーンのベアーに挑む。
このベアー、悪態はつくわ、試合中反則はするわでまぁわかりやすい悪役として描かれている。
これくらい憎い相手なら観てる方の気持ちとしてはブラドックの勝利一択だろう。
ある程度の演出もあるんだろうけどベアーの親族とかからしたら実際複雑な気持ちだろうな。
この最終決戦も物凄い迫力でベアーのパンチの重さも伝わってくる。
最終ラウンドでも距離を取ってれば楽に勝てたものをあえてブラドックは接近戦で挑むあたりもドラマ性があっていい。
完全に作品にのめり込んでたし最後の戦いは一瞬も目が離せなかった。
最終ラウンド、観客が総立ちになるシーン。
あの瞬間の「静から動への緩急」は鳥肌ものです。
スポーツ映画でありながら、家族ドラマとしての感動も絶大。
「感動」と一言で言うと安っぽい感想になるけど観ているうちにどんどん胸が熱くなってくる感覚はなんでしょうね。
きっと自分にも子供ができて家族のために戦う親父の姿がブラドックに投影したのかもしれない。
戦う親父はカッコいい。
若い人が観ても最高に楽しめるが子を持つ親父が観るとさらに感情移入できると思う。
強いて言えば練習シーンってほぼないので復活してから結構トントン拍子で進んでいく。
家族ドラマに重きを置いてるのでそこが物足りなさを感じる人もいるかもしれない。
だけど間違いなく今年観た映画の中でダントツの出来栄え。
観てない人は是非。
評価・受賞歴
- アカデミー賞3部門ノミネート(助演男優賞/編集賞/メイクアップ賞)
- ポール・ジアマッティが助演男優賞候補に
- IMDb評価:8.0/10
- Rotten Tomatoes:84%(批評家スコア)
観客・批評家双方から高評価を受け、「21世紀の王道ヒューマンドラマ」と称されました。
コメント